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Act.37:精霊王③


「っ……あ、ぅ……。はあはあ。中々これ、凄いですね」


 何処か色っぽい声を出すティターニアに、ちょっと困惑しつつわたしは魔力譲渡で流し込む。魔力というのは精霊とも共通認識だったみたいで、この力の事で良かったようだ。


 でだ。ティターニアの話については受ける事にした……っていうか、もう終わりそうだ。


「ふう……失礼しました。それにしても、私の魔力をこうも簡単に全快できるって……地球人というのは皆そうなのですか?」

「いや、リュネール・エトワールが異常なだけよ」

「そうなのですね……当初の予定とは別の意味が狂いましたが、これならバリバリ動けそうですよ」


 そう言って、半透明な状態からはっきり見える状態になってあっちこっちを飛び回るティターニア。姿だけ見れば、子供っぽい。というより身長も立った時に気付いたけどブラックリリーより少しだけ高い程度だった。

 思ったより低かった……。


「また失礼な事を考えていますね」

「?」

「はあ、まあ良いです。身長が低いのはもう認めてますし。とにかく、魔力をありがとうございます」

「ん」


 力になれたならそれで良い。

 確かに、さっきよりも元気そうな感じがする。元よりかなりの力を感じていたけど、わたしが譲渡した今は更に凄い感じになっている。言葉では言い表せないけど。


「これなら精霊の森を元に戻せるかも知れません。外に行ってみましょうか……っと、そちらの気を失っている妖精さんも一緒に」

「さっきから全然目を覚まさないんだけど……どうなっているの?」


 そうなのだ。

 ブラックリリーが言っている通り、だいぶ時間も経過しているのにラビとララは一向に目を覚まさない。石碑を触れたのはわたしとラビだけど、ブラックリリーとララも一緒にこの場にやって来ている。ティターニアが何かしたのかと思うんだけど、違うのかな。


「彼女たちは妖精ですから。この場所は結構きついでしょう。精霊は妖精の上位的な存在なので、そんな精霊の王である私のこの空間は、妖精には強力過ぎたのかと。心配しなくとも、ここを出れば目を覚ますはずですよ」

「それならわたしたちは何でこうやって普通に居られる?」

「それは簡単です。あなた方は妖精ではなく、別世界の住人です。そして人間という妖精世界には存在しない種族です。私たちの影響はほぼ皆無でしょう」

「なるほど」


 それもそうか。精霊と妖精はこの妖精世界に存在する者たちだ。それに対して、わたしたちは地球という別の世界で、しかもこの世界には存在しない人間という種族だ。

 別世界の影響は受けないって事なのだろう。とは言え、それでもティターニアから物凄い力を感じているけれども。


「簡単に言ってしまうと、この場所は妖精にとっては魔力が強すぎると言うか濃すぎるという感じです。膨大な魔力を持つ妖精であれば、問題ないですが、並の魔力量ではここはきついでしょうね。と言っても、そちらの妖精のお二方からはかなりの魔力を感じますけども。後何処か懐かしいと言うか、知っているような魔力も感じます」


 そう言って、ラビとララの方に目を向けるティターニア。

 恐らくそれはラビの事だろう。ラビはエステリア王国の第一王女だ。そしてそのエステリア王国は、精霊の森がすぐ近くにある国で、初代国王と王妃は、精霊王と会った事がある、と妖精書庫に記述されていたと言ってた。

 つまりエステリア王国初代国王と王妃は、ラビの先祖にあたる訳だ。その血を受け継いでいるのであれば、同じような魔力を感じるのは当たり前だろう。


「確かにこの子から感じます……なるほど、この子があの時のお二人の子孫なのですね」


 ティターニアはそう言いながら、ラビの近くにやって来て優しくその髪を掻き分ける。

 子孫と言うなら、ラビの父親や母親も当たるだろうけど、どうなってしまっているかは分からない。妖精世界は今や、実際この目で見たあの荒野になってしまっているのだから。


「いえ、正確には子孫の一人ですね。しかし、今や他の子孫はどうなってしまっているかは分かりません……こうやって生き残りに会えたのは奇跡なのでしょうね」

「初代国王と王妃に会ったというのは本当?」

「本当ですよ。とても聡明な方でしたし、肝も据わっている方々でしたね。精霊王である私という存在に対しても恐れを抱かず、対話を望んできましたし」

「それは確かに……でも初代国王と王妃だけにしか会わなかった理由とかはあるの? 国が腐っていたとか?」


 ラビの国を悪く言うつもりはないけど、ここは素直に聞きたいところ。


「いえ。そんな事はありませんよ。この目で見ていましたからね。エステリア王国は、むしろかなり良い国ですよ。初代国王と王妃には及ばないものの、非常に優秀でした。国も栄えていたのはそれらが理由でしょうね」


 ちゃんと見ないと分からないが、話しているティターニアは何処か楽しそうだった。そっか、良い国だったか……国のこと悪く言って申し訳ない気持ちになる。


「もちろん、一部には黒い者も居ましたが、ちゃんと対応もしていましたね」

「ん。そうなんだ」

「それで、私が初代国王と王妃以外に会わなかった理由でしたね。それは、国が非常に良かったからですよ」

「?」

「私は精霊王という存在である以上、とてつもない力を持っているのは自負しています。そんな私が平和な国に干渉するのは逆に、悪い方向になる可能性がありますからね」


 確かに。もし、国王と毎回会っていたらその力を利用しようと考える輩も出てくるだろうし、平和な国を危険に晒すのはティターニアも本望ではないか。


「ふふ。ですが、定期的には見に来ていましたよ? 誤った方向に進んでいたら、その時は私が干渉するつもりでもありましたし。でも今回はまだ行けてなかったので今が初めてになりますね」

「そうなんだ」

「見に行こうかと思っては居たのですが、件の事件で行けなくなってしまいましたね」


 件の事件。十中八九、魔法実験失敗の事だよね。本当に失敗して、二つの世界を呼び出してしまったのか、そこは定かにはなってないけども。


「少し長く話してしまいましたね。外に行きましょうか」

「ん」

「もう良いかしら?」


 ティターニアと話が止まった所で、ブラックリリーが間に入ってくる。


「あ、ブラックリリー。ごめん、置いてけぼりにして」

「大丈夫よ。何となくは分かったから」

「ん」


 またブラックリリーを置いてけぼりにしてしまった。

 うん、ちょっとそこは気を付けないとな……何となくは理解できたみたいだけど。本人は気にしてない感じだけど、それでもやはり置いてけぼりは駄目かな。


 まあ、精霊王だとか精霊の森とか……これまた結構な情報量だよね。


「それでは行きましょうか。――デプラセ」


 聞き慣れない言葉。だけど、魔法のキーワードのようなものを紡いだのは確かだと思う。ただ聞き取れないと言うか、聞いたことがないような?

 うーん。魔法少女の状態で魔法を使う時とは何か違う感じがする。どっちかと言うとラビみたいな感じだけど、ラビたちの方は普通に聞き取れるし。


 精霊語的な何かだろうか?

 そんなこんな考えていると、わたしの視界は真っ白に染まり始め、そして一瞬だけ歪む。これ、ブラックリリーのテレポートみたいな感じだ。


 移動する魔法なのだろうか?


「え?」


 目を開けると、わたしたちは空を飛んでいた。

 何を言っているか分からないと思うが、本当なのだ。下には森らしきものの全貌が見えるし、森以外の場所は暗く、荒廃した大地が見えている。


「お、落ちる!?」

「安心してください。私の力で落ちないようになってますよ」


 ブラックリリーが悲鳴のような声を出すが、ティターニアがそう答えた。周りを見ると、わたしとブラックリリー以外にもラビとララが空で気を失っている。いや、言葉だけ見るととんでもないけど、そうなのだから仕方がない。


 足場を作っている訳でもなく、普通にわたしたちは浮いている。魔法少女の状態でも空は飛べないのに……まあ、ジャンプ力はかなり強化されてるけどね。


 これが精霊王の力……改めて、わたしはティターニアを見るのだった。






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[一言] 精霊王全快ってすげえな
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