決勝戦の開始について。
全てを吐き出して、少し楽になったらしい。
ティフィアは準決勝前までのピリピリとした表情ではなく、どこかすっきりとした表情を浮かべている。
「それじゃ、そろそろ決勝みたいだし、ティフィアもここをでないといけないんじゃないか?」
俺はもう大丈夫だろうと思い、ティフィアにそう告げる。
すると、ティフィアはハッとした顔になり、慌てたように頷いた。
「あ、そうですね。
……その、頑張ってください」
「ああ、任せろ。
あ、それと、もし観客席に行くんだったら入り口のすぐ右側に俺の知り合いがいるから、そこに行ったらいい。黒髪ショートの女の子と、茶髪ポニテの女の子だ。まあ、わからなかったらいいが」
「は、はい、わかりました。探してみます」
「ああ。んじゃ、また後で」
「はい、では」
ティフィアは一度おじぎをして控え室から出ていった。
そこで、ちょうどフィールドから入れ違いのようにイノマが戻ってくる。
どうやら、決勝への意気込み的なものをインタビューされていたらしい。
よっぽどしつこかったのだろう。
その顔は微妙に窶れているように見えた。
不戦勝で決勝に上がれたことを変な形でラッキーと思いながら、俺は決勝戦まで待機していた。
その後、受付嬢(仮)が控え室にやってきて、決勝戦の説明を始めだした。
「それでは今から、決勝戦についての説明を始める。
基本的なルールは準決勝までと変わらないが、決勝では出場させる魔物は一体ずつ、二体まで出すことができる。
また、途中交代をさせた場合、元の魔物を再度召喚することは禁止とする。
以上だが、質問はあるか?」
俺は特になかったので首を横にふる。
イノマも同じだったようで、だんまりを決め込んでいる。
「それでは、これで説明は終わりとする。
決勝は五分後に始まるから用意をするように。
それと………私も決勝戦を楽しみにしているぞ」
俺が思いがけない受付嬢(仮)の言葉に惚けている間に、受付嬢(仮)は控え室を出ていってしまった。
まさかのツンデレ属性かぁ。
リースとは違って、ツンが9割デレ1割みたいな感じだったな。
そんな属性を持っているのなら、あの人は受付嬢(仮)から受付嬢に昇格だ。おめでとう。
等と、俺がよくわからないことを考えていると、イノマがフィールドへと歩き出したのが視界に入った。
俺は慌ててその後ろをついていき、フィールドへと入った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~〜
フィールドに入った瞬間、俺達は観客達の声援に包まれた。
そこには、最初にあった見下した感じは無くなっており、純粋に次の試合の勝者が誰か、それを楽しみにしている様子だった。
おそらく、ライムとカリン一匹で勝ち上がってきた俺と、魔物使い最強と言われているイノマとの戦いだからだろう。
俺は順当に国民の差別意識がなくなってきていることに満足しながら、イノマと向き合った。
「なあ、イノマ」
そこで俺は聞きたかった質問をすることにした。
「お前、アルナって知ってるか?」
「……!
……さあ、知らねえな」
俺がそう言った瞬間、イノマがあからさまに動揺したのがわかった。
「ビンゴか……」
俺がそう呟くと、イノマが俺に必死に無表情を取り繕って聞いてくる。
「お前……どこでその名を…?」
……その言葉を言った時点で知ってるって認めてるのと同じだろう。
「それに答える義理はないな。
それと、もう一つ。本当にティフィアと会ったことはないのか?」
俺が軽くスルーして聞くと、イノマはバカ正直に答えた。
「……お前らが何話してたかは知らねーが、俺は本当に会ったことはねーよ」
ふむ、これで確信がもてたな。
「わかった、それが聞ければ十分だ。
んじゃ、そろそろ始めるとするか」
そう言って俺はライムを召喚する。
「なんか納得いかねーが、まあいい。
戦うってんなら俺だって負けるつもりはねーぞ。
『召喚』“べリア”!」
そしてイノマは恒例となってきた熊鰻を召喚した。
「確かに普通のスライムよりかはつえーのかも知れねーが、そんなもん、俺のべリアにかかれば一瞬で-----」
「御託はいいからさっさとかかってこいよ」
俺が挑発すると、イノマは簡単にそれに乗って熊鰻に指示をだす。
「べリア、やっちまえ」
俺もそれに対応するように、ライムに簡単な指示を出した。
「ライム、好きにやれ」
そして、ついに魔物使いトーナメントの決勝戦が始まったのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「遂にこの時がやってきたぜ」
男が魔物の群れを連れてカラマ王国の前へ辿り着く。
「お、おい、お前は誰だ!?」
「っ!な、なんだその魔物の量は!?」
門の前に立つ兵士達が男へ問いかけるが、男の返事は魔物への指示だった。
「殺れ」
そう言うだけで、魔物の内の数匹が兵士へと飛びかかる。
「なっ、や、やめ、ぐぁぁ!」
「た、助け………ぎゃぁぁ!」
ものの数秒で命を散らした兵士達を尻目に、男は魔物に命令する。
「お前ら、今からここで大暴れをしてこい。
一番多く殺せたやつには褒美をやろうじゃねーか」
褒美という言葉に釣られたのか、魔物が一斉に雄叫びをあげる。
唯一、サイクロプスだけがこっちをじっと見つめているのには気になったが、それも些細なことだ。
男は魔物が王国へと進行していったのを見ながら、後方で呟いく。
「さーて、蹂躙の始まりだぜぇ!」
裏で動きだした男の計画には、まだ誰も気づいていない。




