第九十三話 決闘場所
決闘を挑まれたゼロ達は早速、ロドムの案内でミディの元に向かうことに。
ゼロが連れていく者はレイ、ナルカミ、フォネス、マリアだけだ。
他の者には拠点の守りを命じている。
「まさか、ミディは今、ここの近くにいるのか?」
「いえ、転移出来るナガレと待ち合わせしていますので、ナガレのいる場所に向かいます。ミディ様がいる場所は未踏地であり、足で向かうには少し遠すぎますので」
「そうか、もうミディはガンスロットと一緒に決闘場所で待っているわけか?」
「ホホッ、あっさりと決闘を受けてくれるとは思いませんでしたが、ミディ様は確実に受けるとわかっていたようで、もう今は準備を終わらせているかと」
「成る程……」
いきなり決闘と言われたからすぐにではなく、日程が開くと思っていたが……、ミディはもうそろそろ準備を終わらせるのですぐにやることになったのだ。
決闘のルールを簡単に聞いているので、連れていく人数は少なめにしている。
「三対三ねぇ、向こうは配下が少ないのか?」
「はい。魔王ガンスロット様は魔物を配下にはしていません。そして、世界を回るには少数の方が動きやすいのでたった二人しか配下を持ちません」
ガンスロット・ジ・ノールドは魔王でありながらも、人間の味方をしており、配下も魔物はいない。
ロドムの話では、配下は前からパーティを組んでいた人間と獣人と教えてくれた。
人間や獣人だとしてもガンスロットから力を与えられており、特別な力を持ってガンスロットと一緒に魔物討伐をしているようだ。
『……人間の魔王ねぇ、人間から魔王になったらどのくらいの力が付くのか気になるね……』
(戦えばわかるだろうな。まぁ、見てみないにはわからないだろうな)
レイは情報があれば能力の限界を超えない限り、何でも解析が出来るが、まだ会ったことも見たことがないと解析は出来ない。
百聞より一見にしかずと言う言葉がピッタリだろう。
「ホホッ、そろそろ待ち合わせ場所に着きます」
「そうか」
ロドムが言う待ち合わせ場所にはナガレが立っており、転移の準備はもう終えていた。
挨拶だけにして、すぐにミディの元へ転移したのだった…………
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ここは、ゼロも踏み込んだことはない場所であり、荒地のようで周りには魔物の反応がなかった。
コロシアムみたいな形になっており、周りは岩で出来た壁に囲まれていた。
半径100メートルほどの広さがあり、戦う分には問題はなかった。
「ふむ、あの囲んでいる岩の壁は作ったってとこか?」
「ええ、魔法で作ったようですな。これだけでは耐久性が低いので、さらに結界で囲むかと思います」
確かに、魔王と魔王の戦いではこの程度の耐久性では心配もあるだろう。
周りを見ていたら、もう少し先には数人の人影が見えたのだった。
近付くと、その中にはミディもいた。後、ミディの側で佇む女性は角があり、魔人だとわかったのでミディの配下だとすぐにわかった。
なら、残った三人がゼロの敵である魔王ガンスロットとその配下になるだろう…………
『……あの長身の男、魔王ガンスロットだね……』
(ああ、魔王らしくの貫禄を感じたな。他の二人も強いとわかる)
『……ふふっ、楽しみ。どれだけやれるか……』
レイはやる気満々だった。この三対三ではレイも出る予定であり、後はナルカミとゼロになる。フォネスとマリアは護衛のために着いてきたのだが、一番の目的は他の魔王の実力を見せることだ。
エキドナとの戦いを見せることが出来なかったし、危険だったから仕方がないのだが…………
だが、今は決闘であり危険は少ないのだ。
上位になる者の戦いは見るだけでも、いい経験になるのもあるからだ。
「よく来たなっ! 知らない者もいるが、全員がゼロの配下になるんだな!」
「ああ。三人だけで来ても良かったが、残った者は見学のために連れて来ただけだ。問題はないよな?」
「うむ、邪魔をしないなら構わない!」
「……で、お前が決闘を挑んできたガンスロットって奴か?」
「そうだ。俺はガンスロットと言う。急に決闘と言ってすまないが、お前達のやることに目を背けることは出来ん」
見た目は人間て変わらない姿で、青い騎士の鎧を着ており、ダンディな顔をしている。
だが、普通の人間が出せない威圧感を纏まっていることから魔王だと理解させられる。
急に挑んできたのを謝ってきたが、ゼロ達を逃がすつもりはないと言っているようだった。
「はっ! お前達は俺の目的の邪魔になりそうだから、決闘を請けてやっているから気にすんな」
ゼロはゼロらしく挑発をし、敵を観察する。
「……自信はあるのだな。ミディ君、頼めるか?」
「ふふっ、面白そうなこと、見逃せるわけないだろ。よろしい、私の下で決闘を見届ける。思うように戦えっ!!」
詳しいルールの説明をしてきた。
三対三の決闘と始めに聞かされたが、六人が同時に戦うわけでもなく、一対一の勝ち抜け戦でやるようだ。
最後は必ず魔王と決まっており、勝った者は次の敵と戦えるルール。
勝利条件は、相手が死ぬか、気絶してしまうか、降参して負けを認めるのどれかになる。だが、最後の魔王だけは死ぬまで戦うことになり、気絶や降参は認めない。
ルールはそれだけだったのでわかりやすいと思った。
『……つまり、魔王はどちらか必ず滅ぶのね』
(ああ。俺は負けるつもりはないが、降参が認められているなら、悪戯に配下を減らすことはないのは助かるな)
場合によっては配下の二人は降参して、魔王であるゼロだけで三人を纏めて潰すことも出来る。
そんなことにはならないがな…………
「問題はあるか?」
「ないな」
「いいえ」
両魔王が了承して、ミディは側で佇む女性に命令を出していた。
「ここら辺を外から拒絶せよ」
「はっ! 『拒絶者』発動!」
大人しめで和風の女性だと感じられる女性の魔人は、能力を発動して、コロシアムの外と拒絶と言う結界で外にはダメージがいかないようにしたのだ。
(ふむ、ここは異空間になった?)
『……うん、コロシアムごと結界に閉じ込めたみたい。……さらに外には何も影響を与えないというのもあるね……』
コロシアムの広さを考えると、凄まじい広さを結界に閉じ込めるなんて、あの女性は凄い実力を持っているのがわかる。
「さて、始めようじゃないか! 両側、一人を残して観戦席に向かうぞ!」
そういって、壁の一部だけに座って観戦が出来るように作られている場所に向かったのだ。
「一番手はナルカミだ」
「まず、ガムロ。お前からだ」
「グルッ!」
「任せろ!」
両側が一番手を指名して、他はミディに着いていく。
ナルカミの相手になるのは、狼の獣人であるガムロだ。
「お前が相手か、黒い鱗? 何者か知らねぇが、負けるつもりはねぇ!」
「グルゥゥゥ!!(こちらこそ!!)」
ナルカミのことを何者かわかっていないが、ガムロは誰であろうが、全力でやるようだ。
ここで一番手のナルカミ対ガムロの戦いが始まったのだった…………




