第十一弾 初取引
「おう、いらっしゃーい。……ん? お客、見ない顏だな」
「ええ、さっきここに着いたばかりです。それで、お願いがあって参りました」
「ほう……何か、訳ありのようだな……言ってみな?」
俺の印象は、それ程悪くない様だ。早速交渉を始める。
「フ~~ン。つまり、鉱石類が、特に銅鉱石を譲って欲しいんだな?」
「はい。実は現在、手持ちが無くてですね……物品ならあるのですが……」
「良し! なら、その物品を見せてくれ。その売上金で、銅鉱石を買えばいい!」
途端に、店主の口元が緩む。
客に対しての営業スマイルだろう。
俺は上半身裸体の店主に、戦利品である。
オークの鉄槍、灰色ウルフの毛皮二十枚2kg、他etc。その他もろもろをカウンターに提示した。
「お、おい! お前! どこから、これだけの物を取り出した! 言え!」
やはり、強行したのは不味かったかも知れない。
だが、気にしない事にする。
今は、悠長な事を言っている場合ではない。
「絶対、誰にも言わないと約束できますか? できるなら……」
「あったりめぇだ! 商人は信頼が第一なんだよ! 信用が無くなれば、俺みたいな弱小の店は、あっという間に潰れちまう」
カウンターの机を両手で「バンバン」叩き、熱弁を振るう店主。
俺は真剣な表情で、親父みたいな仕草をする黒人男性に好感が持てた。
俺は親父に、口酸っぱく言われた言葉を、一瞬思い出す。
「信頼を失うような真似は、絶対にするな!」と。
「分かりました。話しますから、色を付けて下さいよ?」
「ああ、いいだろう!」
そして、俺の異次元袋の力を語り、店主を驚きの坩堝に招き入れた。
「すげえな……普通は信じねえが、この肉眼で見ちまった以上、信じるしかねえわな。まあいい、少し時間をくれ。お前さんが提示した品の確認をさせてくれ」
肌がツヤツヤの店主がまじまじと、品物を鑑定している間に、俺は店内に飾ってある武器を眺める事にした。
刀剣類は刀剣の棚にと、キッチリ整頓してあり、店主がマメな性格である事が分かる。
時間があるので、店内の武器の値段と品質を抜き打ちチェックする事に。
【名前:カッパーナイフ。ダメージ8~11。品質91特級品】値段九千ルース。
【名前:ブロンズソード。ダメージ18~24。品質89一級品】値段一万八千ルース。
【名前:アイアンソード。ダメージ30~36。品質84一級品】値段三万六千ルース。
【名前:サンプラッサブレード。ダメージ32~39。品質80一級品】値段四万ルース。
【名前:スチールソード。ダメージ39~44。品質76二級品】値段六万ルース。
【名前:シルバーソード。ダメージ28~34。品質59一般品】値段七万八千ルース。
文無しの俺からすると、途方もない値段だ。
けど、この情報から読み取れるものがある。
それは、鉱石の価値だ。
銀>鋼鉄>サンプラッサ?>鉄>青銅>銅と、上に行けば行くほど価値が上がる。
つまり、一番下の銅は、現在一番安いと言う事。
売値が良ければ、大量購入できそうだ。
「おい! 査定の方、終わったぞ。こっちへ来い」
いつの間にかモノクルを掛けていた店主。
表情は、にこやかで感慨深い表情をしていた。
「査定金額の結果だが、合計三万ルースでいいなら買い取ろう」
三万ルース。
それだけあれば、幾らか銅鉱石が買えそうだ。
「分かりました。それでお願いします。……え~と……」
「ああ! 俺の名前か? 俺はアンダーソンだ。お前は?」
「俺はキッドです。アンダーソンさん」
「それじゃあ、キッド。どうする? 銅鉱石一つ二百五十ルースだが、いくつ欲しい?」
ひとつ二百五十か……銅のインゴットを、一つ完成させるに七百五十ルース。
取りあえずインゴット三十個分を購入して、弾丸を六百発分、作製しよう。
「アンダーソンさん。銅鉱石、九十個売って下さい!」
「九十ぅ~! キッド、お前、そんなに買って何するつもりだ?」
「銃の弾を制作したいんですよ。用途は、弓の矢と一緒です」
「フ~ン? つまり、これから起きるかも知れない襲撃対策の一環として作ると……で、どうやって作るんだ?」
俺の生産方法は、職人さんに言わない方が良いよな……場所を取らないで生産でき、作業が一瞬で終わる。
職人泣かせの力だし……
「まあ、詳しい事を聞くのは止めにする。持って来るから待っていてくれ」
数分後。
銅鉱石を詰め込んだであろう袋を、肩に担いでアンダーソンさんが、カウンターの奥から姿を現した。
その物をカウンター上に「ドスンッ!」と、叩きつける。
「キッド。銅鉱石、九十個だ。中身を確認してくれ」
「あ、はい」
軽い返事を済ませ、異次元袋内に鉱石を収納する。
表示された黒文字には『銅鉱石、百個入手』と、脳内に表示されていた。
「アンダーソンさん。十個、余計に入っていたので返します」
「なっ!? 多く入れたのも、判別出来てるのか…………それでいて、多い分を俺に返却するとはな! キッド。あんたの事は信用できそうだ。ほらよ、残りの七千五百ルースだ」
俺はお釣りを受け取り、店端に飾ってる採掘用つるはしを、五千五百ルースで追加購入する。
俺の意図を読み取ったアンダーソンさんが、採掘場の場所を教えてくれた。
どうやら村の西側を、道なりに進んだ所にブルス採掘場の名称を持つ、鉱山があるらしい。
「アンダーソンさん。採掘場の情報、ありがとうございます」
「な~に、礼なら、またここに来て、品物を買って行ってくれれば、それでいい」
「アハハハハッ……善処します」
アンダーソンさんに、作り笑いをしながら『スティールレット』を出で立つ。
中央の橋を渡る前にある、日常品を販売している店に入り、ガラス製の大型の花瓶を残りの二千シールで購入。
村の中を流れるヘラリス川の水場に行き、周囲に誰もいない事を確認して、ガラス製品を異次元袋にしまい、そのガラスを錬金プラス鍛冶で『適正レベル六。ポーションチューブ』を二十本製作。
形状は、その名の通り試験管だ。
後は、川の水を利用して回復薬を作る予定。
だが、その前に俺は実験を兼ねて、川の水が異次元袋内にどれだけ収納可能なのかを、テストしてみた。
川に向かって念じるだけでは、収納出来なかったので、緩やかに流れる川の水に触れて念じてみる。
すると、一秒間あたりに付き、所持品に水が二十リットル追加され、僅か十秒で二百リットルに達し、五十秒で千リットル(一t)を超えた。
ちょっと怖くなってきたので、これ以上採取するのは不味いと考え、中断する事に。
次に、錬金『適正レベル八。ヒールポーション』を二十本作製する事にした。
このヒールポーションは、ヒールボトルより使用する液体が五回分少ない。
その為、効力もヒールボトルの五分の一なのだが、その分、大量生産が可能。
一長一短だが、小型で携帯できるので、利点の方が大きい。
材料は、癒し草八個。水分一リットル。ポーションチューブ二十個で作製。
ヒールポーションは一本に付き、五十ミリリットルで、ボトルは一回分二百五十ミリリットルと、言う訳だ。
そうして完成したヒールポーションのうち半分を、村の西入り口にいる警備の人達に「医薬品です」と言って渡すと、怪しげな表情をしていたが、すぐに表情を変え、俺に感謝の礼を述べた。
その後、出かける場所を質問してきたので、受答えをする。
「そうか、採掘しに行くのか……かえらずの森を抜けて来たと聞いたから、腕は立つんだろう?」
「それなりには」
(言えない。レオナさんの活躍で森を抜ける事が出来ました。なんて、口が裂けても言えない)
「行くなら止めはしないが、夜までには絶対に帰って来いよ? 夜でなくても今は危険なんだからな!」
警備の人に釘を刺され、村の入り口から見送られる。
マップを見てみると、西に四キロ進んだ先に、採掘場の場所が表示された。
その採掘場の距離を五倍化した先が見えないところから、マップは周囲二十キロ範囲まで表示されている事になる。
段々と解明される事実に、心を踊らかせながら、道なりに西へ、西へと移動しながら鍛冶スキルで『適正レベル一。銅のインゴット』を、三十本作成。
流石に適正レベル以下の製作物だと、ルーレットの九割以上は青色で統一され、数マスに金色が表示されていて、難易度の違いが一目瞭然だ。
適当にストップさせ、インゴット三十本を完成させる。
その三十本を使用して、次に『適正レベル十。銅の弾丸』を六百発作り、弾の種類を入れ替えた。




