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世界でただ一人銃を扱える者(仮)  作者: おひるねずみ
第0章 プロローグ
6/19

第六弾 鑑定眼

 ひんやりとした空気が森全体を覆い、朝霧を発生される。

 木々がしげり、太陽光が地面に届かない場所が殆どだ。

 その為、温度が非常に低く感じ、肌寒い。

 進軍のポジションは、一番前がレオナさん。中央がリーネ。最後尾が俺だ。

 レオナさんは、森に迷わないようコンパスも所持しており、迷子になる事は無い。

 俺自身も、MAPで南に向かっている事を確認しているので大丈夫だ。

 本来なら、レオナさんが提案したヘラリス川の傍を移動するのだが、アクシデントがあり、仕方なく深い森の中を歩いている。


「まさか、川で見張ってるとは思わなかったなぁ~、やっぱり、あいつ等おかしいよ」

「リーネ様。あいつ等では無く、ゴブリンです」


 リーネが、街を襲った敵の名前を知らない事に、ため息を漏らすレオナさん。

 アクシデントも遭った事で、少し機嫌が悪い。


「確かにリーネ様が仰る通り、普通ではありません。ゴブリンに、川で待ち伏せをする程の知能は無かったはず、何者かの入れ知恵で、あの場所に小隊が配置されたと推測します」

「じゃあ、今向かっているシェミル村にも、ゴブリンが向かった可能性があると?」

「その可能性も捨てきれませんが、情報が余りにも少なすぎて、私には見当がつきません」


 森の中を進むにつれて、高まる不安。

 気を紛らわそうと、俺に出来る事は無いかと考えていたら、ちょっとした閃きが俺の脳裏によぎった。

 もしかしたら、植物もターゲットサークルを合わせれば、鑑定眼の効果が働くのかも知れない。

 思い付きで、その辺に生えている植物をターゲットしてみる。

 すると、表示されたのだ。植物の名前が!

 【名前:日陰草ひかげぐさ。日陰に生える草。雑草。生息地、日陰がある森林】


「初めて鑑定した植物は雑草だったか……」

「兄様?」

「いや、何でもない。気にしないでくれ」


 リーネが俺の方を向き、不思議そうにしながら体勢を元に戻し、足元を注意しながら歩き始めた。

 それから俺は、口に出さない様に注意しながら植物を観察しながら歩く。


 【名前:キラミール。弱い毒性アリ。食べると腹を壊す。下級錬金、鍛冶の材料】

 【名前:癒し草。傷を治す薬になる。下級錬金の材料】

 【名前:まどわし草。幻惑の効果がある草。中級錬金の材料】

 【名前:朝日の花。傷を治す効能が高い。中級錬金の材料。咲くのは早朝のみ】

 【名前:朝日花のミツ。傷、疲労回復の効果あり。上級錬金の材料。量が取れなく貴重】

 【名前:毒消し草。毒を治す薬を作れる。下級錬金の材料】

 使えそうなのは、この六種類。

 俺が採取を行い、植物を取った瞬間、異次元袋に勝手に収納された。

 この行為を、リーネ達から離れて迷子にならない様に繰り返す。

 レオナさんが俺の行動を見ていたのか、時折立ち止まり、速度を調節してくれている。

 ああいう、気配りは流石だなと、思わず感心してしまう。

 途中に獣や昆虫の襲撃がありながらも、レオナさんが危険をいち早く察知し、俺達に知らせてくれるので、安心して森の中を移動することが出来る。

 レオナさんの戦闘する姿は、一言で言えばカッコイイ。

 眼前に立ち塞がる敵は、一刀のもとで真っ二つにしており、戦い方に華がある! 見ていて惚れ惚れするほどだ。

 戦闘後の凛とした表情も合わさり、非常に麗しい。

 そんなレオナさんだが、一度も森の中で二刀流になる事が無い。

 リーネもレオ姉が二刀流になった所を見たのは「昨日が初めて」と、言っており、昨日の襲撃の苛烈さを物語っている。

 この辺の獣風情に、レオナさんが二刀流になる可能性は、ゼロに等しいだろう。

 何事も無く、道なき道を前進し、中腹まで来た時だった。

 俺がホクホク顔で採取していたら、レオナさんが進むのを止め、茂みの中に身を隠し、俺達に傍に来るよう手で合図した。


「レオナさん。どうしたんですか?」

「そのまま、前方を見てください」


 俺はレオナさんの指示に従い、茂みの奥を覗き込む。

 そこには、三匹の森の子豚、もとい、三匹の革製の胸当てをしたオークが地面に座り、あぐらを掻いて「ブヒブヒィ」と、くつろいでいた。

 その中でも俺の注意が向かうのが、一匹の真っ赤な体をした、二メートルほどの大きな固体。

 他の二匹はピンク色のデフォルトオークなのだが、奴だけは違う。

 雰囲気が普通のオークと違い、口から天に向かって生える牙があり、目尻が吊り上がっている。


「レオ姉。あの真っ赤な豚はなんなの? 初めて見たんだけど」

「まさか、オークがこの森にいるなんて……この地方でオークが発見された報告は、聞いた事がありません。明らかに異常です! そして眼前の赤い豚は、レッドオーク。ハイオークの上位種です。真っ赤な色が示す通り、凶暴で血が何よりの好物で、危険視されている魔物の一匹です!」

「じゃあレオナさんは、真っ赤な装備をしているから凶暴……」


 レオナさんが「ムッ!」として「茶化さないで下さい」と、言わんばかりの突き刺さる視線を、俺に飛ばした。


「……すいません。こんな時に不真面目すぎました。俺が悪かったです」

「にいさまぁ~。レオ姉は、御淑やかで清楚な女性だよぉ~。見た目もセクシーで綺麗だし、僕の自慢の姉様なんだから、そんな失礼な事言わないでよね」

「確かに、レオナさんは綺麗だな。リーネから見て綺麗なんだから、男の俺から見たら女神さまだよ」

「そ、そんな過剰評価はしないで下さい。恥ずかしい……」


 レオナさんは、褒め言葉に慣れていないご様子。

 いつも真っすぐ前を見つめているのに、今は俯き、照れて困っている。

 本来見せる事がないだろう、異なる仕草に、素直に可愛いと思った。


「レオナさん。話を戻すけど、あのオーク達どうします?」

「そうですね。レッドオーク一体なら、私が受け持ちますが、問題は二匹のオークです。キッドさんは、オーク二体に勝てる自信はありますか?」

「ちょっと待ってください。調べてみます」

「ん? 調べる?」

「俺、相手の生命力を調べることが出来るんですよ」

「「えっ?」」

 

 レオナさんがどうしても、教えて欲しそうな表情をして来たので、リーネも含めて鑑定眼の事を説明をした。


「ならさぁ、ならさあ。私の事も調べられるの?」

「リーネ。調べて見るか?」

「うん! 余すことなく調べちゃっていいよ」

「じゃあ、調べるぞ」


 俺はターゲットサークルをリーネにロックして、鑑定眼を使用した。


 名前:リーネ

 HP:170/170

 年齢:十六歳

 性別:女

 身長:150センチ

 体重:41キロ

 スリーサイズ:7〇・5〇・7〇

 お金:0ルース

 世界の加護:『読心術』

 スキル:『筋力LV21』『体力LV35』『器用LV41』『敏捷LV26』『弓LV44』『裁縫LV36』『彫金LV21』『料理LV67』『隠密LV36』『遠眼LV37』『登山LV17』『馬術LV29』『水泳LV27』『交渉術LV28』465/1000

 弓と料理が得意な、活発な美少女。貴方の事が好き。触れている間、心が読める。


「ブフゥッ!」

「兄様! どうしたの? まさか! お肉の食べ過ぎで、気持ち悪くなったの!?」 

「いや、そうじゃないんだ……大丈夫だから、落ち着いて」

「う、うん。兄様が大丈夫なら、それでいいけど。気分が悪いんだったら言ってね? 僕が介抱するから!」


 どうやらリーネは、俺より一つ年が下らしい。

 もう一つか二つ、年が離れているかと思ったが違った様だ。

 スリーサイズも判明してしまった事は予想外だが、それ以上に想像すらしなかった情報が表示されていて思わず吹き出してしまった。


 「触れている間、心が読める」と説明されているから、真実なのだろう。

 リーネの『読心術』により、何を考えているか丸裸になり、俺が望んでいる事を躊躇することなく行動に移すのは、アグレッシブすぎて、ある意味尊敬に値する。

 これも、愛がなせる技なんだろうか?

 

「キッドさん。私の事も調べますか?」


 俺の心がどこかに旅行している最中に、レオナさんに尋ねられ、我に返る。

 レオナさんは前方を見据えながら、警戒を少しも緩めていない。

 俺が驚いている事情も話さず、調べるのは失礼なので、理由を詳しく話した。


「へぇ……もし、知ってて調べたなら、とんだ狸ですねキッド。言い忘れましたが、勿論、私の事は調べなくて結構です。調べたら…………切りますよ?」


 声のトーンを落としたレオナさんが、流し目をしながら、さげすみの眼で俺を見下した。

 許しを請うように、地面に両手をついて崩れ落ちる俺。

 そんな俺を見かね果てたリーネが、頭を撫でてくれる。


「レオ姉。言いすぎだよ! 兄様も悪気があった訳じゃないから、許してあげて」

「ふぅ~。仕方ありませんね、わかりました。キッドさん、リーネ様のご恩情に感謝するのですね。もし、リーネ様の期待を裏切るような事をすれば、どうなるか分かりますね?」

「はっ、はいぃぃ! 誠心誠意、尽くさせていただきます!」


 今ここに、不思議なパワーバランスが誕生した。

 俺はリーネに強いが、レオナには弱い。リーネはレオナに強く、俺に弱い。レオナは俺に強く、リーネに弱い。

 まさに、じゃんけんの三すくみになっていた。

 そして、俺が一人でパニックに陥っていた間に、オーク達に動きがあった模様。

 ピンク色をしたオークが一匹、別の場所に移動したようだ。




第六弾内 〇秘秘話


 キッドがリーネの情報を見て、瞬時にある事を悟る。


「料理のレベルが突出しているのは……」

(『ハッ!』ダメダ、コレイジョウイッタラコロサレ……)


 キッドの視線の先に映るは、真っ赤なオーラを放つレオナさんの姿! キッドは焦る。

 明らかに敵意をむき出しにした、レオナさんの瞳に。

 今にも剣の柄に手を掛け、抜き放たんとしている。

 そこに、空気を読めていないリーネが。


「レオねぇ、どうしたの? 兄様を睨んでるけど、なにか悪い事した?」

「っ! いえ、何でもないのですよリーネ様」


 キッドは思い出す。

 レオナさんがログハウスを訪ねて来た時のことを。

 そう、何も食べていないと話していた……つまり、そう言う事だ。

 緊急事態だったのもあるが、他にも! 要因があったのだろう。

 レオナさんには料理関係の話はしないと、固く! 心に誓った瞬間だった。

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