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世界でただ一人銃を扱える者(仮)  作者: おひるねずみ
第1章 旅の始まり
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第八弾 戦闘終了

 医療の革命が起こせるほど効能に、俺は戦慄を覚えると同時に、胸を撫で下ろす。


「もう大丈夫だリーネ。心配かけたな」


 リーネは俺の無事が分かると、なりふり構わず俺の胸に飛び込んで来た。

 青色の瞳を潤ませながら抱き着くリーネの感触を感じ、生きてる事を実感する。

 胸板に顔を擦りつける、愛くるしい仕草を間近で見ながら、左手で髪を優しく「ポンポン」と、接触させた。

 俺に頭を触れられた事で、リーネの涙腺が緩み、体を身震いさせ、堪えていた感情を爆発させた。


「うわぁぁぁ~ん! すごく。すっごぉーく、心配したんだぞぉ~! 死んじゃうんじゃないかって、思ったんだからなっ」

「リーネ、ゴメンな。もう少し、このままでいたいけど、急いでレオナさんの方に向かわないと」


 思わずリーネは顔を上げ、俺から身を引きながら、視線をレオナさんの方に移す。

 拘束を解かれた俺は立ち上がりながら、そちらに視線を向けると、レオナさんが二刀流でレッドオークを切り伏せる場面が、現実映像として瞳に焼き付いた。

 レッドオークが地面に倒れ、ピクリとも動かなくなり、戦闘が終決。

 リーネと共にレオナさんに駆け寄るが、様子がおかしい。

 剣を地面に差し、剣の柄に全体重を乗せて、倒れないように踏ん張っている様に見える。


「レオナさん?」


 俺が声を掛けると、安心したのか首だけこちらに向けて、肩で呼吸をしながら弱々しく笑っていた。

 

「キッドさん。リーネ様のこと……貴方に託し」


 ―――ドサッ! 最後の言葉を言わずして、体から力が抜けたかのように、うつぶせに前へ倒れ込む。

 俺達は急いでレオナさんの傍によるが、何故、こんなにも衰弱しているのか把握できなかった。

 俯けから仰向あおむけにしても、オークの槍で傷ついた外傷が、何処にも見当たらない。

 なのに吐く息は、高熱でうなされたかの様な、桃色吐息で妙に色っぽい。


「レオナさん。しっかりしてください。いったい、何があったんですか!」

「ふふっ……私は。もう駄目です……蛇に首を噛まれて毒が……」


 辺りを見渡すと、体長一メートルも満たない小型の蛇が、真っ二つの状態で地面に放置されていた。

 毒に侵されながらも、レッドオークを倒したレオナさんの精神力の強さに脱帽する。

 人として凄い人だと、改めて尊敬の念を抱く。


 真っ二つになった蛇をまじまじと見たリーネは、事態の深刻さを声音で露わにした。 


 「兄様。この蛇、猛毒を持つ『スモールバイパー』って蛇だよ! 噛まれたらすぐに対処しないと、駄目だって! おじいちゃんから聞いた事ある!」


 俺はレオナさんの首を調べ、右首筋に、蛇に噛まれた極小サイズの傷口を発見。

 少し躊躇ためらうが、一縷いちるのぞみを託し、処置を開始する。


「レオナさん。始めに謝っておきます。すいません」

「―――――っ!?」


 レオナさんの頭を左手で支えて、毒を吸い易いように固定し、右首筋に口を当て毒を吸い出し、その辺の地面に吐き出した。

 同時に「下級錬金レシピ。適正レベル九。ポイズンリカバリーボトル」の、制作を実行する。

 毒消し草2に対して水分1の割合で錬金開始。水分に使用する材料は「ヒールボトル1/3」だ。

 ルーレットは金色が一マス。青が四割。赤が六割になっている。

 錬金レベルが上昇したのだろう。ヒールボトルより難易度が高いはずなのに、青色が予想以上に多い。

 俺は嬉しい誤算に喜びながらも、ルーレットの回転を止めた。


 一度回してストップさせた経験もあり、タイミングはドンピシャで、青色がずらーっと並ぶ真ん中にストップ。

 丁度そこには金色が光り輝いており、大・成・功! の文字が表示されていた。

 出来た完成品は、ポイズンリカバリーボトル2/2。品質81。一級品。HP+毒回復の効果ありと、説明書きされており、急いで現物を取り出した。


「レオナさん。しっかりしてください! 薬が出来ましたよ」

「レオねぇ―――! 兄様が薬作ったから、飲んで元気になってよぉ~! 毒なんかで死んだら、絶対ゆるさないんだからぁ~!」

「……くす……り……?」


 レオナさんのHPバーが一割を切り、一刻の猶予も無い。

 レオナさんの口に少しずつ、苦しくないように流し込む。

 HPバーが減ったり増えたりして、予断を許さない。

 その時、俺のHPが僅かに減少したので、念のため、コップに一口分入れ、地面に吐き出し解毒した。

 しばらくして、俺が制作した薬をすべて飲ませ終えた。

 後は、レオナさん自身の生命力に掛けるしかない。


「レオねぇ……私を置いて、どこかに行かないでよ……置いて行ったら、一生恨むんだから」

「リーネ。レオナさんは強いから、毒で死にはしないよ。それに、俺が薬を作ったから大丈夫さ。現に、俺はピンピンしてるだろ?」


 うつむいた表情のリーネは、レオナさんに寄り添いながら顔を上げ、俺に目線を合わせてくる。

 今のリーネは、レオナさんがいなくなったら「フッ」と、吹いたら飛んで行く、タンポポの種子の様な面持ちをしていた。

 ここに来るまでに、沢山の人を失ったであろう、リーネの精神状態は限界に近い。


「信じて……いいんだよね、キッド?」

「ああ! 俺を信じろ! リーネもレオナさんも一緒に、シュミル村に連れて行っていくと約束する」


 藁すらすがる様な顔つきリーネに対して、俺が出来る精一杯のハッタリを、自信満々の様に見せかけて言い放つ。

 俺の言葉が効いたのか、劇的な変化が顔色に表れた。


「うん…………うん! ありがとねっ。お陰で少し楽になったよ。えへへへ、やっぱりキッドは僕の自慢の兄様だよ!」 


 リーネは泣き笑いを浮かべ、とびっきりの笑顔で微笑みかけた。

 俺の心臓は飛び出しそうなくらい跳ね上がり、言葉が出なく息が詰まる。

 この笑顔を守るために、俺はここにいるのかも知れない。


「とりあえず、レオナさんを担いで移動しよう。いつ、もう一匹のオークが戻って来るか分からない」

「そうだね。レオ姉は赤で目立つから、隠れないと」


 オークが来る前に茂みに隠れ、レオナさんの容態ようたいを観察しながら、周囲を警戒する。

 数分後。

 毒が抜けきったのか、ゆっくりと上半身を起こし、驚愕の表情を浮かべるレオナさん。

 が、すぐに凛とした表情に戻す。


「私は……生きてるんですね…………本当にキッドさんには、頭が上がりませんね。助けて頂き、本当にありがとうございます。ところで疑問なんですが、どこでバイパーの血清を入手したんですか?」

「材料があったので、自分で作ったんですよ。ハァ~、ほんとうに毒が治ってよかった。もしも治らなかったら、リーネが大泣きする場面が頭に浮かんでましたから」

「そ、そんな事は、ないんだからな! もう! キッドにぃのバカぁ~」


 小さい頬を膨らませ、まるでリスみたいなリーネ。

 小動物の面持ちを見せつけられ、場がほっこりする。


「二人には、ずいぶんと迷惑を掛けましたね。もう、大丈夫です。急いで、ここを離れましょう」

「レオねぇ! やせ我慢しない? 本当に平気なの? もう少し、休憩してもいいんだよぉ?」


 レオナさんは体の状態を確かめながら、問題が無いと判断し、先を急ぐことに決めた。


 鳥達のさえずりが、そこらかしこから聞こえる。

 鳴き声の方に目をやれば、木の枝に幾つもの種類の鳥が見てとれた。


「ブォ―」


 レッドオークを倒した場所の方角から、オークの怒号。

 鳥たちが騒めき、一斉に別の場所に飛び立っていく。

 別の場所に移動した、オークの声だろう。

 きっと血眼になって、俺達の事を探しているに違いない。

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