鼻が光っている
【私の値段は、幸せの値段】の続編的なサイドストーリーになります。
ミザリーは第二騎士団所属の魔法術師だ。
大后陛下の警護のため、防御魔法の研究で部屋にこもっていることが多かった。
ミザリーは主に、洋服へ防御魔法をかける研究をしている。だがどうしても、生地の柔らかさを生かすことができなくて行き詰まっていた。
「防御かけるとガチガチの鎧みたいになっちゃうんだよね。
何か良い方法はないかなぁ」
ミザリーの肩で切り揃えた焦げ茶色の髪が困ったようにフワフワ揺れている。瞳は緑色だが、今は眉間にしわを寄せ、きつく瞑っているために見えない。
どれだけ研究しても、鉄板みたいになる布をゴンゴンと叩きながらため息を吐いた。
美しいドレスのラインを生かしたまま防御力を高める。そんな良い方法はないかと頭を抱えるミザリーだった。
「案が浮かばないなら、気分転換に休暇でもとって里帰りしてみたらどうだ?」
同じ研究室にいた同僚が、軽い感じで言ってくる。
しばらく考えた後、小さく笑いながらミザリーも同意した。
「それもそうね。環境が変わると何か発見があるかもしれないわ」
気分転換も必要。ミザリーは同僚に感謝しながら、休暇申請をするのであった。
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ミザリーは城下町の服屋の娘だ。小さな頃から魔法術に長けていて、その腕を買われて第二騎士団に入団し、妃の帽子や髪飾りに防御魔法をかけるなどしていた。
「布に魔法をかけるのは得意なんだけどな。
柔らかくすると、防御力が落ちちゃうし」
独り言を言いながら、のんびりと実家までの道を歩いていると、すれ違う中、鼻の頭をピカピカさせている人がいた。不思議に思いこっそり近くに寄り、横目で鼻を観察してみると、微かだが聖魔法の残滓を感じた。
鼻がピカピカ。不思議に思いながら実家で過ごしていたが、お客さんの中にも何人がピカピカしている人がいた。誰にきいても、「おまじないだよ」としか言ってくれず、釈然としない思いを抱えたまま休暇は終了した。
なんだかモヤモヤするなぁ、と思いながら第二騎士団の詰所に顔を出し、城下町の鼻の頭の聖魔法について知らないかと、皆に問いかけた。
すると同僚がニヤニヤしながら、「城下町の鼻ピカ魔法だろ?第一騎士団のマリク殿に聞いてみな」と、皆、マリクの名前を出す。
「わかった。聞いてくる」
遠くで、盛大に惚気られて来いと聞こえた気がしたが、ミザリーは何のことか分からず足早に第一騎士団へと向かったのだった。
そして、到着して皆のニヤニヤの意味が分かった。
マリクの全身がピカピカと光り輝いていたのだ。
鼻だけではなく、全身が優しく輝いていることに驚くのであった。