リュックの正体と獣人族の魔物使いについて。
本日2話目です
買い物を終え、俺達は買った服へと着替えた。
「これ、どうする?」
舞が脱いだ制服を手に持って俺に聞く。
ちなみに、今はリースに頼んで、周りからは見えないし音も聞こえないという障壁を張ってもらっている。
「うーん、『アイテムボックス』的なのがあればいいんだけど…」
常に大量の荷物を持っていられる訳ではない。
だから試しに『アイテムボックス』と念じてみたのだが、特に何も起きなかった。
「確かにね、大荷物を常に持ってるわけにも行かないし…」
「まあ、とりあえず、小さいものは俺のリュックにいれといて、後は手に持つしかないだろうな」
「そうだね」
俺は街で買った日用品をリュックに入れていく。
ところが、そこで気づいたことがあった。
「ん?重くならないぞ?」
日用品だけでもかなりの重さがあったはずなのに、どれだけ入れても一向に重くならないのだ。
そこで俺は、もしかして、と思ってある実験をしてみることにした。
俺は自分の制服をたたまずに無理やりリュックに押し込もうとする。
すると、制服は何の抵抗をなくリュックの中に入っていった。
「やっぱり…」
「どうしたの?」
「このリュック、どうやらアイテムボックスと同じ役割をしているらしい」
俺の支給品は本だけだと思っていたが、まさかこのリュックも支給品だったとは。
「さっき買った服と制服も多分入ると思うから貸してくれ」
「うん、わかった!」
舞が制服をきちんとたたんで俺に渡してくる。
俺は、ちゃんとたたむとか偉いなぁとか、なんかいい匂いがするなぁとか思いながらそれをリュックに入れた。
勿論そんな表情はおくびにも出さないが。
「やっぱり大丈夫みたいだ。荷物も頼む」
「うん!」
その後、無事に俺達は全ての荷物をリュックに収納することができた。
こうして、俺達は荷物問題を思わぬところで解決することができたのだった。
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トーナメントは『冒険者ギルド』ではなく、闘技場で行われるそうだったので、俺達は闘技場へと向かった。
かなりの広さを持つ街中を歩くのは骨が折れたが、数十分程で辿り着くことが出来た。
ちなみに闘技場を見た初印象は「でかっ!?」である。
おそらく野球ドームくらいはあるだろうという大きさだ。
入り口を見ると、参加者用と観客者用で分かれているようだったので、俺は舞とリースとそこで別れた。
アマルーナにはもしものことを考え、『モンスターボックス』に入っていて貰っている。
召喚することはないと信じたいが。
俺が参加者用の入り口に入ると、元々騒がしかった中が更にうるさくなった。
「おい、あいつだろ?イノマに喧嘩売ったやつって」
「おう、なにやらスライムでボコボコにするとか言ってたそうだぞ」
「まじかよ、あいつ俺達を舐めてんのか?」
「ははは、全くだ」
周りのやつらが俺の方を見てそんなことを言ってくる。
なんか噂に根も葉も付きすぎている気がする。
しかも、また「ははは、全くだ」って言ってる野郎いるし。
戦うことになったら即潰してやろう。
俺が心の中でそう決意していると、奥からイノマが近づいてきた。
流石にアルナがここに来るとは思えないので、おそらく本物だろう。
そう思った俺は、そのイノマにそっと近づいて言った。
(本物ですよね?)
(あん?)
そう言った瞬間、イノマは何を言ってるんだとばかりに不思議そうな表情を浮かべる。
それを見て、俺はこのイノマが本物だと確信したので、そのまま受付嬢のところまで歩いていった。
「エントリーしていた優斗だが」
「あ、はい、ユウト様ですね。
えっと、Dブロックになりますね」
俺はその言葉に疑問を挟む。
「何ブロックまであるんだ?」
「今回は王様が直々に見に来るということで参加者が多く、各50名でDブロックまでありますね」
ということは、大体200人ってことだな。
「わかった、助かった」
「いえいえ、ご健闘をお祈りしていますね」
そう言って微笑(営業スマイルとも言う)を浮かべる受付の女性。
俺は「誰にでも言ってるんだろうな」等と根も葉も無いことを考えながら受付を後にし、試合について説明があるまで静かに待つことにした。
ところがそうゆっくりもさせてもらえないのが現実である。
「あ、あの、あなたがユウトさんですか?」
いかにも気の弱そうな女性が俺に話しかけてきたのだ。
その女性は少し長めの茶髪に綺麗な顔で、美少女と言って差し支えのない容姿をしている。
現に、周りの人もチラチラと女性のことを見ている。
だが、俺は別のところに注目していた。
そう、猫耳である。
この女性は獣人族だったのだ。
俺は内心の興奮を隠しながらいつも通りを装って返事をする。
「ああ、そうだが、どうかしたか?」
「そ、その、不幸ですね。イノマさんに目をつけられるなんて」
少し話し方に少しイラッとはしたが、本心で俺を心配していることに気付き、そんな事を言う女性を不思議に思う。
「ありがとう、でも、大丈夫だ。俺は誰にも負けるつもりはない」
「は、はぁ、凄いです。私なんて全然ですから」
その獣人族の女性は自嘲気味な笑みを浮かべる。
俺は敢えてそれには気づかないふりをし、女性に質問した。
「君もここにいるってことは大会に出るんだよな?」
「は、はい!そうです!」
「そうか、俺は優斗だ。Dブロックに出場する。お互い頑張ろうな」
「は、はい!わ、私はティフィアと言います。え、Aブロックですから、ユウトさんとはしばらく当たりませんね」
「ああ。最初の試合だけど、がんばれよ」
「は、はい、ありがとうございました!」
そう言って、獣耳をぴこぴこさせながら俺に礼をし、ティフィアはどこかへ言ってしまった。
俺はティフィアの浮かべた自嘲気味な笑みを思いだし、無性に嫌な気分になっていると、さっきの受付の女性が突然全員の前に出てきた。
俺が頭に?マークを浮かべていると、受付嬢はさっきまでの話し方とは打って変わった話し方で参加者に向かって言った。
「今から、試合の説明を始める!」
あ、お前が話すのね。




