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第八十三話 レイの身体









 ミディ・クラシス・ローズマリーが開いた魔夜祭フェスティバルから一週間が経った。






 魔夜祭フェスティバルで何か起こったのか? は…………否だった。


 ただ食事をして話し合うだけだった。

 内容は最近、何か面白いことがあったか、自慢話ばかりで実になる物は凄く少なかった。

 話を聞いて楽しんでいるミディの様子を見るには、これが魔夜祭フェスティバルの姿だと理解させられたのだ。




 まさに、暇潰しだった。




 というわけで、自分の番になって自分が生まれてからまだ半年も経ってないと話したら、他の人は「はぁっ!?」と驚かれたのだ。


 初めから『魔王の証』を持って生まれた者は魔王となるが、持っていなかった者が生まれて半年以内で魔王になったというのは初めてらしい。


 自分の能力を話さないように話を続ける。

 街に潜入して冒険者をやったり、村や街を潰したり、エキドナと戦って勝ったなど話したら大層に驚かれた。

 エキドナから『魔王の証』を奪ったことが一番驚かれたみたいだ。

 事情を知っているミディ以外は生まれたばかりで弱い魔王成り立ての魔人から奪ったかと思われたようだ。


 エキドナは百年以上、魔王をやっている強者なのだ。それが生後半年もないゼロが倒すなんて、驚愕なことだっただろう。

 ミディだけは目をキラキラしていて喜んでいたが…………




 …………まぁ、そんなことがあったが、戦いとかはならなかった。

 魔夜祭フェスティバルはただのパーティーだと考えた方が良さそうだ。




 話が変わるが、ミディ・クラシス・ローズマリーの能力については、まだ謎だらけなのだ。

 使ってきた『魔幻鏡ファンタジック』は希少スキルでミディにとっては遊びのために使っていると認識がないと思えた。

 つまり、まだ強いスキル、ゼロやエキドナみたいに王者能力キングダムスキルを持っている可能性が高い。

 いや、ステータスが全く見えなかったことに、それ以上かもしれない。


 そして、『魔幻鏡ファンタジック』のことだが、レイが時間をかけて解析してくれたので何故、幻覚を無効出来るはずのフォネスが幻覚を見せられたのかわかった。

 といえ、簡単なことだったのだ。


 あれは幻覚ではなく、思い込みだったのだ。

 『魔幻鏡ファンタジック』の全てを知ったわけではないが、あの能力は相手に思い込ませる能力であり、思い込ませられたら目にも映ってしまう程なのだ。


 ミディがやったことは、相手が今まで出会った敵で一番強いと思った者が王座に座っていると思い込ませたと推測する。

 さらに能力が発動したら、まだ会ったことがない者も見えなくされてしまっただろう。

 あの時はミディだけではなく、他の魔王の姿がなかったことからその可能性もあるだろう。




 思い込み……、幻覚のように敵から見せられると言うより、自分が思って見えただけなので、フォネスもエキドナが見えただろう。

 ヨハンは何が見えたのかは聞いてないが、気にしなくてもいいと判断する。




(さて、あのパーティーで得たモノは少なかったが、何人かの魔王を見れただけでもマシか)

『……うん、今はこれを先に終わらせよう……』

(そうだな。レイにとってはようやくだしな……)




 ゼロは死体改造室に一人だけで立っていた。

 目の前にはある死体があった。


 そう……、最近に手に入れたあのエキドナ・キス・スカーレットの死体だ。




(レイの提案、成功するかわからないが、やるだけやるがいい)

『……うん、成功したらお兄ぃの力になれる……』




 レイがやりたいと言ってきたことは…………






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






『……成功、成功したっ!!』

(やったな!)




 二人は喜びを分け合っていた。

 レイが実行したことは成功したのだ。目の前には、エキドナ・キス・スカーレットの死体ではなく、一人の少女の身体があった。




「くくっ、一緒に世界を征服しようではないか。レイ(・・)……」






 その言葉で目を覚ます少女。

 髪は銀と青が混ざったように綺麗なロングヘアーで、服はただのワンピースだが誰が見ても美少女だと認めるだろう。

 瞳は右が金で左はエキドナと同じ緋色だった。




「身体の調子はどうだ?」

「……少し、慣れてないから動きにくいけど……、大丈夫……」


 目の前の少女から、いつも聞いている声が耳に届く。その喋り方、そう…………




「我が妹よ、ようやく抱きしめるな……」

「……お兄ぃ、……うん……」


 この身体はレイのモノになったのだ。

 だが、スキルが身体に移って動かしているわけでもない。




『……動かせたけど、話すのは、こっちの方が楽……』

(そうだよな。ずっとこっちで話していたから、向こうから話されても違和感があるみたいだな)


 レイは身体に完全に移ってないのだ。

 ゼロとレイの新しい能力である『零式王レイディウス』にある『並列意識』の能力でレイはゼロの中にいながら新たな身体を動かしているのだ。

 二人分の情報を脳に詰め込まれるが、レイにとっては処理は簡単なことなのだから、ゼロの中にいても身体を動かしたり話したり出来るのだ。

 勿論、能力の実行も…………




(なぁ、新しいスキルを試した方がいいんじゃないか?)

『……そうだね。宣戦布告も含めてね……』

(俺が魔王になったことを教えてやるってことか?)

『……うん、駄目?』

(……いや、構わない。俺達は強くなったんだ。それを教えてやるのも面白いだろうな)

『……うん、宣戦布告は任せて……』




 次の方針は決まった。ゼロとレイは早速、死体改造室を出て配下達を集める。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「皆、集まったな?」

「はい。全員いますが……」

「よし、まず紹介しておこう」


 王座に座っているゼロ、ひざまずく配下達。

 それだけではなく、ゼロの膝に座っている少女がいた。

 紹介したい者は膝に座っていて無表情で配下達を見ている。


 返事をしたフォネスはただの配下を膝に座らせるとは思えなかったので、気になっているような表情をしていた。

 少しジェラシーが入っているかもしれないが…………




「この少女、クロト達と同じ死体集合体だが……、名前はレイで、俺の妹になる」

「…………え?」


 やはり、驚くことだったなとゼロは配下達を見回す。説明はまだ終わらず、続ける。




「俺が転生者であることを知っているな? あの時は妹がいたのだ。その妹がここに入っているから妹と言ったわけだ」

「そ、そうなんですか。そんなこともお出来るんですね……」


 マリアの表情はまだ驚いているが、なんとか声を出していた。

 マリアが言いたいのは妹だった者の魂はどうやったんだ? だろう。

 そこも簡単に説明してやった。

 ただ、俺が生まれた時から妹の魂をずっと持っていたからと説明してレイはスキルだと話してない。


 今まで生きてきたが、まだレイ以外の生きたスキルを見てないから話さない方がいいと思っただけで、配下達を信じてないからではない…………






「まぁ、そんなところでいいだろう? レイは死体集合体を纏める存在だと思えばいい」

「「「はっ!!」」」


 新人がリーダーになるというのは普通なら納得出来ないだろうが、ゼロの命令なのだから逆らうことなんて有り得ない。

 死体集合体達にとっては実力があれば、問題はないと思っているのだ。




「次の方針は決めてある。全てはレイがやるから皆はその戦いを見て理解するだけでいい」




 ようには、レイの実力を配下達に見せるために街を一つ潰すということだ。

 潰す街とは…………






「メイガス王国だ」






 今まで放っていた王国、ついにゼロ達の目標にされたのだった…………







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