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20・エルフの村へようこそ!

「……薄々感ずいていましたが、アキトさんってもしかして化物ですか?」


 悪竜エギビエルを撃破して、ラフガレント山脈を攻略した後。

 平原に降り立ち、出てくるモンスターを適当に倒しながら目的の場所へと向かっていく。


「化物じゃない」


「じゃあ悪魔ですか?」


「悪魔でもない……」


「じゃ、じゃあ! アキトさんは魔王だ!」


「そんなどんでん返しの事実もないから……まあ、ちょっと強いだけの冒険者だよ」


 そう返すと、リリスがジト目を向けてきた。


「そういえばアキトさんのレベルって教えてもらってなかったですよね? アキトさん。今、レベルっていくつなんですか?」


 おっ、そうきたか。

 実際、この世界では鑑定石を使うことでしか、相手のレベルを知る方法がない。

 ゲーム時にはプレイヤー、そしてパーティーに加入したNPCのレベルはメニューウィンドウを開けばいつでも確認出来たんだけどな。


「俺のレベルか……まあリリスと一緒くらいだよ」


「嘘です。認めたくありませんが、もっと高いはずです。そうしないとエギビエルに勝てないはずです」


 とうとう気付きだしたか。

 別にリリスにレベルのことを説明してもいいが、そうなると「どうしてそんなに高いのか?」と尋ねられ、それについて説明するとなると……色々面倒臭い。

【経験値100倍】のスキルがあるからだ。

 なんて信じてもらえそうにないからな。


「うーん……実は俺もあんま知らないんだ」


「知らない?」


「あんまりレベルっていうのに縛られたくないんだ。だから最近では調べたことがない」


「成る程! さすが、アキトさんですね。レベルに縛られない生き方なんてカッコ良いです! ——なんて言うはずないでしょ。さっさと教えてくださいよ」


 リリスが自分で持っているアイテムポーチから鑑定石を取りだして、俺の頬に擦りつける。

 無論、魔力を送らなければ鑑定石にレベルが表示されない。

 ゴツゴツとした石の感触。

 逃げても逃げても、リリスが鑑定石をかざして追っかけてくるのを鬱陶しく感じていると、


「着いたぞ」


 ラフガレント山脈を越え。

 平原をひたすら歩いていると、到着した場所は一見何もない開けた場所。


「……なにもないですけど?」


 リリスが不思議そうな顔で眺める。

 そう思うのも無理はないだろう。

 その開けた場所は不自然なまでに、木や茂みが存在しておらず、違和感を感じる場所ではあるが、何もないことは確かであった。


「まあ見ておけよ」


 そう言って、ポーチからとあるアイテムを取り出す。


「それは……」


 迷宮で手に入れた真実の鏡である。

 俺は開けた場所に鏡を当てるようにして掲げる。

 すると……、


「えっ」


 リリスの口から声が漏れる。

 開けた場所が蜃気楼のように揺れ、少しずつ姿を現したのだ。

 最初は何本かの木であった。

 木はどんどんと増殖し、森を形成する。


「行くぞ」


 まだ呆けているリリスに命令して、森へと足を踏み入れる。

 突然出現した森の中を少し歩くと、


「着いたぞ」


 そこは自然の楽園といっても過言ではない美しい村であった。


  ◆


 水と緑の楽園。

 村中には小川が流れ、花の上で妖精が舞い踊っているかのような錯覚を受ける。

 村——とは名の付くものの、洗練された風景は一都市を思わせる。

 異世界の中でも特に異世界情緒が溢れている。

 空気も澄み渡っているように感じられ、自然とスキップを踏みたくなるような。


「エルフの村」


 村に入るなり「ほぇえ〜」と声を出して、感動のあまり固まってしまったリリスにそう説明する。


「確かこの世界のエルフ、ってのは特別視されているんだよな?」


「そうです。エルフという種族は人間……いえ、もしかしたら魔族以上に強大な魔力を所持していますから。さらに人間とは違う長い耳であったり、千歳は軽く超える長寿であったり……。

 そういうところを悪く見て、エルフを異質な存在だと見なして、差別している人達がいるのも事実ですね」


 エルフというものは、長寿であり魔法に長けた存在ではあるが、その平和的な性格から争いを好まない。

 さらにそんなエルフを利用しようとする人族や魔族……との接触を避けるためにも、人里から離れエルフ達だけの村を形成し、そこで住むというのが一般的である。

 必敗勇者の中でも最も栄え、人口も多いと言われるハビエル帝国。

 その帝国からまるで人を拒んでいるのかようにそびえているラフガレント山脈。

 そんな山脈を越えた先にこのエルフの村は存在する。


「でもどうして、何もないところに森……村が出現したんですか?」


 リリスの頭上でクエスチョンマークが跳ねる。

 まあリリスが驚くのも無理はないだろう。

 エルフ達は人族からの好奇な視線、魔族の襲撃を避けるために、その魔法を活かして村全体に結界を張る。

 この結界は人間ではまず破ることが出来ず、近くに寄っても何もないように見えることが特徴的だ。

 使用し割れてしまった真実の鏡を見る。


「その結界魔法を破る手段……それがこの真実の鏡なんだ。これを使って、結界が張られている部分を映せば、結界を破ることが出来る」


 とはいっても、一回きりしか使用出来ないので壊れてしまったが。

 ゲーム時ではエルフの村を見つけるために苦労した。

 なんせ、エルフの村はゲームをクリアするために必ず訪れなければならないし、殆どノーヒントで見つけなければならないからだ。

 俺はゲームの知識があったから、これだけスムーズに発見することが出来たが……。

 ゲームをしておらず、この異世界に迷い込んだことを考えればぞっとする。


「さあて。行くか」


「何処にですか?」


 リリスを引き連れてエルフの村を進んでいく。

 ——こんな自然に満ちており、平和的な場所。

 しかし……こんな場所にも負けイベントが存在する。


 イナーク村に続く『モンスター襲撃による村崩壊イベント』がな!

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