表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/174

第九十七話 武蓮王(マナエスト)




 ボロボロになったレイと剣を鞘に収め、損傷を受けた左手を再生しているガンスロットを見て、皆はこう思っただろう。






 何故、ボロボロになっているのがレイの方なんだ?




 と。確かに、”天地崩壊カタフロスト”を発動したのはレイで、攻撃していた側だったのだ。

 だが、今はレイは倒れ、ガンスロットは立っている。

 光った一瞬の間で何が起こったのかわかっているのは目を一度も外さなかったゼロだけだった。

 ミディだったら目を離さなければ、わかっていたかもしれなかったが、ゼロの方を見ていたため、反応は皆と同じになっていた。




 その一瞬で何が起こったのかは…………






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 たった一秒前に遡る。




 レイとガンスロットは『超速思考』を持っていたため、他の人には一瞬でも、数秒と同じ時間で動いていた。


 レイが”天地崩壊カタフロスト”を発動した時、ガンスロットは本気を出すことに決めていた。

 本当なら次の戦いまでに温存して置きたい技だったのだ。

 ”天地崩壊カタフロスト”は空間を歪め、敵を分解することが出来る技であり、逃げ場なんてコロシアム全体に広がった瞬間に無くなっていた。


 だが、ガンスロットは王者能力『武蓮王マナエスト』がある。

 『武蓮王マナエスト』の能力とは…………




「私の『武蓮王マナエスト』の能力を見せてやろう。”絶空エクス”!」


 その時、ガンスロットが選んだ戦法は、カウンターだった。

 全域に広がる魔力の嵐を剣一本だけで消すなんて不可能だ。


 雷を消した技と違って、”絶空エクス”は技を還すのだ。

 そう…………






「……!? ま、まさか、元に戻された?」


 発動された”天地崩壊カタフロスト”だったが、ただの魔力に戻され、禁書の枚数が元に戻っていたのだ。


 ”絶空エクス”は相手の魔法、魔力を使った技を無かったことにして、その使われた魔力は術者に戻るのだ。




 そして、攻撃を無かったことにしても、ガンスロットはそこで終わらなかった。






「”七星終斬エンドレス”!」






 続けて、次の技を放っていた。レイはその技が危険だとわかり、禁書を心臓辺りに抱えていた。

 ガンスロットの六太刀が人間の弱点である部位を貫き、最後には…………




「心臓だけは守ったか。だが……!」


 最後の一太刀はレイの首を落として、レイの身体から浮遊がなくなり落ちていた。




「誰でも首を落とされては、生きていけないだろう……」




 最後の太刀はレイの首を斬っており、もう死んでいるとガンスロットは確信していた。






 何故、宙に浮いていたレイに攻撃が届いていたのかは、ガンスロットの王者能力にある。

 ガンスロットの持つ王者能力『武蓮王マナエスト』の能力は、中間を無くす能力だ。

 中間を無くすと言われてもピンと来ないだろう。


 例えば、”天地崩壊カタフロスト”を無かったことにした時は、『武蓮王マナエスト』で魔法を発動するのに、必要な行程、魔力の変換を無かったことにしたのだ。魔力の変換とは、魔力から魔法に変換するやり方であり、発動までの準備とも言える。

 だから、”天地崩壊カタフロスト”は発動せずに、隙を与えてしまったのだ。


 ”七星終斬エンドレス”はレイとの距離、間合いを潰して、弱点を切り裂く七太刀の技だ。


 こうした中間を消すと言う二種類の使い方でレイを殺したのだった…………






「ゼロ、次はお前だ。お前も妹の後を追わせてやろうじゃないか」


 観戦席にいるゼロに指を指して、挑発している。連戦はキツイが、今のガンスロットは負ける気がしなかった。


 だが、挑発された当の本人は観戦席から動かない。さらに表情を変えず、ガンスロットを見るだけ。

 配下達も同様だった。妹であり仲間が殺されたのに、何も思うことはないのか? と激昂しそうになったガンスロットだったが…………






「後ろぉぉぉぉぉ!!」

「っ!?」


 ガンスロットの仲間であるミテラが叫んでいたため、ガンスロットもすぐに気付くことが出来た。

 全力で前に跳びだし、避けたつもりだったが…………




「ぐぅっ!?」

「……いい隙だったのに、外しちゃった……」


 左手を突き出している形になっているレイの姿があった。

 ただ、首の上からは何もなくて、右手には自分の髪を掴んで持ち上げていた。

 自分の顔なのに、そんな持ち方でいいのか? と思うが、レイにとってはこの身体は壊れても直せばいいと考えているのだ。






「き、貴様は……何で、生きている!?」

「……私は首を落とされた程度じゃ、死なないの」


 レイは首に顔をぐりぐりと戻しながら、答える。




「……このままでは、魔法は効かないと考えた方がいいね。何せ……、貴方の能力は中間を消すもの」

「!? 何故? すぐにわかるとは思えない!!」

「……それは私だから」




 どうしてわかったのかは…………




『……やっぱり、目が二つあるとやりやすい……』

(そうだな。沢山使ってくれたからすぐに解析できたしな)


 そう、ゼロの中にいるレイの方がゼロの視覚から情報を読み取り、解析したからわかったのだ。

 そして、身体があるレイに情報を送り、向こうの意識も情報を得たのだった。






「だが、知ったとしても防ぐ可能性はない! さらにお前が魔法を主体に置いているなら俺に勝てる可能性はない!!」

「……確かに魔法は発動を無効されるのではね。だけど、たった今、成功したよ?」

「なっ!?」


 レイの後ろに陣が浮かんでいた。ガンスロットと会話している内に準備させていたのだ。

 ガンスロットは魔力の変換を無かったことすることが出来るが、それは意識してのこと。

 今みたいに、隠されて準備をされてしまうと、間に合わないのだ。




「くっ! 何が来ようが、切り裂くだけだっ!」


 ガンスロットは改めて、剣を抜いて構える。どんな技が来るかはわからない今は、防御体勢で構える。




「……ふふっ、今の私じゃ『武蓮王マナエスト』を破れない。なら、今の私を越えればいい……!!」


 禁書を見ると、一枚も残ってなかった。つまり、戻された分も含めて80枚分をこの技に注ぎ込んだのだ。

 レイが選んだ禁忌魔法は…………






「”悪魔王召喚サモンディモンキング”!!」






 光っていた陣が黒く染まり、障気が流れて来る。陣の中心から一つの影が出てくる…………







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ