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第九十一話 黒い聖獣


 卵から頭を出してキューと鳴き、こっちを見てくる黒い動物のようなのがいた。

 この卵は聖獣から託された物であり、ゼロが魔素を沢山注ぎ込んだらすぐに産まれたのだった。




「キュー!」

「黒い……? 身体は麒麟みたいだが……」

「黒い麒麟は初めて見ました……」


 黒い鎧のように鱗がビッシリと纏まっており、牙はもう生え初めており、鋭かった。

 今もゼロに掴まりながらだんだん大きくなっていた。まだゼロは魔素を送っていたからだ。

 そして…………




「わぁっ、ゼロ様と同じぐらいの大きさになりましたね!」

「それはいいが、重いな……」

「キュッ!?」


 慌ててゼロから離れるように降りる黒い麒麟。立派な角があるが、顔はゼロから見ても可愛らしいと思う。

 麒麟は馬に近い姿なのに、牙もあり角が生えている聖獣なのだ。

 ゼロは名前を付けなければならないなと考える。




『……名付けしたら、さらに強くなりそう……』

(今のままでも強いんだよな。まぁ、俺の魔素を吸収したんだから、当たり前か)


 産まれたばかりなのに、魔素量は結構多くて角から雷がバチバチと音を鳴らしていた。

 それを見れば、麒麟は雷を扱う聖獣だとわかるだろう。




「名付けと行くか。お前は『ナルカミ』だ」


 名付けをすると、やはり魔素がナルカミと名付けられた黒い麒麟に吸収されていく。




「キュゥゥゥ!!」


 黒い鱗がさらに磨きがかかったように、強度が上がって黒い角は白い模様が螺旋状に彩った。

 魔素量だけなら配下達の中でも一番のように感じられた。




「ほぉ、予想外だな。産まれたばかりでここまで強化されるとはな……」

「凄い……」

「また大きくなりましたね……」

「大きい!」

「ククッ、さすが我が神のペットにピッタリな聖獣になりましたな!!」

「おー、アタイより強そうだ」


 まだ魔王の間に残っていた配下達がそれぞれの感想を言ってくる。




「キュー!」

「凄く強くなりやがったな……、って喋れないのか?」

「キュゥッ……」


 ナルカミが落ち込むように俯く。

 言葉を話せないが、こっちの言葉を理解しているようだ。

 死んだ聖獣は話せたのに、何故この子は喋れないんだろう?




『……あ、念話をしてみたら?』

(そういえば、前の麒麟は声ではなく念話だったような……)


 早速、念話を試してみた。ナルカミはもうゼロの配下となっているから念話が出来るはずだと予想して、話してみた。




『おい、ナルカミ聞こえるか?』

『…………!! 聞こえます!!』

『やはり念話だったな。俺はお前の主でゼロと言う』

『名前をありがとうございます。ナルカミ……、いい名前だと思います』

『ふむ、言葉を話せるぐらいの知識はあるみたいだな。でも、何故知識があるんだ?』

『前の聖獣の知識があります。記憶はありませんが……』

『そういう風になっていると理解した。で、お前は聖獣なんだが、俺の配下になってしまうが構わないな?』

『はい。私は聖獣ではなくて堕聖獣になっています。それに、私のために沢山の魔素を注いでくれたので貴方は私の親であり、私の全ては貴方のモノです』

『そうか。これから俺の配下だ。よろしくな』

『はい!!』


 返事の良い聖獣だなと思うゼロだった…………いや、堕聖獣と言っていたな。

 ステータスを確認してみたら…………




ステータス

 名称 ナルカミ

 種族 堕聖獣

 称号 ”魔王の配下”

 スキル

    希少スキル『堕麒麟キリン

         (超速思考・黒激雷・雷体化・威圧・雷身強化)


    通常スキル『毒・麻痺無効』、『幻覚無効』、『物理耐性』、『雷無効』、『闇無効』、『魔力察知』、『魔力操作』、『隠蔽』、『妖気操作』、『自己再生』、『空闊歩』






 となっており、雷に特化した希少スキルを持っていた。

 フォネスと似たような能力、『雷体化』があった。この能力は身体を雷に変え、物理を無効させることが出来るようだ。

 さらに『空闊歩』は空を蹴って空を走れるスキルのようだ。

 空を駆けることが出来る…………、ロマンチックだなと思ったのはゼロの秘密だ。レイにはいつものようにばれていたが…………




「皆、ナルカミは念話が出来ないから話せないが、言葉は理解している。あとでそれぞれに自己紹介しておけ」

「「「はっ!!」」」

「ナルカミ、何か言いたいことがあったら遠慮なく俺に教えろ」

「キュゥッ!!」


 よい返事をした聖獣だった。ナルカミを仲間にしたのはいいが、聖獣を倒すには問題があるのかナルカミに聞いてみた。




『ナルカミ、知識の中で聖獣のことはあるか? そして聖獣と戦うことに忌避はあるか?』

『聖獣についての知識は少しだけですが、あります。ただ聖獣は自分の居場所を作らないのでなかなか出会えません。そして、聖獣と戦うことは問題ありません。私は貴方のために戦うと決めたのですから……』

『聖獣は自由奔走な奴と思えばいいな。そしてその覚悟、理解した。俺はこれから聖獣相手に力試しをしに行くが、お前も来るか?』

『いつでも、どこにでも着いて行きます!! むしろ、置いて行かないで下さい』

『……お前は丁寧な言葉にしては思ったより甘えん坊だな?』

『はい。産まれたばかりですから』


 確かに産まれたばかりの人や動物はまず、親の愛情を求める性質を持っていたな。

 って、聖獣って親はいるものなのか? そこがわからなかった。

 そもそも、ナルカミは男か女かわからないのだ。




『……聞いてみたら? ナルカミに……』

(そうだな。わからないなら聞けばいいしな)


 とにかく、今日は色々なことがありすぎたから聖獣探しは明日からにすることにした。




「……よし、フォネス、マリア、シル。また明日からもう一回探しに行くぞ。もちろんナルカミもな」

「キュウッ!」

「わかりました」

「明日からですね」

「自分も一緒〜」


 シルはドワーフ村への案内があったから一緒に行けなかったが、明日からは予定がないから一緒に連れていくことにした。




「よし、クロトとミーラはやりたいことがあれば明日から自由に行動してもいい。また指示があれば念話で出すからな」

「「はっ!!」」


 それぞれに指示を出して魔王の間から出ていく配下達。

 ゼロはナルカミから情報を話してもらっていた。






 ちなみに、ナルカミは女性というか、雌だった。異性は産まれた時から自分で選べるみたいで、ゼロが男だとわかり、ナルカミは雌を選んだようだ。

 ゼロは何故? と思ったが、そこは教えてくれなかったから気にしないことにした。




 レイだけは気付いたようで、『……やはり、お兄ぃは鈍感で、間違いない……』と呟いていたのだった…………







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