第三弾 銃使用許可証
外の天気は、さっきより悪く、雷が鳴り響いていて、雨がスコールのように地面を打ち付けている。
俺はこの時間を利用して、ステータス、加護、スキルの説明を読むことに。
名前:キッド
種族:人間の青年
性別:男
HP:45/45
筋力:1
耐久:3
器用:3+1
敏捷:3
ダメージ:19~22
防御力:3+3
射程:30メートル
武器:ファースト・リボルバー。ダメージ13~15
弾:練習用の弾七十二発。ダメージ2~3
防具:『初心者のシャツ(白)防+1』『初心者ガンホルダー(黒)器用+1』『初心者のズボン(黒)防+1』『初心者の革靴(黒)防+1』
世界の加護:『錬金術の才能』『鑑定眼』『生産者魂』『異次元袋』『銃使用許可証』
お金:20ルース
スキル:『筋力LV1』『体力LV3』『器用LV1』『敏捷LV3』『銃LV4』『錬金術LV1』『鍛冶LV1』『裁縫LV1』『隠密LV2』
17/1000
いつの間にか、ステータスとスキルレベルが上昇していた。
俺は落ち着いて、加護やスキルの説明文を紐解き、解釈する。
世界の加護
『錬金術の才能』材料を集め念じるだけで、瞬間的に完成品を創り出すことが出来る。作業時間の大幅短縮。但し、製品の知識が必要。
『鑑定眼』ターゲットした物の、名前と説明が表示される。
『生産者魂』生産品の、失敗確立減少。品質アップの確立上昇。
『異次元袋』異次元空間にアイテムを収納できる。念じれば取り出し可能。
『銃使用許可証』この世界で唯一無二の証。許可証を持つ者のみ、銃の引き金を引くのが許される。
スキル
『筋力LV1』近接攻撃の力強さに影響。荷物の重量にも影響あり。力を使う事でレベルが上昇。
『体力LV3』最大HP、スタミナに影響。走ったり、長い距離を歩く事でレベルが上昇。1レベルに付き、HP5上昇。
『器用LV3』遠距離ダメージと生産品の成功率、品質に影響。遠距離攻撃や生産をする事でレベルが上昇。
『敏捷LV3』すばやさ。素早い行動を取ったり、走り込むことでレベルが上昇。
『銃LV4』銃の命中率、距離、銃の装備できるレベル制限に影響。銃を使いこむ事でレベルが上昇。銃の知識も与えられる。
『錬金術LV1』錬金製品を制作できる。錬金製品の制作でレベルが上昇。
『鍛冶LV1』鍛冶製品を制作できる。鍛冶製品の制作でレベルが上昇。
『裁縫LV1』布系の防具を制作できる。裁縫製品の制作でレベルが上昇。
『隠密LV2』気配を薄くしたり、相手の場所を把握することが出来る。気配を消したり、周りに気を巡らす事でレベルが上昇。
19/1000←合計1000レベルになるまで、レベルを上げることが出来る。途中でレベルを下げたりする事も可能。
新しいスキルを覚えれば、習得したスキルのレベルを上げることも出来る。
いつの間にか、新しいスキルが発現してる。
そのスキルに関係ある行動をすれば、習得すると言う事か。
それならレベルが上がってるのも納得だ。
敵対生物に銃を使用したし、走ったり歩いたりもしたからな。が、やはり『錬金術の才能』と『銃使用許可証』が気になる。
『錬金術の才能』は、想像するだけで錬成できるなら、かなり有用な加護の気がする。
そして『銃使用許可証』
説明の通りなら、別の人が銃を持っても、引き金を引けない事になる。
「キッド、お待たせ。着替えたけど、似合ってる、かな?」
リーネが玄関ドアを開け、目線を下に向けて俺に尋ねる。
「さっきのボロボロの服よりは、全然いいよ。似合ってる」
「そ、そう? えへへ。それならいいんだ」
俺がログハウスのクローゼットの中を覗いた時、女物の服は一つも無かった。
と言う事は、ログハウスの持ち主は男と言う事になる。
つまり、今のリーネ服装は、男の物の服を着ていると言う事だ。
上下、森の中で傷つかない恰好で、ガンホルダーが無い以外、俺の服装と全く一緒だ。
少しダブついて、恥ずかしがっているが、追及はしない。
「リーネ。ちょっと試したい事があるんだけど、いいか?」
「んっ? 何でも言っていいよ。なにかな?」
俺はガンホルダーに差してあるリボルバーをリーネに手渡し、木に向けて引き金を引いてみるよう仕向けた。
「これを引けばいいんだね? それじゃあ、行くよぉ~!」
「ああ、引き金を思い切って引いてくれ」
五秒後。手を上下にブンブン揺らして、駄々をこねるリーネがいた。
「…………きっどぉぉ~、これ、全然ひけないよぉ~」
リーネが力を込めて引き金を引いているが、微動だにしていない。
やはり『銃使用許可証』が無いと、銃の引き金は引けないのだろうか。
なら説明に書いてある通り、この世界では俺以外の人が銃を扱えないと言う事になる。
「キッド。コレ返すから、引き金を引いて見せてくれない?」
俺はリーネから銃を返してもらい、木々に狙いを定め、銃の引き金を一回だけ引く。
――――パン! と乾いた音がなり、近くの木に弾が当たり、細かい木片が周囲に拡散した。
「すご~い。これが銃の力なんだね! いいなぁ~、僕にも銃が使えれば……」
「いや、こんな物は無い方が良いんだ。世界の住む人々が、一人一つでも持てば恐ろしい事になる」
「そうなの? あっ……うん。そうなんだろうね、誰かが銃で傷つけて、連鎖的に広がっていくのが分かるよ。でも! 僕にはその力が欲しい」
張り詰めている雰囲気を心に秘めて、リーネは何かを決意した表情を俺に向けた。
「キッド。お願いがあるんだ。君の力で、僕の住んでた村を救ってほしい!」
「村を救う? どういう意味だ、さっきのゴブリンと関係があるのか?」
「うん……実は…………さっきの小人達が大勢来て、村が襲われたんだ。最初は、村の駐屯している騎士達や大人達が協力して、進行を食い止めていたけど。後方から隊を率いて来た、大きい小人の奴が来てから戦況が覆された。きっと、あいつが小人の群れのリーダーなんだ。あいつが叫んだら、急に小人の動きが良くなって、その内に村の中に小人が侵入して……後は、どうしようもなかった……私も一度捕まりそうになったけど、私が尊敬するお姉ちゃんが、身を挺して助けてくれたんだ……」
なるほど、それで命からがら、帰らずの森に入ったのか。
「リーネ。外は冷えるから、続きは中で話そう」
「……うん」
弱まる気配が無い雨音を耳に入れながら、リーネの会話に同調するように、その場に合わせた。
リーネの情報によると、ゴブリンは残り二百匹程。
俺はどちらかと言えば、リーネの村を救ってやりたい。
だが、一人で相手をするのは無理だし、弾の数も圧倒的に足りない。
今しがた、ゴブリンを倒して銃のレベルが上昇したのか、弾丸の材料が分かった。
材料は銅のインゴット一つで、銅の弾丸二十発分。
銅のインゴットは銅の鉱石三個か、銅の小鉱石九個で一つ出来上がる計算だ。
つまり、鉱石さえあれば弾丸の作成が可能。
採掘道具のピッケルが無いから、鉱石を掘れないけどな……
「リーネ。救ってやりたいのは山々なんだが、一人じゃ無理だ。それに、銃の弾が全然足りない…………すまないが……」
「ううん。分かってる。無理を承知で言っただけだから、気にしないで。もしかしたらって、考えただけだからさ」
明らかに、肩を落としているリーネ。
何とも言えない雰囲気の中「ぐうぅぅ――!」と俺のお腹の音が鳴る。
その音ひとつで、場の空気が変わった。
「ぷ、ふふ、あははは! ごめんねキッド。ウジウジしてて、僕らしくなかった。お詫びといってはなんだけど、僕のお手製料理を披露してあげるよ」
リーネは笑顔を取り戻し、声高らかに宣言した。
いかにも自身がありそうな態度。
これは期待が持てそうだ。
「得意になってるところ悪いんだけどさ、材料はあるの? 腰に下げてる水筒っぽいの以外、荷物が一つも見当たらないけど?」
「あっ…………」
がっくりと首を落とし、溜息を吐いている。
実に判り易いなリーネは。
しょうがない。さっき来る道中にGETした猪の肉を出すか。