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12話 この世界で医者はハイステータスでは無い?

 スイカジュースを飲む。


スイカジュースの濃い甘さが舌に絡みつく。かすかに塩味もそて後味はスッキリとしていた。


 さっきまで汗だくかなり疲労していたが、スイカジュースのお陰で少し汗も引いてきたし疲れも和らいでくる。


 やっぱりカリウム効果だろうか?


 タピオカだって100パーセント健康に悪いとはいえないが、やっぱりスイカジュースの方が身体は欲していたようである。タピオカをやめてアナのジュース屋に行った判断は間違ってなかったようである。そんな自分の選択には、ちょっと褒めてやりたい。


「ハイ! マスミ! スイカジュースは美味しいかい?」


 教会のそばで、ジェイクに話しかけられた。金髪碧眼、背も高く、声も低めで甘いイケメン医師である。この村の独身女性で彼を気にならない女はいないだろう。ただ、女に興味がなく、職業意識が高い男で今のところだ誰のものにもなっていない。


「ええ。スイカジュース最高よ。アナに聞いたんだけど、カリウムっていう栄誉が良いんですってね」

「そうそう。食べ物は美味しい事も大事だけど、健康を高めるものが一番だよ。ところで、マスミはこれからどこ行くんだい?」


 ジェイクも歯を見せてキラキラと笑っている。興味はないが、観賞用として眺めるのは最高である。


「これから転移者保護の仕事なのよね。湖の方行って、森の中も見てこなくちゃ」

「一人でかい? 危ないよ、あの村はよくアンナが死体を見つけてたんだよ」

「本当?」


 そんな事聞くと急に怖くなってきた。とりあえずスイカジュースを飲み干し、心をちょっと落ち着かせる。


「そんな事聞くと怖いじゃない」

「だったら一緒に行こうか?」

「いいの?」


 村の女達には嫉妬されそうなシチュエーションではあるが、ジェイクの好意に甘える事にした。


 二人で並んで湖の畔を歩く。湖の上は白い鳥が群がり、少し鳴き声がうるさかった。綺麗な湖のそばでイケメンと歩くというのはロマンチックな状況ではあるが、鳥の鳴き声で台無しだった。やっぱり私はジェイクと縁がないのだろう。


「そういえば昨日ジョシカイやったんだね。楽しかった?」

「ええ」

「カーラは元気だった?」


 何故ここでジェイクの口からカーラの話題が出るか謎だった。私は首を傾けて、隣にいるジェイクを見上げる。


「元気そうには見えたけど?」

「あの子って不思議。何考えてるかわからないな」

「そう?あなたとお似合いだって噂を聞いたけど」

「そうかなぁ」


 この男はあまり恋愛には興味がないようで、こんな話題もピンときていないようだった。


「綺麗だけど、何か秘密のありそうな女じゃないか?実際、この村でも彼女の事をよく知っている人間がいないんだよね」

「そうなの?」

「突然、村長のコネで役所職員になったけど、よくわからないんだよね」

「興味あるの?」


 話そているとジェイクはカーラの興味がありそうに感じた。


「いや、リリーやマリーがあんまりにもカーラを嫌ってるかた逆にちょっと気になるよね」

「マリーって誰だっけ?」


 聞いた事ない名前だった。


 気づくと湖の畔を歩き終え、森に入るところだった。薄暗く、人気はないがその分日差しは遮られる。一気に身体は涼しさを感じ始めた。


「役所職員だよ。ちょっと脚は悪いけど、たぶん性格はそう悪くない」


 たぶん礼拝堂の中にマリーと思われる人物がいた事を思い出すが、私とは話したことはなかった。まあ、来週の礼拝の時に合えば良いだろうと思いながら、二人で森の中を進む。


 転移者や不審な扉などは見当たらない。


「ジェイクは、デレクのタピオカ屋行った?」

「あぁ、流行ってるよね。でも僕は興味ないし、お金もないしね」

「嘘、お医者さんなのに?」


 日本では医者は高収入の類で婚活でも人気上位だ。ロマンス小説でも医者はヒーローになりやすい職業である。あとは弁護士やパイロットなども女子が憧れるハイスペ男子の職業だが。


「いいかい、マスミ。医者は儲からないんだよ。この国では割と最低ランクの仕事さ」


 珍しくジェイクは自嘲気味だった。


「もともとこの国の医者は、人に毒を盛る薬を作ってた事もあったから、意外と差別さててるんだよなぁ」


 それには驚いた。日本では医者といえば神様レベルで崇められている。疫病のおかげでより医者の信頼が増していた。

しかし、日本でも江戸時代の医者はそう地位が高くなかったと日本史の教師聞いた事がある。やっぱりどこの世界でも安定した収入を得る仕事を得るのは大変のようであった。


「まあ、この村での医者の仕事はさほど重労働でもないけど、王都では身を粉にして働く医者も多くないからね。楽して儲ける仕事なんてないよなぁ」


 ジェイクはまるで私の気持ちを見透かしたように呟いた。

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