第一弾 手元に銃
文章表現が稚拙ですが、温かい目で見守って下さると嬉しいです。
完結させますので、どうかよろしくお願いします。
辺りから、葉や小枝が風で揺れる音がする。
風に運ばれ、森林の匂いが鼻に入り込む。
眩しい光が顔を照らし、意識が覚醒した。
「ここはどこだ?」
目を擦り、上半身を起こし、その場に立ってみる。
瞳には、見た事が無い風景が広がっていた。
天を見上げれば、木々に付いた葉が生い茂り、風が吹く事で「ザワザワ」と音を搔き鳴らす。
「どこをどう見ても、森の中だよな……」
どうして俺は、見知らぬ森の中にいるのか? 疑問に感じたが、更に追い打ちを掛ける様な出来事が俺を襲った。
頭の中に、マップが表示されていて、現在位置が判明したからだ。
【現在の地名『シルクード地方、帰らずの森』方向感覚が分からなくなる森。入ったら最後、生きて出られない】
「ハァ? 何で俺、そんな危険な場所に侵入してるの? 森にマツタケを採取しようと意気込み、迷子になった遭難者か?」
記憶を辿ってみても、日本人と言う事は覚えているが、自分の名前を思い出すことが出来ない。
俗にいう、記憶喪失って奴だ。
それに俺の恰好が、色々とおかしい事に気が付いた。
旅用の長袖シャツ、黒のズボン、丈夫な革靴と、ここまでは分かる。許容範囲だ。
だが、腰にある物には、本当に身に覚えが無い。
小型のリボルバーらしき銃が、腰に着いているホルダーケースに収まっていたからだ。
「嘘だろ!? 俺はこの森で、狩りでも楽しんでいたのか!? 猟銃法で捕まるだろ……」
俺はホルダーから銃を抜き、手に取る。
次の瞬間! 脳内画面にステータスが表示された。
名前:ななしさん
種族:人間の青年
性別:男
HP:35/35
筋力:1
耐久:1
器用:1+1
敏捷:1
ダメージ:17~20
防御力:1+3
射程:30メートル
武器:ファースト・リボルバー。ダメージ13~15
弾:練習用の弾百発。ダメージ2~3
防具:『初心者のシャツ(白)防+1』『初心者ガンホルダー(黒)器用+1』『初心者のズボン(黒)防+1』『初心者の革靴(黒)防+1』
世界の加護:『錬金術の才能』『鑑定眼』『生産者魂』『異次元袋』『銃使用許可証』
お金:0ルース
スキル『筋力LV1』『体力LV1』『器用LV1』『敏捷LV1』『銃LV1』『錬金術LV1』『鍛冶LV1』『裁縫LV1』
8/1000
見覚えがある表示欄。
そんな馬鹿な事がある訳がない。
これではまるで。――――ガサガサ! 音がした方を振り向くと、二十メートル先に、背中に二つの星の模様をつけた、五十センチ程の大きさをしたテントウムシが、空中から地面に降り立った。
そいつの頭上には、緑色のゲージが表示されており、俺の視覚からターゲットサークルがテントウムシに張り付く。
その直後、テントウムシの名前が赤文字で表示される。
【名前:ダブルスター。HP24。弱い麻痺毒もち。星の数が多くなるほど、強さを増す。最大七つ星が確認されている】
説明付きのメッセージを読み、悟る。
ターゲットの名前が赤い。即ち、このテントウムシは、俺に敵意を持っていると判断した。
「ギシャァァァ――――!!」
羽を「ブブブブブ」とバタつかせ、空中を飛びながら、こちらに向かって来る。
俺は右手に持っていたリボルバーの銃口を、ダブルスターに向けて、引き金を何度も引くが、一発も当たらずHPバーが減少していなかった。
ダブルスターが勢い良く俺に飛びかかって来たため、回避に専念し身を捻って避ける。
標的を通り過ぎ、行き場を失ったテントウムシは地面に着地し、こちらに振り向き、歯をギチギチ鳴らし威嚇をしてくる。
俺は何気なく、右手も持つリボルバーに眼をやると、そこには2/8と表示がされていた。
つまり、後二回引き金を引いたら、装填しなければならない。
俺は、そこである事に気づき、初めて後悔の念に苛まれた。
「残弾って、どこにあるんだ!?」
もしこれが、俺が想像しているゲームの中の世界なら、弾切れになったら自動でリロードが始まるはず。
手動で装填するのなら、素手でテントウムシをどうにかするしかない。
いや、この二発で倒す事が出来れば、後はどうにかなる。
ダブルスターが奇声を上げながら、地面を這って近づいて来る。
残り三メートル! これだけ近ければ命中するはずだ。
俺は狙いをさだめ、ダブルスターに残弾の二発を撃ち込む。
二発ヒットしたダブルスターのHPゲージが急速に失われ、HPゲージが無くなると同時に青白く光り、その身を消滅させた。
「ハァ~、良かったぁ~。ヒヤヒヤしたよ。全く」
二発、撃ち込みが終えた瞬間、自動装填が始まり、リロード時間四秒と武器に表示された。
ダブルスターが消滅し終わると、脳内にダブルスターの戦利品が二つ表示され、所持品に加わる。
想像した通り、この世界はゲームの世界のようだ。
所持品に入った、ダブルスターの体液と虫の羽が何処に行ったか謎だが、出てこいと思い浮かべたら、何もない場所から、虫の羽が沸いて来たので、異空間に保存されていると、都合がいいように解釈をする。
まるで、〇次元ポケットだが、気にしたら負けだ。
少し、状況を整理してみる。
良く分からない森の中で目が覚め、武器として銃を所持。
ゲームを止める。リセットは存在しない。
「なるほど。俺は、この世界で暮らして行かなければいけないのか……」
未知なる大地を踏みしめていく、圧倒的冒険感! なのだが、現在、所持品の中には食料が無い。
つまり、超ピンチ。
「まあいい、悲しみ耽るのは後だ、前向きに行こう! 取りあえずは、水の確保だな」
マップを拡大して覗いてみると、西の方角1キロメートル進んだ場所に、川らしきものがある事が分かり、敵意を持った生物に注意しながら進むことにした。
川に着くまでに、何度か戦闘になったが、しっかり引き付けてから銃を撃った為、弾を無駄にせず損害は軽微だ。
一度だけ不意を突かれ、背後からダブルスターに襲われるものの、すぐさま反撃に出て消滅させたが、説明に書いてあった通り麻痺毒を持っていた為、時間にして三十秒程、動けなくなってしまった。
もしも、倒しきれていなかったらと、想像するだけで嫌な気分になる。
体の自由を奪われているのだから、きっとアイツにとって、お手頃なエサになるだろう。
そんなこんなで、苦労して川辺に辿り着く。
喉を潤そうと、辺りを警戒しながらも、口に水を含んでみる。
「うまい!」
毒も無いようだし、それでいて軟水なのもグットだ。
「ゴクゴク」と難なく飲める。
喉を潤った所でマップを見ると、一キロメートル南に、一軒の建物が映し出されていた。