看板娘の父との会話について。
本日1話目です
「ふぁーあ」
俺はあくびと共に目を覚ました。
体を起こして隣を見ると、裸体にシーツを被った姿の舞が寝ているのが目に入る。
それを見て、改めて昨夜の行為を思い出して俺は恥ずかしくなった。
「そうか……俺は、卒業したのか……」
俺がある種の感慨に耽っていると、舞も目を覚ましたようでシーツがもぞもぞと動き出した。
「ん~〜、ん?優斗君どうしたの?」
可愛いあくびと共に体を起こした舞が、座ったままでいる俺を不思議に思ったのか聞いてくる。
「いや、まだ一日しか経っていないのに、随分とこの世界にいる気がしてさ」
「ああ!うん、確かに、私も今でも夢を見てる気分だもん!」
俺が誤魔化すと、舞は特に疑うこともなくそれに同意した。
「まあ、本当に夢だったら最悪だけどな。
折角好きな人と結婚できたのに。」
「そうだね、私も同じ気持ちだよ」
俺達が新婚夫婦特有の甘い雰囲気を醸し始めたところで、突然部屋のドアがノックされ、ハルノの声が聞こえてきた。
俺は慌てて返事をする。
「あ、起きていらっしゃいましたか。
朝食を用意しましたので、準備ができたら降りてきてくださいね」
「わかった」
俺が返事をすると、ハルノの足音が遠ざかっていくのが聞こえてきた。
「ふぅ、まあ、流石に入っては来ないか」
一瞬、今の状態をハルノに見られるかもと思ったが、流石に客のプライベートにまでは立ち入らないらしい。
「それじゃ、さっさと着替えて食堂に行くか」
「うん」
俺達は今換えの服が無いので、部屋に脱ぎ散らかっている下着と制服をもう一度着用する。
午前中に服は買っとこうと決意しながら着替えを終え、俺はアマルーナ、舞はリースを召喚し、俺達はご飯を食べるために食堂へ向かった。
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俺達が食堂に入ると、そこには既に先客がいた。
40歳前後くらいの男性で、俺は、他の客はいないんじゃなかったのか?と思いながらも席に着く。
すると、すぐにハルノから説明が入った。
「ユウトさん、お父さんに話があるんですよね?」
それを聞いて俺は昨日の会話を思い出した。
「ああ、そうだった、ありがとう。
すいません、少しいいですか?」
俺はハルノに礼を言ったあと、ハルノの父親に声をかけた。
「大丈夫だよ、あなたがユウト君かい?」
「あ、はい、そうです」
「僕の名前はジェストだ。娘が世話になったみたいだね。礼を言うよ」
なんだか礼儀の正しい人だ。
ハルノによく似ているように感じる。
「それでユウト君、僕に何か用があるんだよね?」
「はい、少しお聞きしたいことがあるんです」
「うーん、僕にかい?なんだい?」
「昨日、『すき焼き』を頂いたんですが、あれはどこでレシピを知ったんですか?」
俺がじっとジェストさんの顔を見ると、ジェストさんも段々と真剣な顔に………ならずに何故か顔を赤らめた。
「ちょ、ちょっとユウト君、そんなじっと見つめられたら……」
「お父さん!!」
「ごめんなさい、少し悪ふざけが過ぎました」
ハルノに叱られて反省するジェストさん。
それを見て、俺は呆気に取られる。
物凄い生真面目な人だと思ったが、全然そんなことはないようだ。
「えっとだね、その答えだけど、実はこのレシピは僕が知っていたわけじゃないんだよ。僕の友人が隣の『キハイ王国』という国にいるんだけど、その友人に教えてもらったんだ。ご期待に添えなくてごめんね」
「いえ、ありがとうございます。ちなみにその友人のお名前は?」
「『タウリ』だね」
「わかりました、また訪ねてみることにします」
俺は収穫を得たことに満足しつつ、その後もジェストやハルノとの会話を楽しみながら俺達は朝食を終えた。
「じゃあ、俺達はもう行くよ。
トーナメントの前に、やっておきたい事もあるからな」
「はい、わかりました。
ユウトさん、頑張ってください!応援しに行きますね!」
「ああ、ありがとう。じゃあ、また午後に会おう」
「はい!」
俺達はハルノの宿屋(『ストルノ荘』というらしい)の前で、敢えて周りにわからせるようにゆっくりと話した後、宿屋を後にした。
これで、少なくともこの周辺の人は俺達がストルノ荘で泊まったということがわかるだろう。
「確か、トーナメントの開始時間は1時だったはずだから、その間に街で買い物でもしよう」
「そうだね。ずっと制服でいるのも嫌だもんね」
現在時刻は約9時といったところなので、俺達は3時間程街で買い物をすることにした。
『妾の分も買ってくれるのかの?』
「まあ、それはお金に余裕があったらな」
アマルーナが聞いてくるが、正直、ケイゴに貰ったお金ではそこまで多く買えるかわからないので、一旦保留にしておく。
ちなみに、この世界でのお金は
閃貨=金貨10枚
金貨=銀貨10枚
銀貨=鉄貨10枚
鉄貨=銅貨10枚
銅貨=日本の100円
という感じになっていて、俺がケイゴに貰ったお金は銀貨10枚だったので、日本円でいう10万円相当だ。
買い物がしやすいように、金貨1枚じゃなくて銀貨10枚にしてくれたところにケイゴの優しさを感じる。
だが、ケイゴのお金も切れるだろうし、そろそろお金を貯める必要も出てくるだろう。
「じゃあ、まだどこに何があるか把握しきれてないし、その辺ぶらぶらするか」
「うん、楽しみだね!」
『私もー!』
『うむ、こういうのも悪くは無いの』
「そうだな」
しかし、俺はこの時女性の買い物というものを舐めていた。
その後、俺は3時間、女性陣に荷物持ちをさせられながら、ひたすら道を歩くことになるのだった。




