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11話 野菜ジュースvsタピオカ

 仕事はまず、商店街を抜けて、牧場の方まで歩く。

 ここでは何故か杏奈先生や私が転移してきた場所である。何か転移者や異常がないか確認。


 くまなく見てみたが、元の世界と繋がっている扉や転移者がいる雰囲気は全くない。第一のチェックポイントは終了である。


 それにしても空が青く、羊達のいる牧場に風景は長閑で平和そのもので、居るだけで気分はよくなった。


 この世界に来て、持病だった偏頭痛や原因不明にだるさがすっかり治ったのは食べ物のお陰と思っていたが、この村の長閑な風景や自然もいい影響を与えて居るのかもしれない。


 仕事中なので本当はもっとテキパキと動いた方が良いのかもしれないが、自然と足取りはのんびりとしてしまった。


 次のチェックポイントは再び商店街である。

 杏奈先生の事件の余波により、店はミッキーとリリーのところしか営業していないにでもう商店街とは言えないが、一応チェックポイント。殺人犯の店もあった事だし、警戒しても損はないだろう。


 杏奈先生のカフェの跡地は、相変わらずだった。立ち入り禁止のテープがはられ、跡形もない。杏奈先生を思うと、ちょっと悲しくなるがが仕方ない。


「すみません、ミッキーのパン屋はどこですか?」


 仕立てのいいスーツを着た中年男性に声をかけられた。なんとなく、この村や周辺の村の人間では無さそうだ。ミッキーのパン屋を訪ねるぐらいなので、転移者では無さそうでホッとする。


「案内しますよ。一緒にいきましょう」


 私と男性は一緒に歩き始めた。


「ええ。私は王都のものなんですが、ここはあまり来たことがなく。ミッキーのパン屋が美味しいという評判を聞いてやってきました」

「へぇ、そんな評判があるのねえ」


 ミッキーのパンの味は慣れたし、最初の印象に比べて美味しく感じるようになったが、わざわざ王都から来るなんて信じられない気持ちである。


「王都には美味しいパン屋はないの?」

「いえ、激戦区ですよ。ちょっと参入しようとして負けていく職人が山ほどいます」

「そうなの。やっぱり厳しいね」

「ええ。あとフルーツジュースも厳しいですね。あれも新規参入して無惨に負けた業者がいっぱい」


 そんな王都かわざわざパンを買いにくるなんて、やっぱりミッキーのパンはファンが多いのだろう。最初はまずいと思っていたが、気軽に毎日食べられる自分は恵まれているのかもしれない。


 ミッキーの店がも見え、小麦のいい香りもそてきた。ここで男性と別れて、リリーの店の方に行く。リリーはまだ教会にいるようで、店は閉まっていた。転移者の姿もいないようなので、私は商店街を後にした。


 ミッキーの店は根強いファンがいるとはいえ、商店街は壊滅的である。何か新しい店でも入れば良いと思うながら、再び教会の方に向けて歩き始めた。次のチェックポイントは、湖やその奥の森の方である。


 さすがに日差しが強く、歩いていて汗が滝のように流れた。


 デレクのタピオカか?それともアナのジュースか?


 歩きながら私の心は揺れに揺れていた。この前、アナをあれだけ励ましたものだが、「可愛い」というデレクのセリフや笑顔が頭の中をグルグルと回る。別にデレクに恋愛感情などはないが、あんな事を言われて嬉しくない女子はいないだろう。


 デレクのタピオカ屋のキッチンカーが見えた。今日は村のものが教会に多くいるので、客は少なめだ。デレクが客に笑顔を振りまいているの見える。

 しかし、どうにか自制心を働かせてタピオカ屋をスルーした。今は仕事中!と何度も自分に言い聞かせた。


 それにしてもデレクは、人の心を掴むのがうまいというか、人たらしというか。接客では大きな武器になるだろう。一歩間違えれば、ホストになってしまいそうな危うさはあるが。


「ハイ! アナ、こんにちわ」


 私はアナのジュース屋に直行し、何かジュースを頼む事にした。


「マスミ! 今日は暑いわね。何にする? スイカ? レモン?」

「今日はスイカお願いできる?」

「ええ」


 アナはスイカの実をジューサーにいれ、作業をし始める。


「スイカはいいわよ。カリウムっていう栄養素が浮腫みや疲れに効くんだって」

「そうなの?」

「ええ。ジェイクに教えて貰ったんだけど、私は本当に無知だったわ」


 アナは少ししょんぼりとしていたが、すぐに笑顔を見せる。


「タピオカに対抗するには、やっぱり美容や健康よ!アオジルを作ってみようと考えてる」

「わぁ、いいと思うわ。私も久しぶりに青汁飲みたい。是非作って」


 この前と違ってアナは前向きのようだった。やっぱりアナのような田舎娘は、都会で育った柔な娘ではないようだ。この様子なら大丈夫だろう。私は、安堵してスイカジュースを片手に歩き始めた。

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