更にまさかの展開になった件について。
本日3話目です
俺の考えた方法。
それは、告白して振られることで、気まずくなって川口に戻ってもらう、という方法だ。
流石に、告白を断ってまで一緒に旅に出ようとまでは思わないはずだ。
まあ、そのせいで俺と川口の仲は気まずくなってしまうかもしれないが、それは仕方がない。
二兎を追うものは一兎も得ず、だ。
川口は俺の突然の告白に頭が追いついてないようで、ポカーンとして目を白黒させている。
10秒程の沈黙が流れ、俺は我慢出来ずに口を開いた。
「……その、反応してもらえると助かるんだが」
「えっ!?あ、えっと、えっ!?」
どうやらまだ混乱しているようだ。
まあ、そりゃそうだろうな。
善意でついていこうと思った底辺のぼっちに、まさか告白されるとは思ってなかったんだろう。
実際俺自身も思ってなかったんだから、この反応も仕方ないと言える。
「あー、えっと、え?」
川口は手をあたふたと振りながら困惑している。
その仕草は可愛いと思うが、俺としては潔く振って欲しいところだ。
だから、俺は図々しいと思いながらも、言葉を続ける。
「ほら、川口も俺に言う言葉があるだろ?そうやって戸惑ったままじゃあ、俺もどうすればいいかわからない」
言うべき言葉は勿論「ごめんなさい」だ。
いや、もしかしたら川口のことだから、「気持ちは嬉しいけど……」みたいな感じで俺のことを気遣ってくれるかもしれないな。
そんな想像をしながら俺が改めて川口の優しさに涙ぐんでいると、川口は俺の言葉に、何故か顔を赤くしてしまった。
「そっかぁ、私の気持ち、もう気づかれてたんだね……」
そう川口が呟くのが聞こえて、俺は焦る。
川口が優しさで俺についてきたということを俺が悟ったと、気づかれてしまったらしい。
それはダメだ。
元々、それを気づかせないために今告白をしたんだし。
「えーっと、ほら、俺の気持ちは本当だからな?
別に、嘘をついてるわけじゃないから!」
だから、俺は自分の告白が川口を遠ざけるための嘘ではないということを慌てて伝えた。
そこだけは勘違いしてほしくないからだ。
すると、川口の顔が今度は茹でだこのように真っ赤になる。
「えっと………本当に?」
「ああ、本当だって」
俺は即答する。
すると川口がそのままふらふらと前に倒れ込みそうになったので、俺は慌ててその肩を受けとめた。
「お、おい、大丈夫か?」
「う、うん、ごめん、大丈夫だよ」
川口の顔を見ると目に涙を浮かべていた。
………あれ?何だこの反応は。
「私ね、実は中学3年の時に一度芝崎君を見たことがあったんだ。その時の芝崎君、不良の人に必死に謝ってて、私は最初かっこ悪いって思ってた」
川口の反応に戸惑っていると、突然川口が昔の話をしだして、俺は更に戸惑う。
でも、とても大事な話のような気がしたので、俺は黙って耳を傾けることにした。
「でも、芝崎君はその時、小学生の子達を守るために自分の頭を下げてた。私はそんなことも知らないで、勝手にかっこ悪いと思ってた自分が恥ずかしくなったんだ」
……その時のことは、よく覚えている。
確か、小学生が不良にぶつかって謝らなかったから不良が切れたんだったか。
まあ、あの時は不良がわざわざ小学生にぶつかりに行ってたから、小学生が謝る必要は無かったんだけどな。
でも、なんでその話を今?
「その不良の人がいなくなってから、芝崎君は小学生達に言ってた。
『お前らは悪くない。でもな、時にはプライドを捨てる事も大事なんだ。今みたいに、大切な友達が傷つくかもしれない時だってそうさ。友達を守る為なら、プライドなんて安いもんだろ?』って」
確か、そんなことを言ったような気がする。
でも、その後帰ってから恥ずかしいセリフを言ってしまったと身悶えしたんだよなぁ。
まさか、そこを川口に見られてるとは思ってなかった。
何をかっこつけてるんだと、笑われてしまったかもしれないな。
「私は、その時の芝崎君、本当にかっこいいと思ったんだ。尊敬できる人だなぁって。だから、その後、高校生になって、同じクラスで芝崎君を見つけて、本当に嬉しかったんだ。やっとあの人と話すことができるって」
……マジか。
川口がまさかそんなふうに思ってくれてたとは。
でも、あの時の俺って確か、ニ次元にのめり込んでた時だよな。
失望させてなかったらいいんだけど。
「その後、1度芝崎君と話す時があって、私は嬉しかったんだけど、なんか芝崎君、周りに興味無さそうな感じで、あれ?こんな人だったっけ?って思ってた」
ああ、やっぱりか。
あの時は三次元なものほとんどに興味無かったからな。
あの時の俺を見て引かなかった一樹は本気で凄いと思うし、ありがたいとも思う。
「でも、私がある時に上級生に絡まれた時、芝崎君が庇ってくれて、私はびっくりしたんだ」
ちょっと待て、その時って確か………
「なんか芝崎君、上級生相手に変な事ばっかり言ってて、上級生も呆れて帰っちゃって、私も助けられたくせに少し引いちゃってた」
やっぱりあの時だよなぁ。
俺が色んな意味で厨二をこじらせてた時だ。
少しで済むのが凄いと思う。
確か、光の弓とか平気で言ってた気がするし。
「でも、その後芝崎君が私に言った言葉で私ははっとした。『クラスメイトを守れたんだったらプライドを捨てたかいがあった』って。まるであの時の再現みたいに。それから私は芝崎君のことが好きになったんだ」
多分、それは自分に酔ってただけだと思うけどな。
確か俺もその時の川口の笑顔で三次元(川口)のことが好きになったんだ。
………って、え?
好き?
「その後、芝崎君がオタクだって知ってからは、家でアニメを見たりもした。でも、その時のことを思い出して、恥ずかしくて声を掛けることが出来なくなった。華凛ちゃんや三山君のおかげで少しずつ話せるようになってからも、緊張でうまく喋れなくて、芝崎君に嫌われてるかもしれないって、そう思ったりもしてた」
いや、待て待て待て待て待て。
え?嘘だろ?
だって、俺はクラスの底辺で、川口は学校のアイドルで。
そんな川口が、俺と話すのに緊張していた?
「だからさっき、ずっと好きだった芝崎君が好きって言ってくれて、本当に嬉しくて、夢みたいで…………。
だから、私からもお願いします。
私とお付き合いして下さい」
川口がそう言って頭を下げる。
その行動に、俺は固まるしかなかった。
だって、そうだろう。
振られるとしか思ってなかった告白が、まさか成功するなんてこと、考えてもいなかったのだから。
でも、川口が俺のことを好きでいてくれたというのは、純粋に、かなり嬉しい。
というか、嬉しすぎて固まってしまったとも言える。
「え、えーっと………」
だから、俺は川口をみんなの元に帰すことをこの時すっかりと忘れてしまって、思わずこう答えてしまった。
「これからよろしくな、川口」
そう言うと、川口は今まで見た中でも一番可愛いと思える笑顔で「うん!」と頷き、俺に抱きついてきた。
それを見て、俺はどうしてこうなったと頭を抱えながらも、好きな人と相思相愛になれた喜びを噛み締めていたのだった。
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「オラァッッ!」
俺の声が森に響き渡る。
俺が今相手しているのは例の1m近くもの大きさを持つスライムだ。
「リア充爆発しろ!」とばかりに突然襲いかかって来たので、仕方なく素手で応戦していた。
もう少しでキスくらいできたかもしれないのに、と俺は私怨たっぷりにスライムを殴りまくる。
スライムは見た目がドロドロで、できれば触りたくはなかったが、試しに蹴ってみたら靴が汚れなかったので、今は普通に素手で殴っている。
どうやら向こうの攻撃とかでなければあのドロドロは体につかないらしい。
スライムがこっちに体当たりしてくるのをギリギリで避けて殴る。
敏捷値Dランクのおかげか、スライムの動きが遅く見える。
この作業を5度程繰り返したところで、ようやくスライムを倒した。
……はずなのに、何故かスライムが消滅しない。
しかも、スライムがちょっとずつこっちに近づいてくる。
俺は、倒したはずの相手が近づいてくる恐怖を感じながらもう一度殴ろうとしたが、突然、その場でスライムはこちらを向いてひれ伏した。
その瞬間、目の前に文字が浮かんでくる。
[・Eランク “スライム” を眷属にしますか?]
あ、そうか!
同ランク以下の魔物を倒したら仲間になるんだったな。
これは眷属にしない選択肢は無いだろう。
俺は迷うことなく『はい』と念じる。
すると、スライムはぱっと消えてしまった。
これは仲間になったのかな?
疑問に思っていると、
[『ステータス』を確認して下さい]という文字が浮かんできたため、『ステータス』と念じる。
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|体力値: E
|攻撃値: E
|防御値: E
|敏捷値: D-
|魔力値: E
|平均値: E
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|眷属にした魔物
|・スライム 〈 Eランク 〉
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お、スライムが追加されている。
てかこれ、普通に『魔物使い』強いんじゃないか?
いや、でも俺はステータスが1上がってるから眷属にできただけか。
スライムでEランクだったらFランクの魔物がいるのかもわからないしな。
とりあえず、俺は生まれて初めての彼女と同時に、生まれて初めての眷属を仲間にすることが出来たのだった。