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Act.06:気になる噂①

※実在する地名が出てきますが、この物語はフィクションです。




「何じゃこりゃ」


 俺は一枚の紙を見ながら呟いた。


「どうしたのよ?」

「いやこれを見てくれ」

「えっと何々、噂の星月の魔法少女?」


 記事にはそんな見出しが書かれており、更にぼやけてはいるけど、空を飛んでいる少女の写真も載っていた。


「これ、どう見てもあなたよね」

「多分な……」


 ここ最近、俺達が暮らすこの地域に魔物が良く出現するようになったのだ。今までは何もなかったのに、どういう風の吹き回しなのか。

 とはいえ、他の場所でも魔物の出現頻度が上がってるとの噂もある。魔法少女たちも結構忙しく飛び回ってるらしい。


「この辺は最近までは魔物の魔の字もなかったのになー。魔物って良く分からん」

「その分、あなたも実戦経験積めるようになったんだからマイナスばかりではないじゃない」

「まあな」


 魔物の出現が増えたことにより、俺はリュネール・エトワールとして実戦経験を積むためにあちこちで魔物を倒して回っていたのだが……。


「結構有名人になってるわね」

「やめてくれ……」

「野良なのに魔物を倒してるっていうのまた話題になる原因よね。SNSとかでもちらほら、あなたのことが書かれてるわね。謎の魔法少女! だとか」

「星月の魔法少女って何だよ……」

「あら素敵じゃない。それにリュネール・エトワールにはピッタリじゃない?」


 確かにリュネール・エトワールは月と星だ。衣装もステッキも靴も、どれにも星と月が描かれてるんだし。


「魔物倒すだけでもすぐ話題に挙がるのは解せぬ」


 一体何処から見てるんだ。

 多分、この地域に暮らす人たちがSNSとかで話題にしてるんだろうな。正直な所、恥ずかしいよこれ。


「魔法少女の駆けつけも早くなったわよね」


 この地域でも魔物が良く出るようになった影響か、魔法省の対応の速さも加速してる。魔法省所属の魔法少女と出くわす回数が割と増えてる。


「何か会う度に同行願えないかとか言われるんだよなあ」


 前に脅威度Aの魔物を倒した時に会った青い魔法少女とも会う事が増えている。決まって、俺を誘おうとしてくるんだよな……他の魔法少女もそうだ。


「何度か脅威度Aの魔物をあっさり倒してるからかしらね。それだけの実力があって野良をしてる……」

「魔法省に所属しないと駄目っていう決まりも何もないから良いが……」


 多分、そんな強さがあるから俺のことを勧誘してくるのだろう。元の姿が俺である以上、魔法省には絶対に行きたくないぞ。


「よいしょっと」

「あら、何処か行くのかしら?」

「もう昼だしな。昼飯を食べにでも行こうかと」


 カップ麺ならいくつか蓄えは有るが、そんな毎日食べるような物ではない。というか、毎日食べてると絶対飽きる。


 運転免許証と車のキー、財布、スマホ型の変身デバイスを揃え、庭に止めてある車の場所へ向かう。


「そう言えば、ここってあなたの家なの?」


 車に乗り、シートベルトをした所でラビに問いかけられる。


「一応、な。基本俺しか居ないがな」


 俺が暮らしているのは、一軒家だ。というより、実家である。ただし、両親は既に他界しているから暮らしているのは基本俺一人である。


「基本?」

「ああ。両親は既に居ないが、妹が一応居るんだわ」

「へえ……意外ね。あなたに妹さんが居るなんて」

「まあ、あいつは上京して一人暮らししながら大学行ってるからな……一応、俺も唯一の家族だから仕送りはしてるぞ」

「宝くじ当たったって事は知ってるの?」

「いや、知らない。言ってないからな」


 1億円だぜ? あまり言いたくはない。妹なら大丈夫だろうが、他人の耳に入ったら入ったでなんか嫌な予感もするから伏せてある。

 因みに妹が大学に行けてるのは奨学金もあるが、やはり一番は両親の残した遺産のお陰でも有る。


 仕送りとは別に学費等はその遺産から出している。

 まあ、俺は今ニートだが妹には好きな事をして就職してほしいと思ってるのも有るからな。


「意外とシスコンね」

「言うなや」


 今じゃ唯一血の繋がった家族だ。そうなるのも仕方がないだろう。因みに妹との仲は良好だと思う。


「妹さんは大学を謳歌して、兄であるあなたはニート……あれ、仕事辞めたって事は伝えてるの?」

「一応な。心配されたが」

「そりゃそうよね」


 そんな会話をしながら俺は車のエンジンを掛け、アクセルを踏み、家の庭から道路へと出る。


「お昼のニュースです。……今朝、また魔物の出現が確認されました」


「茨城県土浦市で魔物出現だってよ」

「本当に増えたわね」


 俺が住んでるのは県北だが、県南や県央、県西よりかは数は少ない。前まではこの県全体にしても魔物なんて滅多に出なかったのだが……。


「県庁とかも対策で大忙しだな」

「まあ、この辺りの魔法少女たちに仕事が増えたんだから良いんじゃない?」

「唯一の対抗できる手段とは言え、女の子を戦わせるってのは気が引けるがな」

「気持ちは分かるけれどね」


 とは言え、魔法省も魔法省で何とか他に手段がないかを模索しているみたいだが。例えば戦車砲に魔導砲を付けるとか。

 既にその計画はされてるみたいだが……ただ魔力が必要なのはどうしようもない事実でやっぱり魔法少女に頼るしかないのだろう。

 でもまあ、魔法少女自身が生身で戦う必要がなくなれば、若干は安心できるか。


「所で、何処に向かってるの?」

「ファミレス」

「一人でファミレスって何か寂しくない?」

「良いじゃんか。安いぞ、サイゼだし」


 一般市民の大救世主であるファミレスだ。安いし美味しいよ。その後も、ラビと話をしながら道路を走っていくのだった。




■■■■■■■■■■




「星月の魔法少女、ね」


 一枚の記事を見て呟く。

 星月の魔法少女……彼女の通り名のようなものだ。衣装とかには星や月の絵が描かれている事から誰かがそう呼び始め、それが広がった感じだ。


 脅威度Aの魔物を単体であっさりと倒すその実力はAクラス以上だろう。


「その子、最近話題の野良の魔法少女ですよね?」


 私にそう話をかけてくるのは、魔法省所属茨城地域担当の魔法少女の一人……ホワイトリリーもとい、白百合雪菜(しらゆりゆきな)だ。

 彼女はSクラスの魔法少女で、実力はそのクラスに恥じない。脅威度A程度の魔物なら簡単に倒せる、ぶっちゃけこの地域最強の魔法少女だ。


「ええそうよ。出会った魔法少女は何人も居るけど、直ぐに居なくなっちゃうわ」

「話を聞いた限りだと、脅威度Aの魔物をあっさりと倒すみたいですね。使える魔法も強力、と」

「現状分かってるのは、重力を操作できること、星を放てる事ね」

「それだけでもとんでもないですね……」


 重力を操れるというのは結構聞くが、星を放つって何よ、という話だ。報告を聞いた限り、ステッキから五芒星の形をしたオブジェクトを飛ばすとか。そして当たると爆発するらしい。


「大体がその五芒星を飛ばす謎の魔法で一発撃沈、ですか」

「ええ……本当何者よこの子」

「一発撃沈とかAクラスではなく、最低でもSクラス以上はありそうですね……」

「そうね、ただ、これ以外にも何か使える場合はもっとやばいわね」

「流石にそれは……」

「切り札みたいなのを持ってても可笑しくないし、ない話ではないわね。……何で野良で戦ってるのかしらね」


 魔法少女は突発的に誕生する。詳しい事は現在も分かっていないが、10代前半の少女が多いと言うのはグラフのデータから見ても分かる。

 それは魔物に襲われて、死の恐怖に襲われた時に覚醒したり、のほほんと過ごしていたら何か覚醒したり、パターンは様々だ。


 本人の意志を尊重するので、戦わないを選んで日常を送る少女も居るし、戦うっていう少女も居る。

 戦う場合は、基本的には魔法省に所属し、国からの手厚い支援を受けながら魔物の対応を行って貰っているのだ。

 本当は年端も行かない女の子に命をかけて戦うなんて、納得できないけど唯一の対抗手段であり、対抗できなければ多くの人が犠牲になるのは必至。


 勿論、魔法省もただ見ているだけではない。

 どうにか出来ないか、日々研究だってしてる。最近では自衛隊の戦車砲に魔力を使って放つ魔導砲を乗せる計画も有る。

 結局は魔法少女たちに頼るしかないのだが、それでもこれが運用されれば生身で戦う必要はなくなるだろう。

 他にもミサイルに魔力を乗せるとか。考えてはいるのだが、やはり色々とチェックしたり調節したりしないといけないからすぐっていうわけにも行かないのだ。


「主な出現地域は県北、らしいわね」

「その辺りに住んでいるって事ですかね? 彼女が所属してくれればかなりの戦力にもなりますね」

「そうね……けど、可能性は低いわねえ」


 正直、魔法少女は人手不足だ。

 この地域の魔法少女だって、彼女……ホワイトリリー以外ではBクラス以下が殆どだ。脅威度A以上の魔物は実質彼女一人で対応してるようなもの。


 幸い、現状はB以下の魔物が多いから良いのだが、時々Aの魔物も出る。油断はできない。


 この星月の魔法少女が本当にSクラス以上ならば……かなりの力になってくれるだろう。

 一応、魔法少女たちには出会った場合は魔法省に来て貰うように言っておいてとは言ってあるけど、全部断られてるし。


 そういう決まりもないから強制というのも出来ない。

 とりあえず、現状は様子見……と言った感じだろう。少なくともこの星月の魔法少女は魔物を倒してくれているのだから。




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