第十四弾 それは唐突に
外で現在位置を確認し、北に広がる「キュロストス森林」の中に入っていく。
こちらの森は全体的に明るく、背の高い草むらや茂みが多い。
ところどころに、野生の果実が実っていて、かえらずの森との差異が感じられる。
「いま思い返すと、かえらずの森で果物を見かけなかったな。どうしてだろう?」
そんな疑問を考えながら進んでいると、生物の気配があるのを読み取る。
慎重に草むらをかき分け、気配がある方に進むと二体の生物が緑葉樹の麓にいた。
一体は、空中に浮かびながら鱗粉をまき散らしている。体長五十センチ位のまだら色の蛾。
もう一方は、鋭そうな鎌を持った体長一メートル程のカマキリ。
俺は冷静に、両方の生態を調べた。
【名前:ミメティーパピヨン。HP80。毒鱗粉を撒き散らす蛾。作物にも悪影響を及ぼすため、発見したら駆除するのが望ましい。階級9】
【名前:ベビーサンプラッサ。HP176。この世界ではカマキリをサンプラッサと呼ぶ。人類の天敵! 階級7】
(こいつ等に銃の的になって貰おう。明らかに害虫だしな)
どちらからにしようと迷っていると、ミメティーパピオンが、木の幹に止まって羽を休めた。
――――チャンスがきた! 俺はコルトパイソンを右手に出し、羽に狙いを定めたが、奴の体色が変化する。
留まっている木の色をベースに、保護色で俺の眼を欺いたが。
(残念! 止まっている位置は把握しているから、どこにいるかは了承済みだ)
口元を左右に広げながら、存在するであろう場所に向けて、銃の引鉄を引く。
「ぴぎぃぃぃ――――――!」
ミメティーパピヨンの羽に銃弾がヒットし、一瞬にして九割のHPを刈り取り、痛みに耐えきれず地面に落下。
ファースト・リボルバーよりも、澄んだ音が聞こえ、銃を撃った衝撃が右手首に伝わる――――はずなのだが、想定した揺れが皆無だった。これが、ステイニウムの力なのか? 予想外の副産物に、自然と頬が緩む。
これなら問題なく、銃を二丁持って戦える。
そう確信したと同時に二発目を放ち、ミメティーパピヨンがオレンジ色の発光をしながら、ガラスの破砕音を鳴らして消滅。
突然の発砲音に、ベビーサンプラッサは複眼で敵対者を探すが、発見できず見当違いの方を向いている。
俺は認識されない内に仕留めようと、三発目、四発目と確認しながら胴体へと打ち込む。
狙い通りの箇所に狙撃を受け、その場に倒れるカマキリ。
残り数ミリのHPバーを残し、動かないで擬態をしている。
最後まで油断しないと決めている俺は、頭部に狙いを定めトリガーを引く。
ベビーサンプラッサの頭に命中した途端、薄緑色の結晶体になり、その後、風に舞いながら周囲に碧光を撒き散らし消滅した。
無事、戦闘が終わった事により、ホッと胸を撫で下ろす。
銃の性能を確認した俺は、躊躇なく三丁のコルトパイソンと銅の弾丸千発を制作する。
これにより、リロード時間を気にせず、遠慮なく銃撃が可能になった。
今現在のステを覗いてみる。
現在のステータス
名前:キッド
種族:人間の青年
性別:男
HP:100/100
筋力:11
耐久:14+3
器用:28+1
敏捷:7
銃ダメージ:99~116
剣ダメージ:39~43
防御力:14+3
射程:170メートル
武器:コルトパイソン。ダメージ65~80。リーネの短剣。ダメージ28~32。
弾:銅の弾、千五百九十五発。ダメージ5~7。
防具:『初心者のシャツ(白)防+1』『初心者ガンホルダー(黒)器用+1』『初心者のズボン(黒)防+1』『初心者の革靴(黒)防+1』
世界の加護『錬金術の才能』『鑑定眼』『生産者魂』『異次元袋』『銃使用許可証』
お金:120ルース
スキル『筋力LV11』『体力LV14』『器用LV28』『敏捷LV7』『銃LV12』『錬金術LV15』『鍛冶LV30』『裁縫LV1』『隠密LV13』『遠目LV8』『交渉術LV4』
143/1000 New『成長方針』についてのメッセージが一件。
武器の威力が五倍ほど跳ね上がり、自分自身の成長がステータスから見て取れる。
単独行動をしたのは無駄では無かった。
今なら、距離さえ離れていればレッドオークを難なく倒せるだろう。
俺は気分を高揚させながら、目に止まった『成長方針』についてのメッセージを開いてみた。それと同時に「ピポン」SE音が頭に響く。
『スキルレベル三十達成、おめでとうございます。これにより「戦闘特化」か「生産特化」の選択をして貰います。
「戦闘特化」は、筋力、耐久、器用、敏捷のスキルレベルが百まで上昇、プラス成長スピードに二割のボーナスを得ますが、生産関係のレベルは五十までとなります。
「生産特化」は、基本パラメーターの器用だけスキルレベルが百まで上昇します。勿論、生産関係のスキルは百が上限となります。
突然ですが、十分以内にどちらかを選択して下さい。制限時間以内に判断を下せない場合は、全スキル上限が五十になるので、あしからず』
――――――「チッ、チッ、チッ、チッ」と、正確にデジタルタイマー音が鳴り、ひと音ごとに、一秒ずつ時間が未来へと進んでいく。
俺は唸りながら一考し、すぐに生産特化を選択した。
銃を変更しただけで、この上昇量。
ここから分かる事は、装備品さえ揃えれば、途方も無く強くなれるということ。
銃のスキルレベルが上昇し、新たな銃が作成可能になっても、作れなければ意味が無い。
他人に頼んで製作してもらう手もあるが、果たして製作できるのか? という疑問が浮かび上がる。
ならば、自分で作ってしまえばいいと考え、決断した訳だ。
ログに「生産特化、承認!」の文字が流れた、その時! 脳内に謎の信頼感のある、重厚な発声が流れ込んで来た。
『様々なDNAを持つ者達よ、唐突に脳内に語り掛けられて、さぞ驚いている事だろう。
今から話す突拍子のない言葉は全て真実だ。心して聞いてほしい。なお、返答は一切できない。
君達は何故、見ず知らずの場所に居るのか? 疑問に思った事だろう。まずは、その答えを順に語ろうと思う……非常に言い難いのだが……君達の暮らす惑星がある事情で、消滅したからだ。惑星だけですめば良かったのだが……我々の想定した以上の事が起こり、銀河が無に帰してしまった。この言葉の意味が解らない者もいるだろう。銀河共通語に翻訳しても、そこまでの知識が無ければ、この言葉の意に気付く事は無いだろう。
私は幾多の時をかけ、惑星を百以上創り上げた。ここは、その内のひとつ。名をバラトーラという。
気が遠くなるほどの年月が経ち、先住民が安定して暮らせる様になり、これなら快適に過ごして行けるだろうと思い、銀河消失前にサンプルとして保存しておいた、各銀河に住む温厚な生命体を、バラトーラに降りたたせた。
それが君達だ。ここまでは順調だったのだが…………こちらで作業を統括する頭脳が反乱を起こし、凶悪なサンプル体が、この地バラトーラも含む、数々の惑星に顕現されてしまった。特に、君達がいる惑星が一番ひどい状態だ。現状を説明すると、西側諸国が壊滅的打撃 北南は中規模の被害、東は小規模に収まっており、東に行けば行くほど混乱が少ないと言える。
差し迫った状況を改善したいのだが、こちらからは一切、手が出せぬように設定されていて、悔しいが改変することが出来ない。
お陰で現在、バラトーラの東以外の領地は大混乱に陥っている。大変厚かましい事は承知だが、折り入って頼みたい。
東の領地にいる、異邦人。先住民を取り込み、対抗できる戦力を整えてほしい。
それが成就されなければ、混沌とした未来が待っているだろう。
今は西側諸国を統括するイグバードが、必死に各々奮戦しているようだが、長くは無いだろう……どうか、現状の危機を乗り越えて欲しい。
――――――――――最後に、地球人だけにメッセージを送る。この世界のアシストシステムは、地球人が造ったゲームを参考に模写している。
つまり地球人たる君が、この世界の誰よりもスキルシステムを理解しているということだ。このアドバンテージを利用して、バラトーラの平穏を取り戻してほしい。私が望むのは、ただそれだけだ…………』
一方通行の謎の念話が終わり、俺の鼓動が自然と昂ぶる。
どうやら元の俺は既に死んでいて、サンプル体という名のクローンらしい。
突拍子の無い真実に悪態をつきそうになるが、落ち着きを払い深呼吸する。
愚痴を吐いても始まらない。さっきの言葉が真実なら、バラトーラ全土に戦乱が広がる事を示唆している。
もしかしたら、ラッテ村の襲撃も関係があるのかも知れない。いや、十中八九、関係があるだろう。
この件はリーネとレオナさんに相談して、この世界の人達が信じてくれるのか? 試してみないといけない。そのまま、お偉いさんにに話して、ホラ吹き、異端者と、蔑まされたりしたくないからな。
俺が一人悩んでいると「ピコン」と、またもや音が鳴り。脳内ログに、世界の加護『異邦人の導き手』習得と、青色文字で表示されているのに気が付いた。
『異邦人の導き手』特別固体の異邦人の居場所が、半径十キロ以内に存在した場合、MAPに表示されるようになる。青が味方。黄色が中立。赤が敵対。
さっきの人? が、俺に力を与えてくれたのか? 俺は試しにMAPを覗いてみる。
すると、ここから北へ七キロ進んだ場所に、青色の人型マーカーが二つ表示されていた。




