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4・チートスキルでレベル上げ

 あまり名残惜しくもない別れを済ませ、俺はイナーク村を後にした。

 ちなみに母さんから『アイテムポーチ』、さらには『ウッドソード』というアイテムを貰うことが出来た。

 ゲームにおいては、滅ぼされた自宅を探索していると、入手することが出来るアイテムだが……。

 負けイベントを台無しにしてしまったので、半分諦めていたが、無事に入手することが出来た。

 このアイテムポーチには大量のアイテムを保管することが出来る。

 謂わばドラ○もんの四次元ポケットのようなものなのだ!


「さあて……帝国はそんなに遠くないんだがな」


 地平線が見える平原。

 モンスターに遭遇しなければ、ゲームでは十分くらいで到着することが出来たが……。


「まあレベル上げでもしながら、気楽に向かうとするか」


 平原フィールドを歩きながら呟く。

 何せ(多分)俺のレベルはまだたったの1。

 キングタイガーは即死攻撃しか使ってこなかったので助かったが、このままでは弱いモンスターにも苦戦してしまうだろう。

 平原にいる最弱のモンスターと遭遇すればいいのだが……。


「おっと。話をしていれば……」


 木の向こう側から。

 ゲル状の最弱モンスター。

 スライムが出現したのであった。



「うわぁ……本当に動いてるよ、これ」


 イナーク村の近くの平原にいて、レベル1の最弱モンスター。

 ゲームの時は何度も見てきたのだが……何というか、絶妙に気持ち悪い。

 巨大なナメクジが蠢いているような。

 ゲーム時には感じられなかった生理的悪寒? っていうのかな。

 見ているだけで背中のところがゾワゾワと寒気が走る。


「わ!」


 一匹のスライムに怖じ気づいていたら、体当たりをかましてきた。

 寸前のところで回避をして、ウッドソードを向ける。

 ウッドソードとはその名の通り、木で出来た剣のことである。

 攻撃力も低く、正直素手とあまり変わらないのだが……今回ばかりはあって良かった。


「こんなヤツに直接触りたくないからな」


 ブヨン。

 と指がスライムにめり込んでしまったら、気持ち悪さで一晩は寝付けなさそうだ。

 そんなことを思っていたら、スライムの体が微妙に縮小する。

 体当たり前の溜めである。


「悪いけど……こちらはゲーム廃人なもんでね!」


 今度はスライムの体当たりを完璧に見切る。

 突進してくるスライムに向けて、ウッドソードを一閃。


「はあっ!」


 斬る、というよりも感触的にはヒットする、と表現する方が正しいだろうか。

 ゲーム時と同じように、「ブッシャン!」とヒット時の効果音が大袈裟に流れる。

 ……その後、ウッドソードで三回斬りつけたらスライムは消滅した。


「はあはあ、何で俺こんなに疲れてるんだ?」


 息が切れる。

 ゲーム時には有り得なかった動き。

 確かにHPやMP、SPが減少すれば体がダルくなり自然と動きも鈍くなってしまった。

 しかしそれは予めプログラミングされた現象。

 スライム一匹を倒しただけで、疲労を感じるなんてゲームの時には有り得なかった。


「さてさて、アイテム収集……ん?」


 スライムがいた場所にアイテムが散りばめられている。

 プレイヤーはモンスターを倒せば、経験値と共にアイテムをドロップすることが出来る。

 必敗勇者においてはモンスターが消滅した場所にアイテムが落ちてあり、それを拾うことが出来る。

 しかしモンスターによってドロップ出来るアイテムは確率で決められており、スライムを倒したところで一つくらいしか落ちてないはずなのだが……、


「どうして全部落ちてるんだ?」


 俺の前には『ポーション』『聖水』『スライムの欠片』『鑑定石』の三つのアイテムが落ちている。

 どれもスライムを倒せば、ドロップすることが出来るアイテムであるが……比較的入手しやすいポーションはともかく、確率が低い鑑定石まで落ちてあるとはどういうことか。


「そうか……【女神からの祝福】か」


 強くてニューゲームをする際。

【女神からの祝福】というアイテムドロップ率100%の効果を持ったスキルを得たことを思い出す。

 だからスライムからドロップ出来るアイテムが全て落ちてあった、ということなのだろうか。

 つくづくチートスキル……恐ろしい子……。


「まあでも丁度助かった」


 手の平サイズの石をひょいっと拾い上げる。

 赤色で中が透き通って見える不思議な石だ。

 俺はその石に念……正しくは魔力を流し込む。

 すると鑑定石に文字が浮かび上がってきた。


『アキト・カグラ

 レベル8』


「鑑定石の効果もゲーム時と同じようだな」


 必敗勇者においてプレイヤー、そしてパーティーメンバーのレベルはステータスメニューを開くことによって確認することが出来る。

 しかし未だパーティーになっていないNPC、モンスターのレベルを知りたい時はこの鑑定石を使うしかない。

 問題は……、


「レベル8……これも【経験値100倍】の効果なのか」


 物語序盤でスライムを一匹倒したところで、レベルは上がらない。

 しかし【経験値100倍】のスキルがある俺は大量の経験値を得て、レベルを1→8まで上昇させたというのか。

 スタート時のレベルを確認していないので憶測にはなってしまうが。


「そうと分かれば、もう少しここでレベル上げしておくか」


 初めてモンスターと戦える場所でレベル上げをするなら、ゲームをしている人ならよく分かるだろう。

 俺はウッドソードを振り上げ、次なるモンスターを探すのであった。



『アキト・カグラ

 レベル30』


『所持アイテム

 ポーション ×7

 聖水 ×5

 スライムの欠片 ×5

 白羽根 ×2

 鑑定石 ×3』


「ふう……こんなもんか」


 鑑定石のレベルとアイテムポーチの中を確認しながら。

 額に付いた汗を腕で拭った。


「それにしても面白いくらいレベルが上がっていくな」


 この平原で倒したモンスターはスライムが五匹。ホワイトラビットが二匹となった。

 徐々にこの世界での戦いにも慣れてきて、レベルも上がってきたということもありモンスターにも恐れを感じなくなってきた。

 それにしても【経験値100倍】もそうだが、【女神からの祝福】も地味にチートだ。

 しばらくは回復アイテムには困らないだろう。


「そろそろハビエル帝国に向かうか」


 十分、レベルも上がったしな。

 足の矛先を帝国へと向ける。

 その足取りは旅立ちの時よりも軽いものであった。


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