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Old enemy a Own  作者: ゆう
4/6

type-U

『なっ、何でだ』



谷間良は動揺して上手く言葉を紡げない



だって…今目の前にいるのは



『まさか、‘‘自分の元’’になる姿を見る事になるなんてな』



自分と同じ声、姿をした男だったからだ



『…おっ、お前は誰だっ⁉︎』



谷間良は自分と同じ声姿を持つ男に指を指し問う



その時の谷間良の目は焦点が定まっておらず顔も強張り、声も僅かに裏返る


当然なのかもしれない…ここまで立て続けに理解不能な事が起きている__気が狂わない方がおかしい



『俺か?俺はお前…と言っても機械の体…アンドロイドだけどな』


男はつまらなさそうに告げる



『なんで、俺と同じ姿を…してる』


谷間良は恐る恐る尋ねる




『それはお前…』


男がそこまで言いかけると



『やめてっ‘‘type-U’’‼︎…』



少女がそれ以上言うなと言うように叫ぶ




『‘‘未来の…52才のお前が、この俺を造ったからさ』



が、少女の制止の言葉も虚しく谷間良にとって信じられない事が告げられる



(俺が、造った…アンドロイドを)



一瞬、谷間良の視界が揺らぎ心が嫌な音を立てた



『ふははっ、だが俺が造られたのはあくまで試作機としてだ』


type-Uと呼ばれるアンドロイドは、忌々しそうに言う



『試作機?』


谷間良は辿々しく一つの単語を口にする



『あぁ、俺は普通のアンドロイドとは違う

人工知能が俺のここ…頭脳に取り付けられている

これにより、俺は他のアンドロイドより人に近付く事が出来る』



確かにtype-Uは、先程のアンドロイドとは違い喋りも人間らしく動きも機械のように単調じゃない…人間そのものだ



『未来のお前は、人とアンドロイドは日常の中で共存出来る事を証明しようとした…そこで生まれたのが俺さ』



自分を指差して言うtype-U…その時の表情は怒りで顔が強張っている




『最初はいろんな事を教えて貰った…人の在り方や愛情、友情などと言った感情もな、、』



どこか遠い目をしながら言うtype-U



『だけど、ある時聞いたんだ…俺はその人とアンドロイドの共存が可能だと立証されたら‘‘廃棄処分’’すると』



その目に怒りを募らせて言うtype-U




『なっ、嘘だっ』



谷間良は否定する…未来の自分とはいえ自分がそんな事する訳ないと思いながら




『嘘じゃねぇ、それは…そこにいる‘‘2人’’の方が俺より詳しく知ってるはずだぜ』



type-Uは少年少女の2人を指差し言う



『ほんと…なのか?』



谷間良が尋ねても2人は答えない


少女に至ってはどこか辛そうに見えた



(本当…の事なのか)



谷間良は落胆する…未来の自分がアンドロイドとはいえ意志のある者を処分しようとした事実に




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ギシッ◆◆◆◆◆◆◆◆◆


type-Uは谷間良に向け剣を向ける



その剣はファンタジーの世界で見るようなデザインの剣で、とても近未来の武器には見えない物だった



『俺が、この時代に来た目的は…谷間良、お前だ』



その目からはとても冗談で言うような目ではない血走った目をしていた



『な、なんで寄りによって‘‘過去’’の俺なんだ‼︎』



そう、殺すのなら別に‘‘過去’’の谷間良ではなく‘‘未来’’の谷間良を殺せば済む筈だ



『未来のお前ならとっくに殺した…』



『なっ…』



谷間良はその言葉に絶句する


(未来の自分は既に殺されている…なら、こいつの目的は…?)



朧げにtype-Uを見つめる谷間良



『なら、どうして…』



震える声で聞く…内心では聞きたくないと思いながら



『復讐だよ…‘‘過去’’の谷間良が消えれば32年後の‘‘未来’’にお前は存在しない』


声高々に告げるtype-U



『そんな事をすれば、type-U…貴方も消えるわっ‼︎』



気付けば少女が谷間良の背後でそんな事を言う



(いつの間に…?)


気配すら感じる事が出来なかった谷間良は驚く…それよりも



『…つまり、お前は自分も消える事を承知で、谷間良の‘‘存在’’を消す為に俺を殺しに来たのか?』



タイムパラドックス…世の中にはこういう言葉がある



例えば‘‘谷間良’’は母親と父親がいるから生まれた…

だが、ありえない事だが誰かが谷間良が生まれる前の‘‘過去’’に飛び谷間良の母を殺すとしよう


その場合、‘‘谷間良’’の存在に矛盾が生じ…今現在ここに存在する‘‘谷間良’’も消えてなくなるという訳だ


消えた瞬間にそれまで関わっていた人達の記憶の中からも抹消されると言われる…と言っても



今の科学では理論は確率されているが、過去に跳ぶ手段が無いため証明する事は不可能とされている



だが、谷間良は実感していた


今の話が本当だと…いやここまで現在の科学では考えられない武器や謎の竜巻から現れた少年少女とアンドロイド…谷間良はtype-Uの未来から来たと言う話をもう疑ってはいなかった



だから…自分が消されれば、タイムパラドックスが起きるという事を



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ズサッ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



谷間良を背に少年と少女が前に出る



『させない…貴方に叔父さんは消させないっ‼︎』


少女はそう言いながらtype-Uに銃口を向ける



『…そこにいる男は、過去の叔父さんであって君の知ってる叔父さんとは違う存在だ』


吐き捨てるように言うtype-U



『うるさいっ…それなら何故、この人を狙うのっ⁉︎』



『…言っただろ?‘‘過去’’の谷間良が消えるんだったらどの時間でも構わない…たまたまそれがこの‘‘時間’’だっただけ』



そこでずっと黙っていた少年が口を開く



『悪いけど、君の復讐は此処で終わりにさせてもらうっ‼︎』


言い終わると同時にtype-Uに斬りかかる



『ふんっ!』と掛け声と共に横一文字に振るう少年



type-Uはそれを後方に飛び回避…


飛ぶ寸前にビームサーベルに向かって緑のボール状の何かを投げつける



それを切った瞬間…


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ボッ…ビューー◆◆◆◆◆◆◆



菱形の大きな緑の‘‘ゲート’’の様な物が現れその中から強い風が生じる…まるで、谷間良と少年少女を引き入れたいかのように



『っ何⁉︎』



少年は驚きの声を上げる



『お前達は、邪魔だ…谷間良、お前を簡単に消すのはつまらない__最高の舞台を用意してやる…‘‘未来’’で待っていろっ‼︎』



type-Uがそう言い終わると同時にゲートのような物から吹く風が一層強まる



『…っ、きゃっ‼︎』少女が耐え切れずゲートに吸い込まれそうになる



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ガシッ◆◆◆◆◆◆◆◆◆


が、間一髪の所で谷間良が少女の手を掴む



『っ…大丈夫か?』


『えっ、えぇ』


少女は戸惑いながら答える



(ちっ…このままじゃ、いずれ)



そう思った時だ…



『…うわあァっ‼︎』



少年が耐え切れずゲートの中に吸い込まれていく



(カイ)っ‼︎』


少女の悲痛な叫び声が響く



それと同時に谷間良も耐え切れず由香奈と呼ばれる少女と共にゲートに吸い込まれる



『うわあっ‼︎』『きゃーっ‼︎』



2人が吸い込まれた瞬間ゲートと思われる物が閉じ消失する



そしてその場に残されたtype-Uが不敵な笑みを浮かべ



『ふっ…‘‘現在(イマ)’’からが楽しみだっ‼︎』そう声高らかに叫ぶ声だけが周りに響いたのだった

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