プロローグ
日本に居た頃の話だ。
私が殺人事件だらけのコージー村に転移してしまうちょっと前、人気メンタリストが炎上していた。
なんでもホームレスなどの社会的弱者は生きる意味がなく「死ね」と発言し炎上。彼はタピオカが好きで、大手飲料メーカーのタピオカミルクティーの広告に出るほどだったがこの発言により連日叩かれていた。そんな広告塔の仕事はもちろん、レギュラー番組も降板、決まっていた講演会や本の出版も延期になってしまった。
私はそんな炎上を他人事のように見ていた。確かにホームレスについては可哀想だったが、心のどこかで無関心だったり、自己責任だと思ったりする冷たい所がある事は否定できなかった。その上「自分はコミュ障」と言い訳しながら、道端で困ってる人をスルーした事も一度や二度ではない。
そして、今は慣れない異世界に転移して生きるのに苦労している。
ホームレスと似たような弱者という立場に立って初めてわかる。生きるのは大変で、お金を稼ぐ事もとても難しいという事。日本では英語スキルで稼げたが、ここではコミュニケーションに役立つだけである。
自分は周りの人に恵まれているだけで運が良かっただけだ。
今、自分が生きているのも自分の力ではない。人気メンタリストの炎上は、他人事では無かった。
私はこの異世界でどう生きていこうか?
私が自分の力で生きているのでは無いと思い知らされる。きっと神様に生かされていたのだろう。自分の力では何も出来ない。






