旅立ちまでについて①
時が経つのは早いもので、勲章授与式があってからもう二週間が過ぎた。
その間に色々な事が変化した。
まず一つ目。
「親方!いよいよお別れですねい!」
俺の隣で歩く、虎耳をした金髪の、20代くらいのチャラ男。
喋り方で分かると思うが、ゴルドラである。
「おでも、ご主人と離れるの寂しい」
そして、頭に角を一本はやした30代前半の男。
こちらもまた分かりやすい喋り方なので分かると思うが、ロプスである。
あの後、アマルーナによるスパルタ特訓を毎日行い、二人とも一週間程で進化することが出来た。
予想通り人化も習得することができ、カラマ王国に残る意志がより深まった様子だ。
変化二つ目。
「あははっ、ロプスさん、結構寂しがり屋なんですね!」
そう言って可笑しそうに笑う女の子。
意外に思うかもしれないが、宿屋『ストルノ荘』の一人娘、ハルノである。
宿屋で従業員として働いている時に丁寧な話し方なのは変わらないが、俺や舞やティフィア、俺の眷属と話す時は、歳相応の無邪気な話し方に変わった。
いや、元の話し方に戻ったと言うべきだろうか。
とにかく、俺としては、感じていた壁が無くなった気がして、少し嬉しいと感じている。
変化三つ目。
「師匠!俺の眷属が進化したぜ!」
「わ、私もです!お師匠様!」
「お、おお、それは良かったな」
俺が鍛えていた魔物使い達からの呼び方が変わった。
上からイノマとティフィアである。
正直、イノマから師匠と呼ばれることの違和感が半端ないのだが、何度言っても止めようとしないのでもう諦めている。
変化四つ目。
「本当に、出ていってしまうのか?」
「ああ、前から言っていただろ?」
「そうか、いつでもまた戻ってきてくれよ」
「勿論、そのつもりだ」
俺の横で悲しそうな表情を浮かべているおっさん。
オウマである。
いや、王様がこんな街に出て大丈夫なのかよ!と、俺も思った時はあったが、一応ロプスとゴルドラが護衛してくれているのでそこは安心している。
何故オウマがこんな所を歩いているのかというと、勿論俺に最後の挨拶をするためというのもあるが、国民を見回るために出歩くことにしているのだそうだ。
それのお陰で、オウマの信頼度は徐々に上昇していっているようだ。
そんなこんなで迎えた今日。
俺と舞の旅立つ日がやって来た。
正直に言えば、この国に結構愛着が湧いていて離れるのが寂しいのだが、いつまでもこの国でいることは出来ない。
俺達はオミスの条件を探しに行かなければならないのだから。
その後、一旦みんなと別れた俺達は、結局最後までお世話になった『ストルノ荘』の部屋で、荷物を準備していた。
ここには色々と(主に性的な意味で)思い出があるため、なんだか感慨深い気持ちになる。
まあ、今生の別れという訳でもないから、来ようと思ったらいつでも来ることが出来るのだが、それとこれとは話が別なのだ。
「ふぅ、優斗君、準備できた?」
そうして妙な感慨に耽っていた俺に、準備を終えた様子の舞が声をかけてくる。
舞は学校にいた頃も美人だったが、俺と結婚してからは更にそれに磨きがかかっている。
こんな可愛い子が俺の妻なんて、今でも偶に夢なんじゃないかと思うことがあるくらいだ。
「ああ、もう俺は出来てるぞ。舞ももう終わったのか?」
「うん!私の必要なものは準備できたよ!」
「分かった、それじゃ、鞄に入れるぞ?」
「うん!」
舞が頷いたのを見て、俺はそれぞれの荷物を支給品の鞄-通称アイテムボックス-の中に入れていく。
どれだけ入るのかは分からないが、一応二人分の荷物は全て鞄の中に入っていった。
「よし、これで準備万端だね!」
「ああ。
それじゃ、行くか」
これで本当にする事はなくなったので、俺達は部屋を出ようとする。
そして、そのまま外に出ようとしたら所で、ハルノによって止められた。
「待って!二人とも!」
「ん?どうした?」
俺が聞き返すと、ハルノは少し言いにくそうにしながら俺達に言う。
「その……頼みたいことがあるの」
「なんだ?」
「ハルノちゃん、何でも言ってね!」
俺と舞が更にそう言うと、ハルノは意を決したように俺達に告げた。
「私も、旅に連れていって欲しいの!」
その言葉は俺にとって予想外過ぎて、俺は思わず固まってしまうのだった。




