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世界でただ一人銃を扱える者(仮)  作者: おひるねずみ
第0章 プロローグ
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第二弾 ログハウス

 他に行く当てが無いので、その建物に向かって歩き出すが、「ゴロゴロ」と雷の音が聞こえた直後、突然雨が土砂降りになり、俺の衣服をビショビショに濡らした。


「ついてないなぁ……取りあえず建物の家主と相談して雨宿りさせて貰おう。ついでに、ここの情報も聞きたいしな」


 足を滑らせない様に注意しながら、建物に向け駆け足で森を駆け抜ける。

 魔物に襲われる事なく、三分程で建物の裏側に到着。

 建物は、木の丸太で造られたログハウスで、秘密基地や森の中の別荘を彷彿させる。

 俺は表側に回り、玄関ドアの前に来てドアをノックしたが、反応が無い。


「すいませ~ん。誰かいませんか~」


 ……返事が無い。

 誰もいないのだろうか? 二、三度呼びかけるが、家の中から人の気配が伝わってこない。

 どうやら本当に誰もいないみたいだ。


「当然と言えば、当然か。帰らずの森だしな」


 こんな辺鄙(へんぴな所に住む人なんて変わり者に決まっている。

 と、言う訳で、失礼だけど、雨宿りするついでに中で休ませてもらうことにした。


「お邪魔します」


 一応、家にお邪魔する挨拶をし、革靴を脱ぎ、家に上がる。

 家の中は静まり返っており、ログハウスに激しく吹き付ける、雨音しかしない。

 玄関の先には、丸太を繋げて作成された、正方形の木製のテーブルがあり、丸太の椅子が四つある。

 食卓の先には台所あるのが見てとれた。


「見事に丸太尽くしだな……」


 家の中をくまなく探索し、家の間取りを把握した。

 食卓の右の部屋が、寝室でクローゼットとベット、それと本棚のみ。

 寝室の奥の部屋には、木で作られた浴槽があった。

 全体を見回っての感想は、質素。それ以外の言葉は見当たらない。

 だが、人が住んでいないのに、埃やチリが全く無い。

 つまり、誰かが定期的にここに来て、手入れをし、住める状態を維持していると言う事だ。

 もし、家主が訪れたら正直に話そう。

 俺の言葉を信じてくれるか分からないが、誠心誠意をもって話せば、きっと伝わるはずだ。

 ――――パシャ、パシャ、パシャ! その時、外から掛けて来る靴音が聞こえた。

 持ち主が来たのかも知れない。

 俺は玄関に行き、家主がドアを開けるのを待つ。

 「バン!」と勢いよくドアが開き、そこには俺より少し年下くらいで、黄色髪を肩に合わせて切り揃えた様な、ボーイッシュ風の美少女がいた。

 美少女を見ると、争いの跡があったのか、衣服はボロボロで、あちこちに擦り傷があり、ここに辿り着くまでに涙を流したのか、目が潤んでいる。

「お願いです。僕を。助けて下さいっ!」


 ぼ、ぼく? 女の子に見えるんだが。

 美少女は俺に抱き着き、何かに怯えていた。


「どうしたんだ!? いったい、何があった!?」

「へんな小人達に襲われて、必死に逃げて来たんだ!」

(へんな小人、達!? グループで行動してるのか)

「人数は判るか? それに特徴も、知っている事を教えて欲しい」

「僕が見た人数は四人。体長は七十センチ前後で、片手に刃物を持ってる!」


 武器持ち。そして、小人。

 俺の想像が正しければ、恐らくゴブリンだろう。

 それが四匹か、どの位強いかは見てみないと判らないな。

 一匹に付き、二発ずつで死んでくれればいいんだが。


「取りあえず、離れてくれ。武器が取り出せない。」

「ご、ごめん。怖くて、つい……」


 ――――!? 来た! 足音が近づいて来る。


「どうやら来た様だ。俺に後ろに隠れてるんだ。いいね?」


 女の子は頷き、俺の後ろに隠れ、正面玄関を食い入るように見つめていた。

 数秒後、玄関のドアの向こう側から「グガガっ!」と喜びに似た声を聞く。

 俺は何時でも銃が撃てるように、玄関ドアに向けて構えた。

 玄関ドアが開き、馬鹿みたいにゾロゾロと一列に入ってくる。

 女の子一人しかいないと思い、完全に油断している。

 そんな狭い場所なら避けられないだろう。いい的だ。

 小人が瞳に映った瞬間、ターゲットサークルが複数現れる。

 【名前:レッサーゴブリンHP16。ゴブリンの最下級種。か弱い女性を、執拗に狙う傾向あり】

 今まで出会った、どの魔物よりも弱いな。


「じゃあ、遠慮なく行かせてもらおうか!」


 レッサーゴブリンが俺を見て「グガっ!?」と、驚きの声を上げている。

 予期せぬ者がいた為、体が固まった状態に陥るレッサーゴブリン達。

 俺はその隙にリボルバーを流れる様に撃ち、瞬時にレッサーゴブリンを消滅させていく。

 その光景を目の当たりにした女の子は、驚愕の表情で俺を見つめた。


「す、すごい! 今。何をしたんだぁ!?」

「お、落ち着いてくれ。ちゃんと説明するから」


 俺は少女を落ち着かせ、ここに来るまでの出来事を伝えた。

 名前が思い出せない事。

 この武器の事。

 どうして、森の中にいるのか? 分からない事を全部伝えた。


「そうなんだ……大変だったんだね。あっ、まだ名前を名乗ってなかったね。僕の名前はリーネって言うんだ……それで、君の事を何て言えばいいのかな?」


 リーネは俺に青色の眼を向け、人差し指を唇に当て首を傾げながら、名前を教えてとアピールした。


(名前か……)

「そうだな……俺の事はキッド。とでも呼んでくれ」

「分かった。キッド。さっきはありがとう! 君は僕の命の恩人だよぉ~。僕に出来る事があったら何でも言って欲しい」


 追って来たゴブリンが全滅した事で、リースの表情が柔らかくなっている。

 初めて笑みを見せてくれた。

 けど、どうしてリーネは危険な森にいるんだろう。

 着替えが終わったら改めて聞くとしようか。

 

「リーネ。隣の部屋にクローゼットがあるから、その中から服を拝借しよう。そのさ、なんていうか、目のやり場に困る」

「ぼ、僕は君になら……別に見られてもいいかなって……」


 リーネの着衣している服は、主に上半身の服の損傷が酷く、おヘソが見え、下から覗けば慎ましい形をした胸が、見えてしまう外観をしていた。

 俺は誘惑に屈しそうになるが、必死で我慢する。


「いや、取りあえず着替えて欲しい。この通り。頼むよ」

「むぅ、キッドが言うんなら仕方ないな! じゃあ、着替えて来る。覗きたければ、覗いてもいいよ?」


 「ニシシ」と笑いながら、隣の部屋に行く音がする。

 俺は着替えを決して覗かない決心をして、ログハウスの外に出た。

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