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第八十八話 念話



 空も明るくなり、ゼロ、フォネス、マリアは聖獣を倒しに行くべく、外に出ていた。

 だが、一人だけ確実におかしかったのだ。






「ふふ〜ん、ふふっ♪」

「…………」


 おかしくなったというより、今まで見たことがないぐらいに上機嫌のフォネスだった。

 間違いなく昨日の夜のことを思いだし、口が緩んでいるだとゼロにはわかっていた。

 マリアもフォネスがおかしいと気付いているようで、こっちを見ていた。

 ゼロが普段通りなので、ゼロ様なら何か知っているのでは? と思って、おかしくなっているフォネスよりゼロに聞いたほうが良さそうだと判断したようだ。


 説明を求められたゼロはただ、ご褒美をあげただけだと答えてやったらマリアはフォネスを羨ましそうに見ていた。




「ずるいです……」


 マリアもご褒美が欲しかったようだ。

 まず、フォネスを正気に戻すためにデコピンをした。ドバァッ!と聞こえてはいけない音が額から出ていたが気にしないことにして続けた。




「正気に戻れ」

「はぃぅ……」

「それからマリア、ご褒美が欲しいんだな?」

「…………はぃ」


 何を考えているのか、顔を朱くするマリア。

 これから聖獣を倒しに行くから、ご褒美はすぐにはいかないから、今回の聖獣との戦いで頑張ったらご褒美をやると言ったら…………




「頑張ります!!」


 マリアはやる気が上がったようで、フォネスもモジモジしながら聞いてきた。




「あ、あの、私も頑張ったらいいですか?」

「ちょっと待って! フォネスだけ二回とかずるくないですか?」

「ゼロ様からのご褒美は何回も欲しいの!」

「マリアもだよ!!」




 ギャーギャーと騒ぐ女性の二人。

 ゼロは大人しくなるまで放っておくことにした。

 その間にゼロはレイと会話していた。

 内容は昨日の夜に起こったことだ。




『……このスキル、お兄ぃが生まれてスキルを持っていたのを除くと……、初めて自力で発現したスキルだね……』

(ああ、そうだな。それが『信頼者ツタワルモノ』か……)


 昨日の夜に発現した希少スキル『信頼者ツタワルモノ』。

 その能力とは、ゼロが手に入れた情報を配下達に伝えることが可能になったのだ。

 どれだけ離れていようが、その情報を念話で伝えられると、便利な能力なのだ。ゼロが指定した配下、向こうも念じるだけでゼロと会話出来るのだ。

 この世界では、携帯やパソコンなどのような情報を伝える物が少ないのだ。魔道具で情報を交換できる物があるが、二つで一対になっている。

 さらに数も少ないので、持っているのは王様でも二人か三人程度しか持ってない。

 それらはマリアに聞いた情報だが…………


 で、『信頼者ツタワルモノ』は向こうからは会話程度の情報しか送れないが、ゼロからは様々な情報を送ることが出来る。

 ただ、メリットばかりではない。送る情報が多過ぎてしまうと、向こうの頭がパンクしてしまい、廃人になってしまう可能性もあるのだ。だから、ゼロは会話程度に使い、後はレイがパンクしない程度の情報に絞って送ることに決めたのだった。


 これで、ゼロが手に入れた情報を配下達と共用出来るようになったのはありがたいと思うゼロであった。




(情報の管理、受け渡しは任せるぞ)

『……任せて、情報なら私の領域……』


 さすが、情報を操作するスキルに進化させたレイにはこの程度なら朝飯前のようだ。

 早速、まだ言い合いをしている二人に念話で話し掛けたのだった。




『おい、いつまで言い合いをしている?』

「…………え、頭の中にゼロ様の声が……?」

「…………マリアも聞こえました」

『テストだ。俺に話すように言葉を念じてみろ』

『……と、届いています?』


 まず、フォネスが念話で会話をしてきた。聞こえてきたので、指で丸を作ってやる。

 このサインはマリアにもわかるように見せてある。

 フォネスだけに向けているからマリアからはまだ来てないと教えてやった。




『…………むむっ、聞こえてますか?』

『お、時間が掛かったが、届いてるぞ』


 マリアにも丸を向けた。

 何故、指で丸を作って見せるのかは、フォネスとマリアはお互いの声が聞こえていないのだ。

 つまり、ゼロは配下となら誰でも会話出来るが、例えばフォネスとマリアが会話をしたくても出来ないようだ。


 これはゼロが『信頼者ツタワルモノ』を持っているから出来たことなので、それは仕方がないと思う。






「よし、テストは終わりだ」

「ゼロ様、もしかして新しいスキルですか?」

「ああ、昨日の夜に発現したから試したわけなのだ。お前達は会話しか送れないが、こっちからは会話だけではなく、様々な情報を送れるからな」

「そ、それは便利ですね!」




 その後も、道中で念話での会話の練習をした。また一つわかったことがあった。

 必ずゼロから念話をしないと向こうからは念話を送れないことがわかった。


 もし配下達が何か情報を得てもすぐにゼロに情報を送れない。ゼロから念話を送らない限りはな…………




「成る程、この能力はほぼ一方的だな……」


 能力の検討も終わり、これから一週間は聖獣を探すことに集中する。

 何故、一週間と決めておくのかは、クロト達が帰ってきたらその連れがいるから一度は対面が必要だと考えたのだ。


 さて、前のユニコーンみたいに力を隠していなければ、すぐに見付かるだろうが…………






「ちっ、三キロ先まで『魔力察知』を広げたが、ただの魔物しかいないな」

「三キロですか……、私はまだ一キロまでです……」

「マリアなんか800メートルよ?」

「索敵は俺がやるからザコが襲い掛かってきたら任せる」

「「はっ!!」」


 ゼロは『魔力察知』に集中するために魔物は二人に任せることにした。

 ゼロ達は今、まだ人間の開拓地だが、あと少しすれば、未踏地に着く。

 人間の開拓地での聖獣目撃が少ないことから未踏地の方が見付かる可能性を考え、未踏地に向かっているのだ。




(どんな聖獣に会えるか楽しみだな?)

『……うん、またユニコーンもいいけど、龍も見てみたいね……』

(龍か、ドラゴンではなくて長い奴だよな?)

『……うん、本物を見てみたくない?』

(それは見てみたいな。ゲームや漫画とかに出る魔物もいるから多分、いるんじゃないかな?)


 前の世界の漫画、ゲームなどで出て来る魔物、ゴブリンやスライムにも出会えたからその可能性も高いだろう。




 ゼロはわくわくしながら『魔力察知』を広げながら先にどんどんと進むのだった。

 スピードが上がったため、二人は慌ててスピードを上げるのだった…………







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