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職業リア充で異世界無双。  作者: すみを。
第1章:カラマ王国編
2/76

気がつくと森の中にいた件について。

本日2話目です

俺達は気がつくと森の中にいた。

それ以外の言葉が思いつかないくらい、今の状況はまさしくその言葉の通りだった。


周囲にはさっきまで同じクラスにいたクラスメイト達の姿がある。

でも、景色は見慣れた教室ではなく、視界いっぱいに広がる緑色。

まるで山奥に放り込まれたかのように、木々以外の何もなかった。


常日頃から非日常的な事が起こった時のことをシミュレーション(妄想)していた俺は、周りのクラスメイト達が悲鳴やら叫び声やらを上げている間に、この状況について冷静に整理する。


突然、クラスメイトと纏めて移動したが、ここはどこなのだろう。

辺り一面が木々で覆われていて詳しくはわからないけど、見たこともない植物ばかりなのもあって日本のどこかだとは考えられない。

となると、さっき身に起こった謎の現象を考慮に入れると、異世界召喚の線が濃厚かもしれない。

それも、今の何の判断根拠も無い状況では分かるわけないんだけどね。


俺がそんな思考をしている間、クラスメイト達はみな一様に隠しきれない困惑を表情に浮かべていた。

突然訳の分からないことが起きた時の反応としては、それが当然だ。

むしろ、こんな状況で冷静に思考できている俺がどこかズレてしまっているのだ。


「し、芝崎くん!

どうなってるの!?」


近くにいた川口が、ハッと我に返るや否や、俺に慌てた様子で聞いてくる。

正直俺もよくわかっていない現状、聞かれてもどうしようもないってところが本音だ。

でも、俺を頼ってくれているということ自体は嬉しいので、とりあえずの見解だけでも言っておこう。


「多分、別の世界に飛ばされたんだと思うよ」


「別の世界!?」


「ん。

要するに、日本、いや、地球系のどの惑星でもない全く見たことも聞いたこともない世界だろうね。

まだハッキリとしたことは分からないけど、正直それ以外の発想が思いつかないかな」


「そ、そんな…」


俺の返答に、川口が愕然とした表情を浮かべる。

それを見て何故か少し罪悪感が湧いた俺は、思わず慰めるようにして言葉を口に出す。


「そんな顔しなくても大丈夫だよ。

きっと帰る方法はあるはずだし」


よくある物語でいえば、魔王を倒す、とかね。


川口は俺の言葉に少し呆けた様子を見せたが、次第にいつもの笑顔に戻る。


「そうだよね、芝崎くんありがとう」


「ん、や、それほどでも……」


それはどう見ても強がって作った笑顔だったが、その笑顔がなんだか無性に可愛くて、思わず言葉がしどろもどろになってしまう。

恥ずかしくてつい視線を右に逸らすと、そこにはさっきまでの川口と同じように呆然としている一樹と西本の姿があった。


クラスの中心である一樹達があんな感じだと、間違いなくクラスがまともに機能しなくなる。

未知の状況だからこそ、全体をまとめるリーダーの存在は必要不可欠だ。


俺が一樹の方へ向かうと、一樹もこちらに気付いて急いで走ってくる。


「優斗!

どうなってるんだ!?」


いや、だからなんで俺に聞くんですかね。

こういう非現実的な事は俺の方が知ってそうだからって?

全く心外だね、その通りだけどさ。


「言っておくけど、俺だってまだよくわかってないからね」


「そうか、そうだよな」


「まあ、大方の予想はついてるけど」


「本当か!?」


俺はさっき川口に話した内容をもう少しだけ詳しく話し始める。


「普通に考えてさ、日本………いやこの場合は世界か。

とにかく、クラスごと誰も気づかないうちにどこかの森の奧に転移させるなんて技術が、地球にあるわけがないでしょ?

そう考えると、俺達が異世界か別の星かに飛ばされたと考えるのが自然じゃない?」


逆にそれ以外思いつかないし。


「んで、世界の研究者達がよっぽど無能じゃなかったら、地球以外の惑星に人は住めないのは誰でもわかる。

よってここは異世界である。

証明完了」


「で、でもさ、それだけでここが異世界とかって決めつけるのは早いんじゃ---」


「「「グアァァァ、グアァァァ」」」


ちょうどその時、一樹の言葉を遮るように、上空を横切った巨大な黒い鳥のようなものが鳴き声を上げる。

それだけなら別に大して何も思わないのだが、その鳥は地上から見ても全長で10m近くはあるように見えるのだ。


「…………なあ、優斗」


「ん?」


「ここ、異世界だな」


「ん、俺も今確信を持ったとこ」


全長10m超えの鳥なんぞ、地球にいてたまるかい。


だがお陰でハッキリした。

ここは紛うことなき異世界だ。

俺達は理由も何も分からないままに、惰性な生活から隔離されてしまったらしい。


「こうなった以上、まずは今の状況を整理しないといけない。

クラスのやつらにも説明しないといけないんだけど、俺の言うことを素直に聞くとは思えないから一樹が代わりに説明してやってくれない?」


「ああ、それは構わないんだが、何て言えばいいんだ?」


「とりあえず、『きっと帰れるさ』とか、『みんなで協力しよう』とか、そういう類のことを言ってみんなのパニックを解いてくれればいいよ」


「了解、やってみるよ」


そう快活に笑って、一樹はみんなの方へ走っていった。

こんな、本人もよく分かっていないだろう状況ですぐに動けるあたり、流石一樹だなと思う。


さて、その間に俺は俺でできることをしておこう。

まずは、一番気になっていたことから。


俺は背中から、背負った覚えのない(・・・・・)リュックを取り外す。

言葉に矛盾が生じているが、本当にその言葉のとおり、俺にはこんなものを身に付けた覚えはないし、なんならこんなカバンを見たことすらない。


「芝崎君、そのカバンは?」


突然リュックを取り出した俺に疑問を持ったのか、先程まで周りをキョロキョロと見渡していた川口がそう聞いてくる。


「教室にいたときは持っていなかったのに、ここにきたらいつの間にか背負ってたんだよ。

だから、このリュックが今の状況を示す鍵になるかもと思ってさ」


他に何もヒントがない状況だし、一縷の望みという部分もある。

流石に何も入っていないなんてことは無いはずだ。

むしろこれで何も無かったら、川口に堂々と言った手前恥ずか死するレベル。


そんな考えを過ぎらせながらリュックを開けてみると、中には資料集くらいの大きさの、分厚い本が入っていた。

とりあえずちょっと安心。

だが、こうなると開くのが少し怖い。

ないとは思うけど、開いた瞬間即死みたいな罠でないとは言いきれないし。


開いてみるべきか迷っていると、川口から声がかかる。


「芝崎君。

今気づいたんだけど、私もいつの間にかこの指輪をつけてたの。

これも何か関係あるのかな?」


そう言って、左腕の中指(・・)につけてある指輪を見せてくる。

それを見てからクラスメイトを見渡すと、確かに全員が何か道具を持っているみたいだった。


「ん、多分あるだろうね。

何の力を持ってるかとかは分からないけど、重要な要素であることは間違いないかな」


クラス全体を見てみると、ペンダントやイヤリングをつけている生徒もいれば、パッと見じゃ何を手に入れたのか分からない生徒もいる。

多分、それらのアイテムが何かしらの力を持っているんだろう。


そして、その事実を知ったことでこの本の危険性はもう無くなったとも言える。

流石に、全員何かを手に入れている状態で一人だけ『開けるな危険』のアイテムが混ざってることはない、と信じたい。

というか、ここで疑ってたら何も始まらないから信じるしかないとも言える。


一応、見届け人として川口にも一緒に見てもらおう。

別に他意はないからね?

本当だよ?


「川口、今からこの本を開けてみるんだけど、何かあったら困るから一応そこで見守っててくれない?」


「え、わ、分かった!頑張るよ!」


俺が言うと、川口が拳をぎゅっと握って、意気込むようにそう叫ぶ。

え、何を?というツッコミは無粋だからやめよう。

川口も、一樹ほどではないけどたまに天然が入るところがあるから、一々気にしていては身が持たない。


「よし、開けてみるね」


「うん!」


俺は恐る恐るというふうにページをめくる。

1ページ目を見てみると、そのページの一番上には『目次』と書かれてあった。

何も起きなかったことと、文字が普通に読めていることに二重の意味で安心する。


これで、懸念事項は取り除かれた。

言葉がこの世界の住民に通じないのは流石にキツイものがある。

ひとまず安心していると、川口から声がかかる。


「これ、なんて書いてあるのかな?」


…………ん。


「えっと、川口は読めないの?」


「えっ、ってことは芝崎くんはこれ読めるの?」


「まあ、一応」


「凄いね、なんか昔の文字みたいで、私には何が書いてあるかさっぱりわかんない」


川口の言葉から考えると、俺が手に入れたものだから俺にしか読めないという可能性が高そうだ。

まだ二人しか参考人がいないからなんともいえないけど、多分そうだと思う。


「俺が所有者だからかな。

他の人に見せない対策はしてあるってことだね」


相変わらず謎は深まるばかりだ。

俺達をここに連れてきた存在がいるだろうことは、この文字の応用を見ればわかる。

でもその存在が全く見えてこない。


「それで、なんて書いてあるの?」


俺がまるで迷宮のような思考に陥っていると、川口が少し急かすような感じで言ってくる。


「あー、そうだった。

ちょっと待ってね」


それを聞いて、俺は改めて目次へと目を通し始めた。



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