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世界でただ一人銃を扱える者(仮)  作者: おひるねずみ
第0章 プロローグ
4/19

第四弾 異次元袋様

 俺は戸棚からお皿を拝借し、丸太のテーブルに置いた。


「キッド。何してるの?」

「今から、とっておきの魔法を見せてあげるよ」

「んっ? 魔法?」


 リーネの頭の上に、ビックリマークが出ている気がする。

 アヒルの唇見たいになって、可愛いな。


 リーネの表情を観察しながら俺は、お皿の上に猪の肉が出現するように念じた。

 すると、お皿の上には猪の肉が出たのである。

 異次元袋様のお陰だ。


「えっ? ええぇぇぇぇ―――――!! い、今の何!? ねぇ、ねえったら。今のどうやったの!? 教えてよぉー、きっどぉ~」

 

 体を俺に密着させ、猫が寄り添うような仕草をして、誘惑しようとしてくるリーネ。

 不意を突かれた俺の心臓は、高鳴りをみせている。

 教えたいんだが、念じたら出るんだって言ったら信じるんだろうか……いや、絶対信じないよな。俺なら信じない。


「これは俺にしか使用できない魔法なんだ。悪いけど教える事が出来ないんだ」

「そ、そんなぁぁ~~。こんな凄い事が起こせるなら、不可能を可能に出来そうなのに」


 確かにリーネの言うように、不可能を可能に出来るだろう。

 だが、何度も言うように、俺は異次元袋を仕組みを理解していないので、誰かに教授する事は無理なのだ。

 理論を理解していない者が、人に指導など出来る訳が無い。

 まあ、そんな事はどこかに置いといて、今は食事だ!


「リーネ。さっき台所を見たが、火をせるのか? それっぽいのが、何もないぞ?」

こすり石があるはずだから、大丈夫だよ」

「擦り石?」

「うん。擦り石を数秒擦っていると、赤く発光してから熱を発生させるんだ。一時間ほどで効果が切れるけど、また擦れば使えるから、とっても便利なんだ」

「フ~ン。それで、どんな形をしているんだ?」

「平べったい物もあるし、小さいキューブ状のもあるよ。正四角形で、平らだから安定するし、便利だよぉ」


 どうやら擦り石が、クッキングヒーターの代わりになっており、この世界にとって替わっている様だ。

 リーネはキッチン周りを「ガサゴソ」と探し、調味料の塩、コショウ。それと、お目当ての擦り石を見つけた様子。

 早速、猪肉をキッチンにあった包丁でスライス。

 キッチンで擦り石を擦り、その上にフライパンを乗せ、スライスされた猪肉を焼き始めた。

 いい具合に焼きあがった所で、塩コショウを振り味付けして完成。

 リーネは料理の完成品を、正方形の木製のテーブルに置き、俺の対面に位置する椅子に腰を下ろした。


「じゃあ、頂くとしようか! どれ程の御手前か検分させてもらおう」

「う~、キッドめぇ、僕の料理の腕前を信用していないなぁ~! 別に毒は入って無いから大丈夫だぞ!」

「言い訳は後で聞くとしよう。って。どくぅ!?」 

「えっ? ちょっと、脅かしてみただけだよ? そんなに真に受けると、僕、反応に困るんだけど……」

「そ、そうか……では、あらためて。いただきます!」


 薄くスライスしてある肉を口の中に頬り込んだ瞬間、肉のうまみが舌を通じて、脳が測定結果を啓示した。


「リーネさん。美味おいしゅうございます」

「おいしゅう?」

「美味しいって事さ。想像以上だった。ただ焼いてあるだけなのにな」

「お腹が減ってるからだと、僕は思うけどなぁ~。まあいっか、それじゃあ僕も、いただきます!」


 二人揃って「はむはむ」肉を口の中に入れて行く。

 肉の量は六人分ほどあり、四人分残りそうだ。

 そして、食事が中ほどに差し掛かった時、水溜りを素早く駆けて行く足音が聞こえた。

 音に気付いた俺達は同時に立ち上がり、迫る足音が玄関の方に行くと、臨戦態勢の構えをし、外の気配を捉える様に神経を尖らせた。


 足音の主が玄関のドアを「コン、コン」と、二回ノックする音が聞こえる。


「誰かいますか――!」


 声色から判断するに、若い女性の声だ。

 リーネがここを訪れて来た時と同様の、鬼気迫る声。

 恐らく、リーネが住んでいた村から逃げて来た人だと、頭の中で認識した。


「貴方、お一人ですか?」

「ええ、私一人です。不躾なお願いですが、家の中に入れて貰えないでしょうか? もうすぐ日が暮れ、この雨の中、夜の森を行動するのは自殺行為なので」

「この声!」


 リーネは俺の背後から飛び出し、外にいた人物を中に招き入れた。


「やっぱり、レオねぇだぁ~。良かった、無事でいてくれて。もう二度と会えないかと思ってたよぉ……」

「リーネ様。よくぞ、御無事で!」


 赤金色ストロベリーブロンドの髪をした女騎士に、涙を零しながら抱き着くリーネ。

 女騎士もリーネの背中に両腕を回しながら、包み込むように抱きしめた。

 女騎士の姿は、腰に二本の長剣を装備し、赤色の軽装甲の防具を上下に装着していて、下は黒色のスパッツと黒ニーソを履き、動きを妨げない恰好をしている。

 お互い生きて会えた喜びを分かち合っている様子を見て、自然と表情が穏やかにさせられた。


 二人の抱擁が終えた所で、自己紹介が始まる。


「貴方がリーネ様を保護してくれたのですね。申し遅れました。私の名前はレオナと申します。」

「キッドです。今、ちょうど食事をしてたんですが、もし良かったら一緒にどうですか? まあ、お肉しかないんですが」

「いえ、構いません。私は約一日程、まともな食べ物を食べていないので、非常に助かります」


 俺はリーネ、レオナと一緒に食事をし、何故レオナは、リーネの事を様付けで呼ぶのか? 疑問に思ったので質問をした。


「……リーネ様は、ラッテ村の村長の一人娘なんです。私は以前、村長様に命を拾われまして、それからずっとリーネ様を守護してきました」

「なるほど、レオナさんはリーネの従者をしてるんですか」


 俺の言葉に素直に反応しないで、沈黙しているレオナさん。

 

「私にはリーネ様の従者を名乗る資格はありません。本来なら、ずっと御傍おそばに就いていたかったのですが、実力が足りなかった為。リーネ様を逃がすのが、私に出来た精いっぱいの行為でした。リーネ様。危険な目に逢わせた、不甲斐ない私を許して下さい」


 レオナさんは肩まで掛かる赤髪を揺らしながら、席を立ちリーネの前まで進み、目を瞑りながら、腰を下ろし膝まづいた。


 それをリーネは、じぃっと眺め、少し大げさに怒り出す。


「ん~~もうっ! レオ姉のばかぁ! そんなに真面目に考えなくてもいいの! 僕はレオ姉が助けてくれなかったら、あの場面で終わりだったんだよ! だから一切、気にする必要が無いの!」

「ですが!」


 反論しようとするレオナさんだが、リーネがそれを許さない。


「だめ、だめ、だめぇ~! 言い訳は、聞きませんっ! 罰としてレオ姉には、僕が良いと言うまで従者をして貰います! 決定だから、覆らないからね!」


 リーネの暴虐舞人の振る舞いに、俺の頬は丸みを帯びる。

 レオナさんの表情も、瞳に雫が溜まってはいるが、笑みが零れていた。

 どうやら吹っ切れた様だ。


「ふふっ、ふふふ。まったく、リーネ様のお転婆には困ったものです。わかりました。私、レオナは、いつまでもリーネ様を守護する従者になると誓います」


 レオナさんの言葉を聞き、胸を張りながら偉そうに、り返るリーネ。

 三人共々、笑いあって、食事をしながら、今までの出来事を話した。

 そして、俺がリーネを助けた場面を話している時、信じられないと言う表情をレオナさんがする。


「キッドさん。今の言葉は本当ですか!?」

「僕が見てたから間違いないよレオ姉。キッドが小人を銃で倒したら、小人が綺麗に消滅したんだぁ! 僕も初めて見た時はビックリしたなぁ~」


 瞳を輝かせながらリーネは、襲撃された出来事を語る。

 絶体絶命な所を助けられた為か、少々興奮気味だ。


「そんな馬鹿な事が…………いえ、リーネ様は嘘を付きませんよね。真実だと信じましょう」

(レオナさんの目は、まだ疑ってる眼だな。なら、これならどうかな)

「じゃあ、もう食事も終わりって事で肉を片付けてもいいかな?」

「ええ、それでは片付けましょうか。キッドさん、塩漬けして非常食にします? それとも何か入れ物に詰めます?」

「いえ、レオナさん。そのまま動かないで、肉を見つめていて下さい」


 俺の言葉を不思議に思っているレオナさん。

 リーネは感づいたようで、気付かれまいと笑いを堪えてる。

 そう言えば、ターゲットすれば品質が識別眼で判別できるんだよな? 異次元袋に入れてる最中、品質が下がったり腐ったりするのか? それを兼ねて実験するとしよう。

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