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第35話「元最強陰陽師、魔王信者を捕縛する」

 ペペルイの森からヒヒイロカネを持ってバナード魔術学院に帰還した時、数十人の集団が入り口近くでたむろしていた。


 彼らは一様に剣や槍といった武器、そして魔術で使うであろう杖を持ち歩いており、戦闘集団であることが伺える。そして、種族はこの大陸で一番繁栄しているとも言える人間だけでなく、エルフ、ドワーフ、ドラゴニュート、(オーガ)猫妖精(ケットシー)等多種多様である。


 そして一番特徴的なのが、彼らが一様に隙が無い見事な立ち振る舞いをしているということだ。相当な腕前であることが見ただけで分かる。ちょっと見ただけであるが彼らは待機中であろうが、だからと言ってだらけた様子は全く見えない。皆周囲を警戒して何があったとしても対処できる状態を保ち続けている。


 いや、これは彼らが優秀な戦闘集団であったとしても少し異常だ。おそらく何かあったのだろう。


 そして、彼らの素性は何となく予想できる。


 魔王調査隊のメンバーだ。


 彼らは魔王復活をたくらむ組織の動向を調査し、場合によりそれを叩き潰すために結成されており、その設立や運営のために各国が互いに利益や野心を度外視して予算や人材を投入している。それ程かつての魔王の衝撃は強烈だったのだ。


 その彼らが何故この学院にいるのだろう。


 とは言え考えても仕方が無いので、馬車から降りて彼らを横目に入り口を通りすぎようとした時、魔王調査隊のメンバーの一人が話しかけてきた。


九頭刃(くずのは)アツヤさんですよね。魔動騎士のユルス=マザールです。覚えていますか?」


「ああ。覚えているよ。クロニコフの親戚だったな」


 話しかけてきたのは、金髪長身の美男子で、ブレストプレートを身にまとっている。彼は俺のこの世界での友人であるクロニコフの親戚で、以前魔神アスモデウスを退治……と言うより元の世界に送り返した時に対面したことがある。


「どうしたんだ? こんなところに来て。魔王がらみなんだろうけど、かなり物々しいぞ」


「その事なんですが、この学院の近辺で魔王復活を企んでいる者たちがいると聞いて調査にやってきたんですが、中々手掛かりがなくて困っているのです。それでこの学院を調査の拠点に使わせてもらうために調整中でして」


「魔王復活を企む者? バイエルンじゃなくて?」


 バイエルンは魔術学院に教師として入り込み、魔王復活に使用する魔力を収集していた男だ。奴のせいでこの世界では体質上回復しにくい魔力を根こそぎ奪い取られてしまった苦い経験がある。


 最終的にぶちのめしたのだが。


「いえ、バイエルンの事件とは別……というより奴への尋問で疑惑が明らかになったのです。ただ、それ以上の事は完全に口を閉ざして思考も魔術で封印されていて、聞き出すのが難しいのでこうして実地調査に来たのです」


「といってもね。俺はこの学院に来たばっかりの部外者だし、他に怪しい奴とか検討もつかないな……皆は?」


 カナデ達の方を振り向いて尋ねるが、彼女らも分からないらしい。当然だ。何せ魔王復活を企てて動いていたバイエルンの事にすら誰も気づいていなかったのだ。


「んーやっぱり皆分からないらしい。流石にもう学院内部にはいないんじゃないかな。多分」


「そうですか。とは言えこちらも仕事ですから。これから調査を始めなくてはならないのですが。それに調査と言っても不審者を捕らえるだけではありません。魔王復活に必要な魔術具なども調査の対象です。なのでこの学院の周辺も手分けして探します」


「なるほどね。おや? そういえばこの学院で決闘とかに使うストーンサークルとかは、魔王復活に相応しい儀式が出来そうなきがするけど」


「ストーンサークル? ああ、あそこですね。そこはすでに調査済みで、怪しいところは無いということです」


 俺がすぐに思いつく地点は流石に抑えているようだ。他にも天文台などを挙げてみたがそこも調査済みらしい。


「主よ。私を捕まえたあの森などはどうでしょう?」


 懐から不意に声がした。俺の使い魔であるカエルの蠱王である。


「森? あの森自体は何の変哲も無かったと思うが……」


「確かにそうですが、考えてみて下さい。こうして使い魔の契約を結んだため、私はこうして話をする能力が備わっていますが、その前からあなたと思念で話し合うだけの知性がありました。私は魔獣などでなくただのカエルです。これは本来あり得ないことです。」


「つまり、ただのカエルを進化……というか突然変異させる何か、例えば魔術上の何かがある可能性があると」


「そうです」


「ふむ……」


 蠱王の言ったことを考えてみる。ただのカエルを変異させる何かがあの森にはある。例えば魔術に関する特異点などがだ。そういった特異点は強力な魔術を行使するのに有効であろう。そう、魔王復活の様に。


「ユルスさん」


「話は横で聞いていて大体察しがつきました。これからその森を調査しに行って来ます。少し突拍子もない話ですが、魔王復活を阻止するためにはその様な小さな疑惑も残しておけません」


 ユルスはそう言うと学院に対して森に向かう許可をとると、魔王調査隊の一団を連れて学院近郊の森へと向かって行った。本当は彼らについて行って協力したかったのだが、彼らは十分すぎるほど強い精鋭であるし、俺は元の世界に戻るため魔力を貯めている最中である。あまり役に立てないだろうと判断して遠慮した。


 ユルス達魔王調査隊の面々が、十数人の魔王信者を連行して学院に帰還したのは間もなくの事であった。

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