初恋は雨に濡れて
何故、あの子はあんな奴に縛られ続けるのか。
何故、あの子はあんな奴を好いてしまったのか。
あの子とアイツが出会ってしまったのが、あの子を苦しめることになった。
無理矢理引っ張られていった合コンで、あの子とアイツが出会ってしまった。
それが悲劇。
根っからの読書家で多趣味なあの子とアイツは話があったらしい。
そこから連絡先を交換して、休日に会うということを重ねていった。
そして当然のごとく二人は付き合うことになった。
告白はあの子の方から。
普通なら逆だろう、と私はあの子に言ったがそれでもあの子は笑ってた。
心から幸せそうに。
だと言うのにアイツは優しすぎた。
誰にでも優しいのは皆に冷たいことと同じ。
アイツはあの子がいるのに他の女とも仲良くしだして、それでもあの子は我慢を続けた。
健気ないい子。
心根の優しい子だから。
でも限界が来た。
あの子は涙ながらに一方的な別れを告げたんだ。
私の家に上がり込んでボロボロと大粒の涙をこぼすあの子を忘れない。
あの子が立ち直ろうとしている矢先、アイツはあの子の元へやって来た。
話し合いになんてなりはしない。
「優しいのは、嬉しかった…。でもっ、特別じゃなかった、一番になれなかった」
あの子はあんなにも心を痛めたというのに。
アイツは何も言わなかった。
涙を流さないように話すあの子を見つめているだけだった。
話が終わると「ごめんな」と呟いて帰って行った。
なんて勝手なんだろうか。
なんであんなにも身勝手なのだろうか。
自分から別れを切り出したものの、あの子はアイツが今でも好きだ。
アイツはあの子にとって初恋なんだ。
初恋は実らないもの。
確かにそうかもしれないが、実らないならそれでもいいから…。
これ以上あの子を傷つけないで。
ただ一人を想い続ける哀れな少女。
それがあの子ならば私はあの子の傷を癒す雨になりたい。
好きなだけ泣いていいんだよ。
我慢しなくていいんだよ。
私はあの子の傷を癒す。
私はアイツを憎む。
その二人の間に私が入るなんて烏滸がましいのはわかっている。
それでも私はあの子の味方だ。