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19・悪竜戦

 エギビエルの強さは『動くだけで災厄』と称される巨大な肢体——というのものあるのだが、それは一面しか表現していない。


「小僧。人間という身分で儂を殺せるとは思うなよ!」


 悪竜エギビエルの顔の前に魔法陣が出現する。

 やがて魔法陣は破裂し、槍を形取った炎が発射される。


「ちぃっ!」


 舌打ちしながら、魔法フレイムランスを回避する。

 先ほどまで俺がいた地面に炎の槍が突き刺さり、そして爆風が舞い上がる。


「まだだ小僧」


 殺気。

 空を見ると魔法陣があり、それが野球ボールくらいの球体に変化したのを見た瞬間。跳ね上がるようにして俺はリリスを抱きかかえる。


「さすが、エギビエルだな!」


 赤色の球体が落下。

 瞬間、着弾した球体を中央として大きな爆発が発生する。

 火属性魔法エクスプロードの一撃である。

 一瞬で周囲が灼熱と化し、ここにいるだけで焼かれてしまいそうな温度まで上昇する。


「エギビエル……魔法を使いこなす最強の竜……っ!」


 ——魔法。

 必敗勇者においても魔法というものは存在し、MPを消費することによって発動することが出来る。

 といっても使えるモノは少なく、仲間に出来るNPCも極一部だけなのだが……。

 その魔法をエギビエルは使いこなすことが出来るのである。


「アキトさん。わたしに任せてください。わたしがアキトさんを守って……ぐっはぁ!」


「リリス!」


 いつの間にか俺の手をすり抜け、エギビエルの前へと疾走するエギビエル。

 しかしエギビエルが振り回した尻尾が直撃し、吹っ飛ばされ壁に激突するリリス。


「邪魔だ。小娘よ」


 リリスは頭の上でお星様を踊らせ、気絶してしまったらしい。


「まあそっちの方が助かるけどよ……」


 バニーガールの衣装を装備させていなければ即死だったよな?

 まあこれでリリスが勝手に動き回れなくなったので良しとしようか。


「エギビエル。お前の相手は俺だ」


「それくらいは分かっている」


 好敵手を見つけたことを喜んでいるのか。

 ニヤッ、と口角を吊り上げさせるエギビエル。


「はあっ!」


 地面を蹴り上げると同時に、ロングソードを鞘から引き抜く。

 そのまま跳躍し、エギビエルの顔面を一閃する——。


「そんな小枝のようなもので儂を倒せると思っているのか」


 ——だが、エギビエルは後退し同時に右足を上げて、俺に攻撃をくらわせようとする。

 鋭利に研がれた爪が近付いてくる。


「くっ!」


 一発くらいくらっても、それは致命傷にならない。

 しかしゲームとは違う、『殺す手段』としての威圧。

 俺はロングソードの刀身で右手を受け止め、勢いに任せるによって後ろへと吹き飛ばされる。

 背中に地面が激突する瞬間。

 ネコのように翻って、両足から着地。


「まだだ!」


 振り回された丸太のように太い尻尾が襲いかかってくる。

 俺はそれを——まさに縄跳びの要領で——ジャンプすることによって回避する。


「やっぱりステータス上昇と共に、身体能力も向上しているみたいだな!」


 軽くジャンプしただけなのに、三メートルは飛んでいるだろうか。

 俺はロングソードを振り上げ、そのままエギビエルへと向かっていく。


「むうっ!」


 刀身がエギビエルの頭頂を一閃!

 鱗ごと斬られた肌から、黒色の血液が噴射する。


「儂に傷を負わせる人間がいるとは……貴様は一体?」


 エギビエルの瞳には疑問の色が浮かんでいた。

 俺は地面へと着地し、剣を構えたままこう言い放つ。


「舐めるなよ。ゲーマーをな!」


 現在——俺のレベルはなんと120!

 迷宮でレベルを上げていたのは、リリスだけではなかったのだ。

 最早、120というとそのまま魔王城に乗り込んでも、生きて帰ってこれくらいなら出来るレベルだ。

 エギビエルとのレベル差は30もあり——それは簡単に覆せるものではない。


「では儂も本気を出そうか」


 エギビエルの体を取り囲むようにして魔法陣が出現する。

 魔法の同時展開である!

 エギビエルから発射される七色の魔法。

 フレイムランス——アイストルネード——ホーリーボール——。

 襲いかかる魔法の大群を、俺は網目を潜り抜けるようにして回避し、エギビエルへと接近していく。


「おらぁあっ!」


 気合いの一声を発し、ロングソードでエギビエルを斬りつけている。


「ぐぁぁああああああ!」


 エギビエルの大口から発せられる悲鳴。

 半ば狂騒状態となったエギビエルが尻尾を振り回すが、俺はその光景がスローモーションに見えた。

 目の前に赤色の魔法陣。フレイムランスが発射。


「……っ!」


 そのまま炎の槍が俺の体に突き刺さるが、少し痛みを感じるだけで大してHPを削ることはない。

 やはり……この世界では、レベル上昇による身体能力が全てに影響する!

 弱ったエギビエルからの魔法では、俺に傷を付けることすら出来ないのだ。


「小僧……儂を舐めるなよっ!」


「不味い!」


 エギビエルの口が開かれる。

 喉から闇の炎が出現しているのを見る。

 だが、エギビエルは瀕死の状態で上手く狙いを定めることが出来ない。

 エギビエルから発せられるであろう、とある技の直線上には——。


「させるかよ!」


 壁にもたれかかり気絶しているリリスの前へと疾駆する。

 ——その瞬間、エギビエルの口から闇の炎が吐かれる。

 俺はそれを体を大の字に広げることによって、炎からリリスを守る。


「こ、小僧! どうしてそれを耐えられる!」


 エギビエルから驚愕の声。

 今、エギビエルから発動されたのは即死属性のある闇の炎だ。

 これが直撃すればバニーガールの衣装がどれだけ優れものの防具だろうと——どれだけレベルを上げようとも、即座に死んでしまう。


「悪いな。俺、即死攻撃効かないから」


 チートスキル【即死無効】——。

 俺がこのスキルを所持している限り、即死攻撃は全て無効だ。


「何故、人間の身でそれだけ強くなれる……小僧。一体、貴様はどのような生きる道を歩んできたというのだ?」


 疑問が発せられる。

 悪竜に向かって疾駆し、剣を振り上げてトドメと言わんばかりに斬りつける。


「そこらへんのダンジョンでレベル上げをしていただけだ」


 そんな決め台詞を置き土産にな!


「小僧……見事だ」


 最後の一撃を決めた瞬間。

 エギビエルの体が光の粒子となり、消滅をし始めた。


「なんとか負けイベントを台無しにすることが出来たか」


 今回の負けイベントは冷や汗をかいたぜ。

 俺は剣を鞘へと戻し、額に浮いた汗を拭った。

 ——こうして悪竜エギビエルの討伐に成功したのであった。

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