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第九十四話 ナルカミvsガムロ



 ゼロが観戦席に着き、座ってナルカミの戦いを観戦しようとしたところにミディが質問してきた。




「のう、ゼロ。あの魔人…………いや、魔物? 何者か教えてくれんか?」

「あ? 気付いてないのか?」


 ミディはナルカミを聖獣類だと気づいてないようだ。

 堕聖獣になっているが、形はそんなに麒麟から掛け離れてないからわかると思ったんだが…………




「堕聖獣の麒麟だ」

「成る程、堕聖獣ね……………………………せいぃぃぃぃぃじゅうぅぅぅぅぅ!!?」

「うぉっ!? 近くで叫ぶな。鼓膜が破れるわ」

「仮に破れても貴方なら再生出来るだろ!? それよりも、あんなものを配下にしているの!?」

「悪いか? 向こうが懐いてんだから、配下にした。それだけだ」


 ゼロは詳しく説明せずに懐いたから配下にしただけと言って目をナルカミの方に向いた。






「むぅ……」

「ホホッ、ゼロ様はとんでもないお方ですな。私も初めに聞いた時も驚きました」

「そうだよね、聖獣が魔王と仲良くするなんて聞いたことがないし、しかも配下に入れちゃってるし……」


 適当にも聞こえる返事にむくれるミディだったが、呆れの心情の方が強かったようだ。




「でも、ゼロが強くなってくれることは私も嬉しいことだし、今は戦いの観戦を楽しもうではないか!」

「ホホッ、切り替えの早いミディ様も素晴らしいです!!」


 声が大きい二人にゼロはどうやって黙らせてやろうかとチラッと考えたが、無視することに決めたのだった。

 ここから少し離れた場所にいるナルカミとガムロの方では…………






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「は? お前は聖獣な……おわっ!?」

「グルッ!(惜しい!)」


 ガムロは声が大きかったミディの言葉が聞こえていたのだ。

 目の前の敵の正体が聖獣だとわかって、問いただしていたらナルカミの雷の技が飛んできたわけだ。




「おいっ! お前はマジで聖獣なのか? って、話を聞けよぉぉぉぉぉ!!」


 ガムロは話をしたかったが、ナルカミは容赦なく雷を落としていく。




「グルゥゥゥ、グルッ!!(こっちは話せないから無駄だし、隙を見せる貴方が悪い!!)」


 確かに話せないなら会話をしようとしても無駄なのだが、ガムロはまだ聖獣だと信じられないのか、叫びながら雷から逃げ回っていた。




「ん? 喋れないんだったな………うぉっ!?」

「グゥゥ、グルッ……(素早い、犬っころだな……)」

「む、馬鹿にされたような……」


 今まではガムロはずっと雷を避け続けていた。

 ナルカミの自由に出せる雷は当たれば炭化まではいかないが、ただの人間なら確実に一撃で黒焦げに出来るほどの威力がある。ナルカミにとっては様子見にすぎないのだ。




「おい、遊んでないで本気でやれ」

「ガンスロット、この雷は速いし、当たったら確実に動きが止まってしまうわ!」


 当たったら間違いなく数秒は身体が痺れて動けなくなり、大きな隙を見せてしまうことになる。

 ガンスロットが魔王になった時に、ガムロの身体が普通の獣人よりも頑丈になったが、この雷は受けたら数秒は動けなくなると本能が教えてくれたのだ。

 だから、ガムロは必死に避けてナルカミの隙を探っているのだ。




「こっちもだぞ。ナルカミ、様子見は充分だろ? さっさと終わらせろ」

「グルゥ!(はい!)」


 ナルカミも様子見をしていてこの雷は本来の雷ではないのだ。




「く、やっぱり上があるか。出させてたまるか!! ”土杭ドルドン”、『増加者フヤスモノ』発動!!」


 今の雷でも厄介なのに、さらに上があるとわかったので出させるわけにはいかないガムロは、土魔法に、希少スキル『増加者フヤスモノ』を使った。

 一つの”土杭ドルドン”を発動し、続けて同じような土杭を次々に作り出してナルカミに打ち出していく。




「グルゥ!(この程度!)」


 ナルカミの角に雷が溜められ、一斉に周りに向かって放出された。

 土杭は凄まじい衝撃がある雷で全て撃ち落とされていた。




「やっぱり、相性が悪いな!!」


 ガムロは数、量で攻めるタイプであり、希少スキルの『増加者フヤスモノ』が増やせるのは数、量だけで、質は増えないのだ。

 つまり、一つ一つの威力はそんなに高くはなくて威力のある雷に負けてしまうのだ。




「グルル、グルゥゥゥ!!(もう、終わらせる!!)」


 また先程と同じように角に雷を集める。だが、色が変わっており、黒い雷になっている。

 その危険に気付いたのか、ガンスロットが叫んだ。




「ガムロ!! すぐに降参しろ!!」

「っ!! まっ…………」


 ガンスロットからの叫びを耳にし、すぐ降参をしようとしたが、遅かった。






「グルゥゥゥ!!(”雷豪ディオス”!!)」




 角に集まっていた黒い雷が角の形に変え、大きさは五メートルぐらいになっていた。

 その大きさで先程の普通の雷よりスピードがあって、ガムロが降参する暇もない程だった…………






 ドバァァァァァァァァァン!!






 大きな音が鳴り響き、ナルカミの技はガムロに向かって一直線に向こうの壁を破壊するまで行ったのだ。

 その直線上にいたガムロは…………






「そんな…………」






 ガンスロットは呟いだ。そう、ガムロは塵一つも残さずに消え去ってしまったのだから…………




 その様子を見ていたミディは、ガンスロットの配下が死んだのに、楽しそうに笑顔で見ていたのだ。




「これ程とは、未来が楽しみになったのは久しぶりだな!!」

「ホホッ、さすがゼロ様の配下ということですな!」


 ロドムもミディと同じように笑顔だった。その様子にガンスロットは怒りが沸きそうだったが、今の敵はミディ達ではないのだ。

 ガンスロットは荒くなった息を落ち着け、ゼロを見ると…………




「よくやった。だが、ナルカミの本気を見せられる程の敵じゃなかったな」

「グルゥ……(うん……)」

「……よしよし、ナルカミは悪くないよ。弱かった犬っころが悪いだけだから……」


 いつの間にか、レイは観戦席から降りていてナルカミを撫でていた。

 ゼロは褒めていたが、勝って当たり前ような表情をしていた。


 その様子にガンスロットは我慢ならなかった。




「き、貴様は……」

「何を怒っているんだ? お前が挑んできたんだろ。まさか、無傷で勝てると思っていたのか?」

「くっ……!」


 睨んで来るガンスロットに気付いたゼロは正論を説き、黙らせる。

 ガンスロットは今までやってきた仲間が降参する暇もなく、消されてしまい、さらにゼロ達の暴言に怒りに身体が震える。

 今すぐにゼロ達を殺したいぐらいに…………




「落ち着け、まだ貴方の番じゃないだろ?」

「ホホッ、次は二番手になりますな。ゼロ様の方はどうしますか?」

「……変わる」


 ナルカミを撫でていたレイが手を挙げて答えていた。




「ふむ、次の敵ではナルカミを楽しませるのは無理だろうな。レイ、すぐに終わらせてガンスロットと戦ってやれ」

「……了解……」


 レイはグッと親指を立てる。ナルカミは観戦席に上がり、レイは真ん中辺りに向かおうとするが…………




「……待て、ミテラは降参する」

「ガンスロット!?」


 ガンスロットが戦う暇もなく、ミテラは降参させると言ってきたのだ。

 確かに、一番手と二番手は降参が認められているが、まさか戦う前に降参させるとは。




「私はやるわよ!! ガムロの仇を……」

「その女性はそう言っているんだが?」


 ミディがガンスロットに聞いてくる。ミディは戦いを観戦するために立ち会いを受けたのだ。

 まさか、戦う前に降参させるなんて萎えるようなことは好きじゃないのだ。




「……簡単なことだ。ミテラじゃ、その子に勝てない。それどころか、瞬殺だろう」

「なっ……」

「ミディ君も瞬殺で終わったらつまらないだろ?」

「む……、確かにな。瞬殺されるなら出すなと言うな」

「だろ? 俺は勝ち目のない戦いに友を無くしたくない。ガムロの時は遅かったが……」


 実は、ガムロではナルカミ相手では勝てないと感じていた。だが、もしかしたら……と希望を抱いてしまったのだ。




 そして、結果は見た通りだった。




「だから、俺が戦って勝てば良かっただけだったのだ」

「ふむ……、ゼロはいいか? その女性を降参させても?」

「構わん。俺の目的はガンスロット、お前だけだからな」

「…………簡単にやらせるつもりはない。まず、その子を倒してからだ」


 ガンスロットはゼロとの会話を打ち切り、レイが待つ場所に向かう。




 ミテラと呼ばれている女性は戦力外にされたが、ガンスロットが勝つと信じて祈る。

 ゼロはいつもの声で会話をする。




(予定が変わったが、後はお前の好きなようにやれ)

『……うん、必ず勝って戻る。お兄ぃの目的のために!!』




 次はミテラが降参することになり、ナルカミはレイと交替したことで、魔王ガンスロットとレイの戦いになったのだった…………







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