17話 車懸り対連車輪1
――――――俺の軍は車懸り、まだ日本において使われたことのない陣形
――――――儂の軍は連車輪、まだ戦において使ったことのない陣形
――――――天羽源鉄の代わりとして、
――――――飯塚美濃守重光の名において、
――――――絶対に負けるわけには行かないっ!!
《天羽源方》
「ねぇねぇ、又五郎、真幸」
「なんだ?」
「おう」
「あれさ、」
俺は目の前に広がった陣形を見てこう言った。
「車懸りじゃない?」
そう、目の前に広がった陣形――――美濃守の陣形は、車懸りそっくりだったのだ。違いがあるとすれば、何個もある代わりに、一つ一つの大きさが小さいことぐらいだ。
「軍師殿、俺らの見間違いじゃないんだな?」
「それはこっちが聞きたいよ……」
どうやら、又五郎や真幸も同じ光景を見ているらしい=これは現実であり、夢ではないということだ。
「美濃守のおっさんて、小田家の軍師なのか?」
そう質問してみると、
「いや、違う。おそらく野中瀬備前守の案を美濃守殿が工夫したのだろう」
と真幸が答えてくれた。
「そうか。それより、野中瀬備前守って誰だ?」
「俺と同じ小田六騎の一人で、正式に言うと野中瀬備前守氏兼。数えで19の苅間城主だ」
又五郎に詳しく聞いてみると、敵にはもう一人小田六騎の人がいて、江戸山城守嘉之というらしい。また、大曽根城の浅野五郎左ヱ門、藤右ヱ門兄弟と海老ケ島七騎の堤豊後守景昭の3将がいるらしい…。
って、俺より好待遇じゃないか!俺の軍の名の知れた将は、又五郎と真幸のみ。
他の隊長である奈羽、平三、基永は、普通の武士だ。陽炎は、もともと甲賀の忍びの中で1,2を争っていた(本人談)とはいえ、こういった感じの戦いにはたぶん慣れていない。とんぼ、伝助、良平にいたっては、農民である。
終わった……。負ける気しかしなくなってきた…‥‥。
《飯塚美濃守方》
「おい、備前」
そう言って儂は、備前を呼んだ。
「何でしょうか、美濃守様」
「あれ、でかい連車輪ではないか?」
「違います」
「そうか、儂の見間違いか……って、そんなわけなかろう!巨大連車輪ではないか!」
つい、乗り突っ込みしてしまったでないか!
「だから違います。あれは、連がない、ただの巨大車輪です」
「屁理屈言うな」
どうしよう……。儂、少しばかり不安になってきてしまった……。
小田六騎一覧
沼尻播磨守又五郎家忠
野中瀬備前守氏兼(野中瀬鈍斉)
江戸山城守嘉之
関刑部
平塚自省長信
友部主膳