決勝戦について。
ライムが熊鰻に突進していく。
それを熊鰻は右に避けて腕を振り降ろそうとするが、ライムはその直前に勢いを殺し、方向転換をした。
ほぼ直角に曲がったライムに熊鰻は反応できず、お腹にまともに突進を受けてしまう。
だが、熊鰻は少し怯んだものの、すぐに立ち直ってライムをなぎ払おうとするが、ライムはそれを辛うじて避ける。
そしてもう一度互いに向き合ったところで、観客席から一斉に歓声が聞こえた。
『凄い攻防だ!ユウト選手対イノマ選手!Cランクの熊鰻を相手に、Eランクのスライムが互角以上の戦いを見せているぞ!
これほどの戦いを私は見たことがない!素晴らしい!』
実況も中々興奮しているようだ。
「意外に、魔物使いって凄いんだな」
「うん、スライムをあんなに強くするなんて」
観客席からそんな声が聞こえることに満足していると、イノマが少し焦ったような表情で俺に問いかけてきた。
「お前………それ、ただのスライムじゃねーだろ」
「ん?わかるのか?」
「いや、詳しくはわからねーが、スライムの上位種ってとこか?そんな動きをするスライムを俺は見たことがねえ」
流石魔物使い最強(俺を除いて)なだけあるのか、イノマはどうやら気づいたようだ。
だが、それにも答える義理はない。
「さあな、まあ、今はそんな無駄口叩いてる暇はないんじゃないか?」
俺がそう言った途端に、ライムが先程より一段階早いスピードで熊鰻に突進する。
熊鰻が辛うじて避けるが、ライムはその瞬間にまた方向転換をして熊鰻に突進する。
だがその瞬間、道連れとばかりに熊鰻が腕を振り落とそうとしたので、仕方なく俺はライムに短く指示を出した。
「ライム、『分裂』」
振り落とされた腕を避けるようにして、ライムが二体に分かれる。
そして、挟むようにして左右から同時に突進したところで、熊鰻は地に倒れ付した。
消えはしないものの、もう立ち上がることすら出来なさそうだ。
「……審判、べリアを入れ替える」
イノマが『応召』“べリア”と言って熊鰻を『モンスターボックス』に戻したところで、より一層大きい歓声がフィールド内に響き渡った。
『熊鰻対スライムの戦いはユウト選手のスライムに軍配が上がったぁ!
し、しかも今、スライムが分裂しなかったか!?
そんな話は聞いたことがないが、まあ、ユウト選手のスライムなら出来そうだ!』
いや、どういうことだよ。
いつの間にか俺万能説が出始めていることに戸惑いつつも、俺は舞たちの方へと目を向ける。
そこには、喜び笑顔で手を振っている舞と、俺がスライムで勝ったことに驚いたのだろう、困惑の表情を浮かべたハルノとティフィアがいた。
俺はティフィアが無事に合流出来たことに安心しながら、軽く舞たちに手を振る。
そしてもう一度イノマに向かい合った。
「それで、二体目はどうするんだ?
まさか、熊鰻より強い魔物がいないとか言わないよな?」
「………はっ、そんな訳が無いだろうが。
いいぜ、俺の本命を見せてやるよ」
そのハッタリには見えない表情に、俺は少し楽しみに思いながらイノマの召喚を待つ。
今や、観客席もほとんど静まり返っており、イノマの二体目の魔物を今か今かと待ちかまえていた。
「『召喚』“バルナ”!」
イノマがそう言って召喚したのは、体長1m50cm程のライオンの魔物だった。
『な、なんとイノマ選手!C+ランクの百獣をここで出してきた!
いつの間にC+ランクの魔物を眷属にしていたんだぁ!?』
その実況の言葉に、再び観客席から「うぉぉぉぉー!!」という歓声が響いた。
「こいつは俺の持ってる中で最強の魔物だ。
こいつを眷属に出来たのは奇跡だと思えるくらいに強い。そのスライムで勝てるか?」
確かに、このライオンから伝わってくる威圧はアマルーナを除いたら今までで最大だった。
ライムには荷が重いかもしれない。
だが
「審判、俺も魔物を交代したい。いいか?」
CランクにはCランク、C+ランクにはC+ランクだ。
俺は審判にオッケーを貰ったのと同時にライムを『モンスターボックス』に戻す。
「『召喚』“カリン”」
そしてC+ランクのワーウルフであるカリンを召喚した。
「そいつがワーウルフか………」
「ああ、これでお互いC+ランクの魔物だな。
条件は同じだ。んじゃ、始めるか」
こうして決勝戦、最後の戦いは幕を開けた。
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「ぐあっ!」
「な、なんだよこの強さは!?」
その頃カラマ王国門前では。
魔物達の進行を兵士達が必死にくいとめていた。
「こいつら、今までのやつらと桁が違うぞ!」
「くっそ、このままじゃ俺達が全滅しちまう!おい!誰か王様に報告してこい!今は闘技場にいるはずだ!」
「わ、わかりました!」
隊長が部下に向けて命令をだす。
命令を受けた兵士は、必死に闘技場に向かって走り出した。
「くっそ……どうなってやがんだ……」
しかし、隊長はその疑問を解消する暇はなく、必死に魔物を食い止める。
「さっさと戻ってこいよ、ケイゴ」
隊長は報告に行った兵士が早く戻ってくることを願いながら、次々に押し寄せる魔物を必死に狩っていく。
「ちょ、マジかよ!」
「嘘だろ………?」
そこで兵士達の呆然とした声が耳に届き、隊長は振り返る。
そこには
「ガァァァァァァァッ!!!」
脅威と呼ばれるBランクの魔物、金虎と
「………………」
絶望と呼ばれる、Aランクの魔物、サイクロプスの姿があった。
「マジ………かよ…………」
そして兵士達の蹂躙が始まった。




