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第七十八話 魔王誕生



 エキドナを真っ二つにしたゼロは息を着いて地上に降りる。

 普通なら真っ二つにしただけならエキドナは致命傷にならないだろうが、ゼロはさっきのお返しとして、回復出来ないように、エキドナの身体に書き換えを行ったから回復はせずに魔素が流れ出ていく。

 エキドナは魔力を使い果たしたが、身体を構成し、自己再生するための魔素はまだ残っていたから流れ出ているのだ。

 このままならエキドナは消えるだけだが…………






「ははっ! まさか、我が負けるとはな!!」






 真っ二つになりながらも、笑いながらゼロを賞賛していた。

 ゼロはその姿に死が怖くないのか? と思ったりしていた。




「おいおい、死が怖くないのか? それとも……」

「いや、我にはもう手がないわ」

「…………確かにそうだな」


 まだ何かしてくるのでは? と警戒したゼロだったが、身体から流れ出ていく魔素を見て、納得していた。

 いつまでも魔素を流し続けているなら、もう手が残ってないと言っているものだった。




「じゃ、何故だ?」

「くくっ、我はもう貴方を認めているのよ? 素直に賞賛を受け取ればいいのに」

「ふん、俺は疑い深いからな。まぁいい、消える前に何か言いたいことがあるだろ? さっさと話せ」


 ゼロはエキドナが何かの話があると思い、急かせる。




「ふふっ、話す前にあの王座に連れてくれる?」

「はぁ?」


 エキドナが指を指した方向には、二つの王座があり、一つはエキドナのだが、もう一つはどんな人なのか、わからないぐらいのミイラが座っていた。

 初めからあのミイラは何なのかわからず、警戒していたが、ただのミイラだったと直ぐに気付いて意識から消えていたのだ。

 エキドナはあの王座に連れて欲しいと言う始末だ。

 真っ二つにされているのに、目には恨みも見えず、それどころか親しみを覚えるような眼差しを向けていた。


 だから、賞賛していたのは本当のことだと納得して、すぐにエキドナの手を持って王座まで連れてやった。




「引きずるなんて、酷くない? 死体に鞭を打って楽しいの?」

「阿呆か、連れていってやるだけでも感謝し足りないぐらいだぞ? しかも、お前はまだ死体じゃねぇだろ」


 そう言ってズルズルとエキドナを引きずってミイラがある王座に載せる。




「貴方は間違いなくドSだよね……」

「まだ元気があんな……、いいからさっさと話せ」

「もう……」


 確かに、愚痴を言っている暇はないのだ。

 今も魔素が垂れ流して止まらない状況なのだ。




「……で、あれはお前の男だったとか?」

「ええ、我の男よ。もう80年前に死んだけどね」

「80年……? ミイラになるには早過ぎないか……? あ、血を吸ったのか」

「そうよ、死んですぐに血を吸ったからミイラになるのは早かったわ。……で、話したいことはそんなことではないわ」




 ぼつぼつと話し始めるエキドナ。

 内容は魔王になった目的と言う物だった。




 エキドナが魔王になったのは100年前。

 魔王になる前に、今はミイラだが、付き合っていた男がいた。

 エキドナは吸血鬼だが、男は人間だった。


 エキドナには時間がないから出会いとかは簡略するが、男が生きている間はエキドナは幸せだった。

 だが、それは長く続かなかった。何故なら、吸血鬼と人間で違う所がある。

 それは、寿命だ。


 吸血鬼は血があれば、死ぬことはないが、人間は50〜70歳ぐらいで死んでしまう。

 エキドナは男と死別したくはなかった。

 だから、男が長く生きられるように色々なことを調べたのだ。


 だが、ただの吸血鬼が調べられることは少ない。

 その時は部下や配下達がいなかったのだから…………


 老衰していく男を見て、エキドナは決めたのだ。

 魔王になり、配下を集めて不老になる情報を得るために…………




 魔王になるためには、『魔王の証』が必要になることはエキドナが調べている時、偶然に見付かったのだ。


 さらに近くに魔王がいることも…………






「……で、倒せたのか」

「ええ、私が戦った魔王は王者能力を持っていなかったから、互角に戦えたわ」




 そう、エキドナは重傷を負いながらも、魔王に勝つことが出来た。


 『魔王の証』を手に入れ、魔王になってすぐに配下達を増やして情報を集めるように命令したのだ。


 そして、20年探しつづけたが、何も手がかりが手に入らなかった。

 エキドナはまだ諦めなかったが、ついに…………






「我の男は死んでしまったのよ…………」

「…………」




 ゼロは黙って聞くだけ。ゼロにとってはどうでもいいことだった、戦い合った強敵のエキドナに敬意を払って聞いているのだ。



 そして、エキドナは目的を無くしてしまった。

 蘇生はお伽話でしか聞かないので無理だと理解していた。


 魔王になった目的は男のためにだったが、それが無くなってしまい、何をすればいいかわからず、生きていただけなのだ。




 そして、しばらくして落ち着いたエキドナは次の目的を探した。

 探したのだが、男のため以上のものは見付からなかった。


 配下とも考えたが、世界を征服する、勇者を殺す、人間を全滅させるなどばかりだった。

 どれもエキドナの食指は動かなかった。




 そして、我はもう駄目だと悟ったのだ。もう生きても意味がないと…………




 分かってからの行動は素早かった。エキドナは死場所を探すことに決め、世界最強の魔王であるミディ・クラシス・ローズマリーに挑むことにしたのだ。






「なるほど……、そこでここに繋がるのか」

「そうだな。まさか、ミディ・クラシス・ローズマリーの部下ではない者にやられるとは思わな」

「ふん、俺はとりあえず協力者としてミディ・クラシス・ローズマリーの部下に頼まれたが、確かに部下ではないな」

「……でも、貴方は実力を持って、我を倒した。貴方が魔王になるのは不満はないよ。

 それに、我の男の側で死ねるのは良かったと思える……」




 段々とエキドナの声が小さくなっていく。

 死が近くなっているのだろう。




「何を目的に魔王になるのかは我にはわからないが…………、後悔だけは……するな……」

「……ああ、俺は魔王になろうとも、変わらんさ。ある目的を達成してやるさ」

「ふふっ、我は……達成出来なかったが、貴方なら……」




 エキドナから流れて来る魔素が少なくなっていく。






「あぁ……、もうすぐで貴方の元に……」






 エキドナはミイラを見て抱き着いて…………………………死んだ。




「……レイ、やってくれ」


 ゼロは散らばるエキドナの魔素を全て吸収し、エキドナ本体とついでにミイラからも残った魔素の残り香を吸いきった。




 と、エキドナの胸から紅く光る球が現れた。おそらく、あれが『魔王の証』だ。




 ゼロはその『魔王の証』を掴むと、紅い球がゼロの手の中で溶け、ゼロの体内に入ったのだ。




(っ!? 力が……)

『凄い……! 凄い情報が入ってくる……!!』




 ゼロの力が増して、また世界の声が聞こえた。






《『魔王の証』を手に入れる条件をクリアしました。成霊体レイスから超霊体モルテ進化致します》






 この世界に、魔王の一柱が死に、新たな魔王が生まれた瞬間だった…………







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