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16・迷宮でレベル上げ

「やっぱりアキトさんは鬼畜ですぅうー!」


 俺達がやってきた場所は帝国の近くにある地下迷宮。

 地下百階まで存在しており、下に進めば進む程モンスターのレベルが上がっていく。

 その迷宮の中でも推奨レベル30〜40程度である地下二十階に俺達は足を踏み入れていた。


「リリス! 逃げるんじゃねえよ」


「そんなこと言いましてもー!」


 リリスを追いかけているモンスターはミノタウロス。

 レベル30の強モンスターであり、レベル20そこそこのリリスが簡単に勝てるような相手ではない。


「もっと弱い敵と戦いたいですよー!」


「そんなんじゃいつまでたっても強くならないだろうが」


 リリスのレベル上げ。

 俺はそれを『スパルタ』によって行うことにした。

 時間は残されていない……という程、緊迫した状況ではないが、ちんたらとリリスのレベルが上がっていくのも待てない。

 まあ死にそうになったら俺が助けるし。

 というわけで、ミノタウロスから全力疾走で逃げているリリスを端から見ていた。


「リリス! 自分の力を信じるんだ。お前は凄腕冒険者じゃなかったのか」


「わ、わたし! 一人でスライムくらいしか倒したことなかったといいますか……ひたすらスライムを狩っていたことから、スライム狩りのリリスちゃん、と呼ばれていたと言いますか……」


 噛ませ犬、という異名以外にもそんな不名誉なアダナも付けられていたのか。

 これでは先が思いやられる。


(……といっても、まだ喋られる余力はあるみたいだしな)


 それに——圧倒的なレベル差がありながらも、ミノタウロスに一撃では殺されないだろう、と考えていた。

 今、リリスはバニーガールの衣装に身を包んでいる。

 そう! バニーガールなのだ!

 リリスが走っていると、装着しているウサギ耳が左右に揺れていて可愛らしい!


(バニーガールの衣装は巫山戯ているように思えて、一級品の防具アイテムだ)


 実際、ゲームクリアをするまで仲間にそれを身につけていたプレイヤーもいた。

 というわけで俺は【女神からの祝福】スキルを発動し、カジノを荒し景品であるバニーガールの衣装を手に入れていたのだ。


「ぶっはぁ!」


 あっ、とうとうリリスがミノタウロスに捕まった。

 ミノタウロスの鉄拳がリリスを捉え、放物線を描きながら落下していく。


「うー! 痛いよー帰りたいよーどうしてわたしがこんな目にー! うわぁーん!」


 地面に座り込んで、涙を流しているリリス。

 ……まあ泣く余裕もあるみたいだし、大丈夫そうである。


「さて……そろそろか」


「アキトさん! 助けてくれるんですか!」


 ミノタウロスが後ろから近付いてきているのに、視線を外して俺を見るリリス。


「帰るんだよ。俺は宿屋で寝ておくから、ミノタウロスを倒したら戻ってこい」


「この薄情者—! ぶっはぁ!」


 後ろからリリスの断末魔が聞こえた。

 ……まあ冗談だけどよ。

 でも、取り敢えずリリスから見えないところで戦いを見守っておこう。


「大丈夫かな……この方法で」


 早くも不安になっている俺。



 地下迷宮のレベル上げはリリスだけが目的ではない。

 俺自身のレベル上げ……そして、地下六十階に存在するアイテム『真実の鏡』を手に入れるためだ。

 地下六十階の推奨レベルは80程。

 リリスと一緒に下へ下へ進みながら、俺のレベルも上げていく。

【経験値100倍】のスキルのおかげで、三日もすればこれだけレベルを上げることが出来た。


 リリス・ノーティラス レベル27

 アキト・カグラ レベル レベル84


 最早、圧倒的なレベルである。

 最終的には魔王を倒すためにも、レベル150……いや180は欲しいところであるが、この調子にならすぐに辿り着きそうだ。

 ちなみに必敗勇者のレベルは255まで上げることが出来る。

 今まで見たプレイヤーの中で、最も高いレベルは230であった。

 230もあれば、苦戦することなく魔王を倒せていたのだが……。


「ぜえぜえ……アキトさん。鬼畜ですぅ」


 リリスが地面で大の字になっている。

 俺はポーションを取りだして、リリスの顔にぶっかける。


「おらおら! さっさと行くぞ。HPは回復しただろうが」


「きゅ、休憩しましょうよ!」


「ダメだ。俺達に時間は残されていない!」


 実際、タイムリミットなど存在していないが。

 リリスの手を掴んで、無理矢理立ち上がらせる。


「……アキトさん。わたしのレベルがいくつになれば、特訓は終わるのでしょうか?」


「そうだな……最低レベル40は欲しいところだな」


「40!」


 リリスが目を丸くさせる。

 それもそのはず。

 普通、レベル27から13も上げるためには、ゲームプレイ時間では十日程……ゲームが現実となったこの異世界では最低二ヶ月はかかるところであろう。

 石のように体が重いリリスを引きずりながら、地下迷宮の四十階へと足を踏み入れる。


「心配するな! 四十階からはレベル50のモンスターも出てくるしな」


「レベル50なんて無茶ですよ!」


「凄腕冒険者じゃなかったのか?」


「そうであっても、無謀な冒険者ではないです!」


 いや!

 お前、無謀そのものなんだけどな!

 ちなみにレベル上げの方法としては


『リリスを戦わせる→ピンチになったら俺が駆けつける→二人に分散して経験値が与えられる』


 である。

 必敗勇者では二人以上のパーティーが戦った場合、その貢献度によって経験値が配分されることになる。

 最初から俺が戦ってしまっては、リリスに入る経験値が少なくなってしまうので、ギリギリまで戦わせているのである。


「よっしゃ! 楽しく迷宮攻略といこうぜ」


「ひぃぃぃいいいー!」


 迷宮の暗闇にリリスの悲鳴が響き渡った。


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