第八十一話 この一週間で
ゼロ達は自分の拠点に戻っていた。
魔王の集い、魔夜祭の招待があったが、すぐに始まるわけでもなく、ロドムは一週間後と言っていた。
ただ、強制ではなくて参加するかは自由らしい。
集まる魔王達は多くても4〜5人程度で全員が集まったことはないと。
ロドムの話では魔夜祭はミディ・クラシス・ローズマリーが開く宴であり、主なりの暇潰しと…………
そりゃ、魔王全員が集まらんわなぁと思うゼロだった。
ロドムから詳しい話を聞き、一週間後に転移を使える仲間と一緒にゼロの拠点の前まで迎えに行くから参加するか否か聞かせて欲しいということ。
というわけで、ゼロは集めた死体を死体保存室に放り出し、強化された仲間達の戦力を確認したり、ダンジョンを拡張したりしていた。
もちろん、ゼロは参加する予定だ。どんな魔王がいるのか気になるし、一番の興味はミディ・クラシス・ローズマリーにある。
暇潰しといえ、魔王を集めて宴を開くだけなんて普通はないだろう。
何かあると考えるが、興味が勝ち、最強魔王と呼ばれるミディ・クラシス・ローズマリーを一目は見てみたいと思ったのだ。
……とりあえず、この一週間は色々あったのだった。
ヨハンからジガルド街にて勇者パーティが現れたと報告があった。
しかも、ヨハンが出向いたため首謀者がゼロだと確実にばれたかもしれないとヨハンが謝罪してきた
ゼロは別に今更ばれても問題ないと考えていた。
今は拠点を持っていて魔王になれたから人間の街に戦争以外で行く理由がないのだからだ。
次に、拠点の拡大をして今は地下10階までは出来ている。
入口を幻覚で隠しているからそんなに階層はいらないのだが、レイがやるのが楽しいというように、改造しまくっていたのだ。
もしもの時に役立つから好きにさせていた。
一週間で一番嬉しい出来事が起きたのだ。
それは…………
米だっ!! ご飯が食べれる!!
ソナタに任せていた食糧係で、帰ったら稲が出来たと報告があり、目の前には米俵が置いてあったことにゼロは感動を覚えたのだった。
ソナタも元日本人なのでワクワクとすぐに食べたそうだった。
今は働き手がソナタとガルムだけなので規模はまだ小さいが皆で食べれる量は出来ていた。
あと人手を増やして米を沢山作れるようにしたいと思うが、その目処は立っていない。
ソナタの『自然幻想』で作られた作物は育つのが早いから人手が少なくても今の人数分はすぐに作れるが、保存食も作っておきたいので少しは規模を大きくしたいと思う。
まだ人手の目処が立たない今は、仕方がないのでこのまま変わらずに継続させたのだった。
そうしてゼロ達は一週間過ごしたのだった。エキドナなどの死体にはまだ手を付けていない。
レイがダンジョン作成に夢中だったのもあるが、他の魔王の実力を見てから造るのがいいだろうと考えたのだった。
そして…………
「ホホッ、迎えに来ました。その前に参加致しますか聞いてもよろしいでしょうか?」
「答えは決まっている。参加させて貰おう」
「ホホッ、良かったです!」
拠点でのんびりしている時に、入口辺りで二つの反応を察知した。
一つはよく知っているロドムのだったから、もう一つは転移を使うものだと理解した。
前もって、魔夜祭に連れていく者を決めていたフォネスとヨハンを連れて入口に向かった。
魔夜祭に連れていける腹心は二人までと決まりがあったのでゼロが選別したのだった。
フォネスは配下の中で対人戦なら一番の実力を持っていて、ヨハンは自分以外の魔王を見て何かの研究に役立てるかもしれないと思って連れていくことにした。
他の人はお留守番で拠点の守りを任せることに。
ついでにソナタの手伝いも頼んでおいた。
「ホホッ、こちらは転移を使える仲間です!」
「……貴方が新しい魔王か。確かに見ただけで実力者だとわかる」
「ホホッ、そうでしょう?私が見付けた強者です。配下にならないのは残念ですが、後が楽しくなりそうなので良しとしましょう!!」
「まぁ、ロドムジジィはいつもの通りだから無視していいぞ。連れていく者はもう決まっているみたいだし、すぐに転移するか? ああ、俺はナガレと言う。今後もよろしくすることがあれば、よろしく頼む」
「ああ、俺は魔王になったばかりのゼロだ。その後は何が起こるかわからないが、そうなればよろしく頼むな」
軽く自己紹介を終わらせ、ナガレは転移陣を広げ、ゼロ達を含め5人の転移の準備をする。
自分だけなら陣なしですぐに発動出来るが、5人も転移させるなら陣も必要で時間がかかる。
ナガレは慣れているからなのか、僅か3秒で転移の準備を終わらせるのだった。
「衝撃があるかもしれないから、気をつけて」
ナガレは一応、忠告をして発動したのだった…………
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
…………ここは何処かの森の中。
思ったより衝撃はなかったと思うゼロ。
「ホホッ、ここがミディ様の隠れ家の一つになります!!」
ロドムが後ろを振り返って歩いていくと、ただの森だった所に歪みが生まれて、その姿を現すことになった。
「結界の一つさ。ここは光の屈折を使って隠している」
「へぇ、ここが隠れ家の一つなんだな」
「ああ。ここは客を招待したり、魔夜祭のためにある屋敷さ」
ミディ・クラシス・ローズマリーの拠点は一つだけじゃないようだ。
目の前の屋敷はエキドナが住んでいたお城ほどに広くはないが、ちゃんと整備されているのか、不快とは思わなかった。
何処かの令嬢が住むような屋敷に見えたが、中に入ったら想像とは違うものがありそうだなと考えるゼロ。
そのまま、案内されて中に入っていくゼロ達。
パーティで使うような場所、その扉まで案内され、途中の廊下やエントランスには変わったものはなかった。
扉が開かれ…………、向こうにある王座のようなとこに目が付いた。
そこが一番異常と感じたのだった。
「ようこそ、我がの屋敷へ」
すぐに歓迎の言葉を聞くことになったが、ゼロは全く聞いてなかった。
「…………は?」
何故なら、王座に座っていたのは、ゼロが倒したはずのエキドナ・キス・スカーレット本人だったのだから…………




