表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界でただ一人銃を扱える者(仮)  作者: おひるねずみ
第1章 旅の始まり
19/19

第十八弾 乗馬

 俺は遠慮なく全力で銃弾の小雨を放つ! が、放つごとに瞬時に超反応して、それをことごとく受け流し、弾き返すヲォークス。

 残弾が0になり、リロード中になっている銃を異次元袋にしまい、そのあいだに新たなコルトパイソンを取り出し、休む暇も無く銃撃を浴びせる。

 それから一分ほどが経過し、いくら照準を合わせて引鉄を引いても、ノーダメージで通して続けてくれる為、俺の中で変な安心感が生まれていた。

 そして、徐々にではあるが真剣な表情で銃弾を弾きながら俺に近づいてくる。

 その距離、わずか二十メートル。

 流石の俺も命中してしまうのではないかと、至近距離で撃つのに躊躇ためらいがしょうじ、いつの間にか両手には汗が滲んできていて、呼吸も銃撃を捌いているヲォークスより俺の方が乱れていた。


「キッド……もしこれが、本物の死合しあいならば貴公はどうする? 知恵を絞り工夫しなければ、我に命中させる事は夢のまた夢だぞ?」

「ッ!?」


 俺は銃スキルを高めることだけに夢中になって、大事なことを見落としていた。

 指摘されて、初めて気付かされた。

 そう、俺はただ単に考える事も無く、馬鹿正直にトリガーを引いているだけ。

 さきほどヲォークスが「心の内に秘めた闘争をぶつけてこい!」と、放った会話の真理をようやく把握した。


 今の内に強者との戦い方を学べと、遠回しに語り掛けていたんだ。

 このまま行けば近い将来、百パーセントの確率で俺は確実に死ぬ。

 当然だ、敵対する異邦者がヲォークス並み、いや、それ以上なら抗う術は恐らくない。

 実際に、今こうして攻撃が通じずにいるし、相手からすれば俺の首を取るのは至って簡単だ。

 立派な原木を紙切れのようにブツ切りにする武器、人間のソレを遥かに上回る肉体フィジカル

 最後に、生存争いの中で培ったと思われる緑布(肉体繊維の皮膚)の扱い方。

 得物の優劣は存在するが、それを扱う技術が未熟だと勝てる戦いも勝てなくなる。

 自分に何が足りないかと言う事を改めて考えさせられた。

 これが味方との模擬訓練で本当に良かった。




 そこで俺は頭の血を巡らせ、ヲォークスが如何にして攻撃を弾いているのかを予測。

 肉眼では捉えることが出来ない銃弾を、本当に眼で捉えて弾き落としているのか、それとも……

  

「むぅっ!」


 あの顔つきから見て嫌がっているな。

 俺は単調に撃ち続けていた攻撃を止め、リロードが終わり六発全弾装填された二丁拳銃で、緩急をつけて射撃。それプラス、撃つ場所に向けていた視線ピントをそのままに、別の人体個所に発砲してヲォークスを惑わす。これにより、ある事実が浮上した。


「フッ、気が付いたか」

「ああ、何処を見て判断してるか判ったよ!」


 双銃に込められた十二発を使用して、ヲォークスの目の動きと両手の動きをつぶさに観察した結果。

 銃口マズルの位置、角度で弾の軌道ポイントを予測し、それにあり得ない反応速度で感知して、銃弾を叩き落していたと判明した。

 けど、ひとつだけ引っかかる。

 俺の勘だが、ヲォークスは弾を完全に視認できていない様に感じられた。

 どういったカラクリで銃弾の来るタイミングを、完璧に読んでジャストミートしているのかが、気分が高ぶっている俺には理解できない。

 

「……疑問が浮かんだ顔だな。いい傾向だ。戦闘中、無心で体が動く様になるまでは思考を止めるな。常に予測、戦術を立てて戦え。それが生き残るために必要不可欠なことだ――――そこまで達する前に死ぬ者が殆どだがな」


 俺にありがたい忠告を授けて、射撃訓練に付き合ってくれるヲォークス先生に感謝だ。

 何処を撃てば嫌がらせになるのかだけを考え、実行に移す。

 それが許される程、天と地との実力差を肌で感じた。

 はっきりいってヲォークスから見れば、遊戯に等しい。

 もてあそばれているのが、自分でも判別がつく。

 その気になれば一瞬で間合いを詰め、通常ではあり得ない程に鋭い切れ味を持った得物を突きつけてくるだろう。




 わずらわせる攻撃を苦も無く無力化する洗練された動きに、俺は終始圧倒されっぱなしだった。

 時間にして約三分間。

 常時撃ちっぱなしだったが、いい訓練になったと思う。

 ヲォークスの指示で稽古? は、中断されたが、その間に銃のスキルが十五から四十になり、大幅なパワーアップを遂げていた。

 射程ボーナスがプラス百八十加算され、効果的殺傷範囲キルゾーンは別としてコルトパイソンでの射撃範囲シューティングレンジが二倍以上に拡大し、更には製作できる銃の種類が大幅に増加。

 現代主力銃のアサルトライフル。スナイパーライフルやサブマシンガンなどが(鍛冶レベルは足りないが)製作可能になり、カスタム強化も出来る事が判明した。

 

「キッド。いい経験ができた、礼を言う」

「それはこちらのセリフさ」


 お互いの健闘を語り合い、手を握る。今のやり取りを忌憚きたんなく述べあい、課題点を上げ友情を深めた。

 次第に日が暮れ始め、リーネとレオナさんとの約束を思い出して話を切り上げようとした時、未だにワンコのケモケモフカフカの毛皮に顔を埋めていたフェミーのケモ耳が、何かに反応した。


「キッド。東の方角から風の流れに乗って、けたたましい鐘の音が聞こえるわ。これは何の合図なの?」

「えっ!?」


 凡人である俺の聴覚には何も入って来ないが――――先ほどフェミーを調べた時に掲載されていた【世界の加護『万里聴覚』】が発動しているようだ。

 現在位置から六キロほど離れているシェミル村から、反響した音色を感じ取れるのかと感心するが、同時に胸の奥底から言い知れぬ不安が押し寄せて来る。


 恐らく、魔物が村付近にまで接近しているんだろう。相手の数は不明だが、急いで戻らないと行けない気がした。

 俺一人で何ができるか分からないが、いないよりはマシだ。


「多分、村の危機を知らせる合図です。それで……お願いがあるんですが、俺に力を貸してくれませんか?」

 

 腰を折った俺の問いに、笑みを浮かべ答える二人。

 まるで事前に決まっていたかのようだ。


「水臭いぞ、貴公は条件を満たした。我々は、それに答えねばならぬ義務がある…………キッドは、今しがた話した『異邦人の導き手』なのだろう? ならば、我々を導く責務があると思われるが……どうかな?」


 えっ? ちょ、ちょっと待ってくれ。

 それだと、これから起きるであろう争いを収めた後も、引き続き、異邦人のリーダーをしてくれと言ってる様に聞こえるんだが。


「お、俺みたいな若輩者じゃくはいものがリーダーでいいんですか!? ヲォークスの方が絶対に適切な判断を下せますよ?」


 これは事実だ。どう逆立ちしたって、ヲォークスがリーダーをした方が良いに決まっている。

 物腰や仕草からして、ただ者ではないオーラを解き放っているし、俺より適性があるのは確実だ。

 正直に本心をぶつけてみたが、意見を変えることは無かった。

 

「フッ、謙遜は不要だキッド。我らは、そこの犬達に懐かれる事は無かったが、貴公は懐かれている。これは驚くべきことだ。獣は絶対者に服従する。これがどういうことか分かるかキッド? この獣達は本能で我より貴公を選んだのだ。そんな貴公になら従われても良い」

「ふふっ、そういう訳よキッド。急ぐんならワタクシの背に乗りなさい」


 なにやら二人はシェミルドックのことを少し誤解しているようだが、今は急を要するのでこれを利用しない手は無い。


 フェミーはそれにともない、移動準備をしようと膝を折り曲げ、腕で自分の馬部分の背中をポンポン叩き、俺にまたがるように催促してきた。

 いささか不安に駆られる――――五キロを三分で走破すると考えれば、軽く見積もって時速六十キロ相当に値する。

 そして、何を隠そう俺は!


「馬に乗るの初めてですよ!」


 俺の心の悲鳴とも取れるその言葉に、口の端を広げて眼を活き活きと輝かせるフェミー。

 頼れるお姉さんから一変して小悪魔っぽい表情に変化し、もはや嫌な予感しかしない。 


「うふふっ、キッドは騎乗初体験なのね? 大丈夫よ。ぜ・ん・ぶ、お姉さんに任せなさい。ワタクシも誰かを乗せて走るのは初めてだから……ね」

 

 フェミーさん……貴方が片目を閉じてハート形のウインクを飛ばして誤魔化そうと企んでも、俺は魅了されないし騙されませんよ? 安全性を高める馬具の、サドルあぶみ手綱たづなが一つも装着されていないから安定性に難があるのは判りきっている。

 更に付け加えれば、後ろに他人を乗せるのが初めてと暴露されたら不安しか残らない。

 だけど、村に滞在しているリーネとレオナさんの顔を思い浮かべれば、そんなものは些細なことだ。

 実際それが最速行動できるプランなのだから、反論の余地はない。


「ふぅ~、わかりました。俺も男です。腹をくくりますので、ど、どうか、お手柔らかにお願いします……」

「そうそう。ワタクシ、素直な子は好きよ?」


 あの嬉しそうなフェミーの表情。子供が新しい玩具を見つけた時の顔に似てるな。完全に人ごとだと思い、面白がっている。

 はぁ~、走行中に落馬しないよう注意しないと洒落にならないな。

 戦闘前に大怪我してたら元も子もない。


 俺は乗馬する形でフェミー馬の背に恐る恐る跨る。

 彼女の人型上半身である背中にピッタリと密着し、両肩に両手を置く。

 「フェミー。試しに歩いてみてくれ」と、命令して徒歩の振動を計測したけど、割と大丈夫っぽい。

 次に駆け足のスピードに移行して貰ったら、想定した通りの揺れが俺を襲った。

 俺は落ちない様にと瞬時に彼女の肩周りに抱き着き、声を張り上げて駆け足をストップさせた。

 情けないけど、こればかりは仕方がない。幼少時なら恐れないのだろうが、この年にもなれば怖いものは怖いのだ。

 どんな状況かと例えるなら、自転車が乗れないのに補助輪なしで通常走行している感じ。

 それでいて下から突き上げる振動が来るのだから、体がストレスで強張り、成り行きで腕に力が入るのはしょうがない。


「キッド。そんなに怖いのなら、ワタクシの首を絞めるように抱き着いても良くってよ?」

「ん~、それだとフェミーが苦しくないですか?」

「気遣いは嬉しいですけど、これはワタクシの問題でもあるの――――――――考えてみてくれる? もしキッドが落馬してしまった時のワタクシの気持ちを」


 あ~~、そうか、そうだよな~。

 俺が逆の立場でフェミーを地面に落下させてしまったら、心に傷が深々と刻まれる。

 しかも、今回が初めてだから傷が刻まれたら簡単に修復するのは困難だろう。

 下手したらトラウマになるかもしれない。

 そう考えると責任重大だな。

 フェミーの言葉に甘えて首に振り落とされない様、しっかりとしがみ付いた方が良さそうだ。


「ふぅ~ん。想像以上に生真面目なのねキッドは」

「いえ、ただ単に臆病なだけですよ俺は」

「……ヲォークスと相対して恐れないのだから全然臆病じゃないわよ。もっと自分に自信を持ちなさい」


 騎乗している俺に対してフェミーが激励したのち、俺達はシェミル村方面に向かって行動を開始した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ