不自然な態度について。
「ユウトさん、私を強くしてください!」
次の日、宿屋を出た俺と舞が見たのは、ティフィアの90°のお辞儀というよくわからない光景だった。
色々気になることはあったが、とりあえず何がどうしてそうなったのかをティフィアに聞いてみることにした。
「ティフィア、どうした?」
「は、はい、実は、昨日の話に思うところがあって……」
ティフィアの話を要約するとこうだ。
『イノマの弟は帰ってきてるのに私の弟は帰ってきていない!でも、取り戻そうにも、あんな魔物をいっぱい出す人に勝てるわけがない!だから対抗できるように強くして!』
ということである。
まあ、確かに、そこは俺にもよくわからなかったところだ。
この国のどこかでひっそりと暮らしているという説も考えたけど、どうにもしっくりこないのだ。
だから、協力したいのは山々なのだが……
「………俺、本当は強くないんだよなぁ」
そう、元々この力は指輪と本によるものだ。
だから、強くしようにも、限界以上の強さにすることはできない。
「……?何か言いましたか?ユウトさん」
「いや、何でもない。少し考えさせてくれ」
でも、だからといって、このまま放置するのも後味が悪い。
この件に介入したのなら、せめて手助けくらいはしたいと思うのだ。
だから、ここで俺が取る選択は………
「わかった、強くするのを、手伝おう」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、だが、俺が勲章を貰った後、一週間後からにしてくれ。それまでは、こっちにも予定がある」
「は、はい!わかりました!ありがとうございます!」
俺の本による記憶が正しければ、獣人族のステータスの限界はA-だったはずだ。
だから、そのランクまでは上げたいと思うが、今の段階では修行相手がいない。
A-ランクまであげようと思ったら、カリンやライムでは弱すぎる。
かといって、アマルーナは戦闘狂なので、手加減ができるかがそもそも怪しい。
だから、この一週間で、ライムとカリンを進化させることにしたのだ。
ティフィアが去っていたのを見てから、俺は舞に謝る。
俺の勝手で予定を変えてしまったのだから当然だ。
「ごめんな舞、本当は冒険者業をするつもりだったけど、少し予定が変わった」
「ううん、それは別にいいんだけど………少し寂しいかなぁ」
「寂しい?」
「えっ、いや、何でもないよ!
ほら、修行するんでしょ?早く行こ!」
舞の態度と、俺の目的に簡単に気づいた事に俺は驚きながら、何度目かわからない森へと向かった。
△
▽
△
「『召喚』“カリン、ライム”」
森にたどり着いた俺は、『モンスターボックス』からカリンとライムを召喚する。
………あ、そういえば、俺、虎とサイクロプスを仲間にしてたんだった。
あいつらならちょうどいい相手になっただろうに。
まあ、一週間後と言ったんだから仕方がない。
その間はライムとカリンを育てることにしよう。
でもその前に……
「舞、あの虎とサイクロプスの名前をつけようと思うんだが、何かいい案はないか?」
まずはあの二体の名前を決めないとな。
でなきゃ召喚ができない。
「……………」
「………舞?」
「え!あ、うん、名前だね、うーん、特には思いつかないかなー」
舞の不自然な態度に俺は少し戸惑う。
あのティフィアとの会話から、舞が少し上の空になってしまっているのだ。
でも、何が原因かがわからないので、俺は一旦その疑問を棚に上げることにする。
「……そっか、じゃあ適当につけることにしよう」
サイクロプスは別にサイクロプスのままでいいと思うが、やはり愛着を沸かせるために、名前はつけたい。
うーん、サイクロプスか………ライムの時と同じ法則でいいか。
「じゃあサイクロプスの名前は『ロプス』だ。
『召喚』“ロプス”」
俺がそういった瞬間に、空間に歪みが生じ、中からロプスが出てくる。
「お前は今日からロプスだ。よろしくな」
『わがっだ、おで、がんばる』
思いもよらなかったロプスの返事に俺は少し驚きながら頷く。
……まさか、サイクロプスが『おで』って言うのは、なんかちょっと可愛い気がする。
いや、とりあえず今はそれはいい。
次はあの虎だ。
正直、あの虎のイメージは
『金色、虎、雑魚』
位しかないんだよなぁ。
まあここは全ての特徴を表すあれでいいか。
「んじゃ、虎は『ゴルドラ』だな。
『召喚』“ゴルドラ”」
ロプスと同じようにして出てきたゴルドラに、俺は同じような事を言う。
『よろしくお願いしますしますぜい!親方!』
予想外の返事に驚くのもまたご愛敬。
いや、親方て。
まあ、呼び方は別に何でもいいけどさ。
「それじゃ、ライム、カリン、ロプス、ゴルドラ。
今から修行を始める」
『わかりました、何をすればいいのでしょうか』
返事をしたのはカリンだ。
この中でライムが一番先輩だが、ちゃんと話せる中で先輩なのはカリンだからな。
眷属の中でも暗黙の了解というものが出来ているのだろう。
「まあ、そんなに難しいことをさせるつもりは無い。
やることはひとつだけだ。
殺す気で俺に向かってこい。怪我を負わせれたらお前らの勝ちだ、いいな?」
俺の言葉に体を震わせたのは、ロプスとゴルドラだ。
俺にコテンパンにやられたのがまだ記憶に新しいからだろう。
だが、やらないという選択肢はない。
強くなるには、これが一番手っ取り早い方法だからな。
「舞はリースと一緒に魔法の練習でもしていてくれ」
「うん、わかった、行くよリース」
『わかったわ』
舞達が離れたのを見てから、俺は体に力を入れる。
俺の雰囲気の変化を感じ取ったのか、眷属達もまた臨戦態勢に入った。
俺はそれを見て頷いてから、言った。
「さて、始めるぞ」
アマルーナの埋め合わせもしないといけないな、と考えながら。
何を元にしているかは……わかる人にはわかります




