明かされる秘密と忘れていた事実について。
3日連続〜
カインドとの戦いが終わった翌日、俺と舞は二人でギルドへと向かっていた。
その肩には相変わらずリースが座っているので、実質三人とも言えるが。
ティフィアとハルノには自由行動を取ってもらっている。
今日タウリと話す内容は、もしかするとこの世界の常識を覆すような事実があるかもしれない。
そう判断した上での対処だし、二人もそれに納得してくれた。
「ねえ、優斗君。
ちょっと緊張してる?」
「ああ、そりゃな。
これでなんの手がかりもなしだったら、流石にきつい」
元の世界に戻るには何をするべきか。
本に書いてあった内容通りだと、『転移させた張本人を探し出して条件を達成すること』が必要だと書かれていた。
当初はオミスを探せばいいものだと思っていたが、アルナとの遭遇、そして話を聞いたらそれも違うような気がしてきていた。
間違いなく、アルナが仕えていると言っていた神が関わってきている。
それが誰かは分からないが、アルナの口調からその神はオミスを敵対視していることが伝わってきた。
つまり、俺達に支給品をくれたオミスを味方と捉えるなら、俺達が探さないといけないのはその神の方か?
だが、それもまだ憶測の域を出ない。
少しでも情報を増やすため、タウリの話はかなり重要になってくるのだ。
俺がそんなことを考えていると、舞が繋いでいた手をぎゅっと強く握ってくる。
「優斗君、そんなに一人で考え込まないでよ。
私は優斗君にとって頼りない存在?」
「いや、そんなこと!」
「じゃあ、もっと頼ってよ。
一人で何でも解決しようとか、確かにそれが出来たらカッコイイのかもしれないけど、それで優斗君が傷つくなら私は嫌。
そうならない為に私は付いてきたんだもん」
「舞………ごめん」
よく見ると、舞の手が少し震えているのがわかる。
舞だって不安なのだ。
忙しなく変わる状況と、ゴールが見えない旅。
それでも、俺なんかのために城を出て付いてきてくれたし、好きだと言ってくれた。
俺は、舞のことを大事にしすぎていたのかもしれない。
勿論大事にするのは当たり前だが、なんというか、傷つけたくない宝物のように扱ってしまっていた。
それが、舞にとっては自分が重荷になっているようで嫌だったのだろう。
「私は、優斗君の奥さんになったけど、お飾りの妻なんて嫌だよ。
私だって異世界人だし、指輪の力も受けてる。
守られるだけは嫌なの」
「うん、わかった。
これからはもっと頼るよ、約束する」
「ん、そうして」
思えば、俺が死にそうな場面から力を得て、アマルーナを仲間にしたり国を救ったりできたのは、全て舞の指輪の力だ。
俺は力を得て少し、いやかなり、傲慢になっていたのかもしれない。
「でも、舞を守りたいって気持ちもわかってくれ。
好きな人を守れないのは嫌だからさ」
「ちょっ、不意打ちでそういうの照れるから!
でも、うん。じゃあ、頼りながら、守って」
「……おう」
頼りながら、守る。
かなり難しい注文だが、それが舞の願いならば頑張るしかないだろう。
そうして顔を赤くしたままギルドに付いてしまった俺達がタウリに軽くいじられるのは、ご愛嬌といったところだろう。
△
▽
△
「さて、ジェストの話だったな」
俺達はタウリによって通された客室で、タウリと向かい合う。
タウリはお茶を一口飲むと、はぁっと軽くため息をつく。
「その前に、まずお前の知ってることを教えろ、ヨエナ。
俺が情報を提示するのはその後だ」
「ああ、わかってるよ」
俺も、ただで情報を手に入れれるとは思っていない。
少しずつ、交換条件のように情報を漏らしていけばいい。
「まず、タウリも薄々気づいていると思うが、俺はカラマ王国で召喚された異世界人だ」
「ぁぁぁ、やっぱそうだよなぁ。
ジェストの料理って聞いた時からそうだと思ってたけどよお。
まためんどくせえことになってんなぁ」
そういうタウリの表情は心底嫌そうだ。
「俺達は、元の世界に帰る方法を探している。
なにか手がかりを知っていたら教えてくれないか?」
俺は率直に、1番聞きたいことを尋ねる。
繋いでいる舞の手が、緊張からかビクッと震える。
なんでこんな場面でも繋いでんだよ、とか言われそうだが、仕方ないじゃん。
繋ぎたそうに机の下で手をさわさわしてくるんだもん。
繋ぐしかないじゃん。
まあそんなことはいいとして、俺の質問にタウリは真剣な表情を浮べる。
「俺も、手がかりってほどのことは知らねえ。
というより、知ってたら俺が帰ってた。
ま、今になったらもう帰るつもりもねえけどな」
「……!!
ってことは、タウリはやっぱり」
「ああ、俺は日本人だよ。
元、な」
!!!
その情報に、俺は思わず飛び上がりそうになる。
舞も、軽く目に涙を滲ませている。
だが、その様子を見たのか、タウリは「勘違いすんなよ」と言う。
「あくまで、俺は日本人なだけだ。
この世界に来た理由も、戻る方法も、何もかも知らねえ」
「そう、か」
だが、それでも元日本人の人を見つけれたことは、かなり大きい事実に間違いはない。
「タウリは、どうやってこの世界にやって来たんだ?」
「俺も、お前らと同じだ。
カラマ王国に召喚された。
目が覚めたら城の中で、訳が分からなかったことは覚えてるよ」
俺らの時と違う。
俺らは森の中に召喚され、そこから団長の姿をしたアルナに城へと導かれた。
この違いはなんだ?
まだ何かありそうだ。
「それがいつの話で、何人いたのか、そしてどんな支給品をもらえたのか、覚えてるか?」
「ったく、質問が多いな。
あれは忘れもしねえ、今から15年ほど前のことだ。
召喚されたのは俺を含めて四人。
そのうち、魔王を倒すと決めたのは二人だった。
支給品はあんまり覚えてねえな。
大して役に立たなかった記憶がある」
15年前?
その時にまだ魔王がいた?
どういうことだ?
「その魔王は、倒せたのか?」
「ああ、倒したらしいぜ。
まあ、俺はその旅に参加しなかったから詳しいことは知らねえが、勇者凱旋パーティ的なのがやってたことは覚えてる。
倒した俺の同郷もまだ普通に生きてるぜ」
要するに、15年前にも魔王は現れて、その時の勇者が倒した。
そして現在、また別の魔王が現れて、一樹が勇者として呼ばれた、と。
恐らくそういう認識であっているはずだ。
だが、何か違和感がある。
そうだ、タウリの話には、オミスを含む神が絡んできていない。
あくまで、カラマ王国に、魔王を倒すために召喚されたということになっている。
「それで、タウリは勇者について行かずにどうしたんだ?」
「俺は、もう一人と一緒に、元の世界に帰る方法を探す旅に出た。
まるで今のお前らと同じだな。
まあ、今こうしてるところから分かる通り見つからなかった訳だが」
「それは、手がかりが無かったということか?」
「これっぽっちもな。
何をどうすればいいのか、まず何から始めればいいのか。
それすらもわからなかったし、今のお前にとっての俺みたいな存在もいねえ。
お手上げだったよ」
「いや、待てよ。
本にヒントは載ってただろ?
あれを見れば」
「本……?
何言ってんだ、そんなものは知らねえよ」
本を知らない!?
この世界についての多くのヒントが書いてあり、序盤はあれに助けられたと言ってもいい。
いや、確かに普通に考えて、同じ支給品が与えられているとは限らない。
つまり、俺が持っているあの本こそ最大のヒント……?
あそこに何か隠されていたか?
思い出せ、思い出せ、思い出せ!
そして俺はその時、何故今まで気づいていなかったのか。
まるで分からない、衝撃の事実に気がついてしまったのだった。
そうだ、俺、本の5番にあった『パーフェクトな神オミスについて』の欄読んでねえじゃん。
2.3日おきには頑張ってがんばってあげていきます。
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