第七十五話 魔王の実力
はい、どうぞ。
フォネスがナーズにトドメを刺し、塵となって消えた後…………
「まさか、ナーズがやられるとはね……」
「そう言うお前は悲しそうに見えないな?」
「我はもう200年も生きているのよ? 死なんて、何度も見たか……、お前にはわかるか?」
「知らん。で、お前は200年も生きてきたのか」
ゼロはいつでもゼロだった。
「ははっ、『知らん』か。ああ、魔王になったのは100年前だが、これでも我は魔王の一角だ。まだ生まれても間がない若者に負けるつもりはない!!」
エキドナは今まで本気を出してなかった。
水、雷魔法に剣技を見せただけで、魔王としての実力は未だにも見せてなかった。
それがたった今、発現された。
「我の力を見せてやる! 王者能力『緋閻王』をな!!」
”緋眼の女帝”と呼ばれるようになった魔王の能力、王者能力『緋閻王』。
ゼロも初めて見る王者能力、それが発現された。
(王者能力だと……?)
『……初めて聞く。王者、希少スキルより上だと……考えた方がいい……』
そう、レイの言う通りに王者能力は希少スキルより上であり、世界で数少ない者しか持っていないのだ。
エキドナ・キス・スカーレットはこの力を持つのに相応しい実力を持っていることに代わりはないのだ。
魔王になったからではなく、魔王だとしても王者能力を発現出来ない者もいる。
「我のスキルよ、緋色なる物を我がの支配に置きたれ」
エキドナが右手を前に出すと、ここにある緋色の物が集まっていく。
この部屋には、緋色の物が沢山置いてあり、全てが濃縮されたように緋色だけが固まって、一つの剣が出来た。
「”緋王剣”……」
さっきみたいなレイピアではなく、緋色に照らされた大剣だった。
それを見て、ゼロはその力の一概に理解した。
(『緋閻王』は緋色なる物を全て支配に置けるわけか)
『……本体の外見で変わったことは目が、緋色になっただけ……』
(外見はな……)
まだ能力の全てを理解したわけでもないので、すぐに判断出来ない。
外見はあんまり変わってないが、力を感じるのだ。
今のままでは勝てないとビシビシと警鐘を鳴らしているのだ。
その剣もヤバいと理解しているが、ゼロが撤退することはない。
「おい、お前らは外に出ろ」
「ゼロ様……!?」
「もう一度言う。すぐに外に出ろ! 足手まといになる」
「…………わかりました。ご無事に……」
「ああ」
最後は短く返事を返し、意識を全てエキドナに向けた。
話していたフォネスはみんなを連れ、外に退避した。
「ほぅ……、全員でかかってこないのか?」
「ああ、あいつらじゃ、足手まといだ」
「くくっ、我に一人で挑むとは大物か、馬鹿者かのどちらかだろうな」
「ふん、それはこれから見せてやる」
魔素だけで作った剣では”緋王剣”には耐えられないと考え、妖気も混ぜて強化させる。
「む? まだ力を隠していたのか?」
剣が紫の陽炎のような物が見え、それが何なのかわかってないが、力を隠していたと判断したようだ。
やはり、妖気のことは知られてないようだ。
(これでもまだ心配なんだよな……)
『……今の剣は最適化している……から、これ以上の強い剣は無理……』
(やはり、スキルにも強さがあるからその差が出来てしまっているか……)
エキドナの剣は王者能力で作られており、それに劣るスキルで作った剣ではすぐに折れそうだと感じた。
妖気で補強したといえ、向こうの方が強いとわかる。
掛かって来ないゼロに待ちくたびれたのか、エキドナが動いた。
「我の強さがわかるまで見に徹するつもりか? 少し話してやってもいいが、久しぶりの強者と戦いなのだから、楽しもうぞ!!」
先程のスピードと違って、ゼロはギリギリ見抜けるといったところだった。
「お前も力をまだ隠していたんじゃねぇか!!」
剣はまともに受けず、受け流すことに集中していた。
「近距離からは避けれるか? ”鋭突岩”!!」
近距離から土魔法をエキドナの胸に向けて撃ち出した。
「無駄よ。私は緋色を統べるのよ。それがただのドレスでもね……」
無装備で胸に尖った岩が向かっていたのだが、ドレスに触れた瞬間に岩の方が砕けてしまったのだ。
「なっ!?」
「隙を見せるなんて、まだまだねっ!!」
隙を見せたといえ、それは一瞬だったのだ。
エキドナはその一瞬を見逃ずに肩を切り裂いた。
ゼロは痛みを感じないから、呻くことはしないが、すぐにエキドナから距離を取った。
(どういうことだ?)
『……今のは、身体に触れる前に、ドレスに当たったら砕けた……?』
(緋色を統べると言っていたな……?)
ドレスを見れば、緋色ねドレスだとわかるが、エキドナが言っていた言葉に何かがあると考えていた。
緋色を統べる……? もしかして、エキドナが統べる緋色なる物が強くなる?
ではないと、魔法を防いだ術がわからないのだ。
それを仮定にして、戦うならば、緋色でない箇所を攻撃すればいいと考える。
「くくっ、考えているな? 何故、我のドレスに当たったら砕けたのかと」
「ああ。緋色の物を強化しているのか?」
教えてくれるとは思わないが、一応聞いてみる。
…………と、意外にも教えてくれたのだ。
「近いが、不正解だな。我の『緋閻王』は緋色の物を上位に置けるのだよ」
「上位にだと……?」
「そうだ。緋色の紙でも鉄の剣の攻撃に耐えることはたやすいことだ」
エキドナがわかりやすい例を出してくれたが…………
(聞いたか……?)
『……うん、厄介……。緋色より強い物はないと同じ……』
(くっ、緋色がない場所を狙うしかないか。あの剣の危険がわかったな……)
『……まともに受けたら、簡単に両断される……』
なら、受け流したのは正解だったようだ。
説明した通りに、『緋閻王』は緋色であれば、物理的に無視して上位になれる。
緋色の剣で攻撃すれば、鉄だろうが、ダイヤモンドでも簡単に貫くことも可能だ。
「それは厄介な能力だな……」
「くくっ、能力の一概を教えてやったんだ、我をもっと楽しませてくれよ!!」
緋色を上位に置ける能力、ゼロは破れるのか…………?
魔王エキドナと本当の戦いは、今から始まったのだった…………
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