表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

真っ赤なお鼻のかわいい人

作者:








真っ赤なお鼻のかわいい人。



バイト先のお店の前で。


白い景色に一人佇み誰かを待ってる。


寒くないの? いや寒いよね、お鼻じゃなくて耳まで真っ赤。





「中に入りませんか?」



そう言えば、俯いてしまった。恥ずかしがり屋のかわいい人、今は顔も真っ赤だね。







誰を待ってるのかは分からない。 決まった時間にいつも来て、いつの間にかいなくなってる。



そんな彼を待たせる人は、きっとワガママな幸せ者だね。 きっと彼は、そうしたいから待っている。 その人を大切に思うから、真っ赤なお鼻も我慢できる。



彼の待ち人、一度でいいから見てみたいな。









静かな夜に、今日も彼は一人佇む。




そんな彼の後ろ姿を、私はぼんやり眺めてる。


不意に見えた横顔は、今日も鼻を赤くしてる。


健気で、真面目で、とても優しい。


何も知らないけれど、それだけはなんとなく分かる。







バイトが終わる頃。 いつもと違うことに気づく。


彼がまだ外にいる。 いつもはこの時間にはいなくなるのに。今日は待ち人さん、遅いのかな?






そのまま帰ってもよかった。 多分、彼は私のことなど知らないだろうし。



それでも。彼に声をかけたのは。 単純に、気になるからだ。




「寒く、ないですか?」



彼は少し驚いた顔をした後、小さく頷いた。また、顔まで真っ赤になる。 本当に、かわいい人だな。




「いつも、誰かと待ち合わせてるんですか?」


答えたくなければ、無理に返事はいらないですけど。


「………待ち合わせというか。 その、勝手に待ってるというか……」




初めて聞いた、意外と低い彼の声。 それにしても、やっぱり少し変わった人だね。 勝手に待ってるって。 頼まれてもないのに、そんなにお鼻を赤くしてるの? なんだかおかしいね。




「好きな人、ですか?」

「………一目惚れ、ですね。 僕の勝手な、片想いです」




どんどん顔は赤くなってく。 言わせておいてなんだけど、相当照れ屋さんだね。



「そうですか。 でも、その人は幸せだと思います。 こんな風に、想ってくれる人がいるんですから」


「………気持ち悪く、ないですかね。 その、ストーカーとか、思われたり」


「んー。 何も知らない人が見たら、ちょっと……… でも。 あなたが真面目な人なのは見てて伝わってきたので」




彼が真面目なのは見てて分かった。 それに今こうして話したことで、自分の気持ちに正直なんだって感じたから。





「それじゃ。 寒いけど、頑張ってください!」


「あ。 あの、これ」



振り向いて、首に温もりを感じた。 彼がしていたマフラー。 それが首に優しく巻かれた。




「………さ、寒いので」


「え、っと。 あ、ありがとです」



そう言うと、彼は笑った。 真っ赤なお鼻のかわいい人。









つられて私も、赤くなった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ