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第七十二話 シル&クロト対トリガ&ネリガル

はい、どうぞ。



 シルとクロトの方では…………






「ククッ、ここまでは互角ですか……」

「むー、攻撃がなかなか当たらない!」

「当たり前だ! チビの攻撃が当たったら部位破壊をしてしまうだろ?」


 シルの攻撃は全て受け止めることもせずに、回避に注いでいたようだ。

 シルの戦闘方法はわかりやすかったため、相手していたネリガルは防御不可能と判断して、回避主体で戦っていたのだ。


 トリガの方はクロトが相手しているのだが、どちらも凄まじい回復力を持っているため、小さな傷を付けてもすぐに塞がれてしまう。




「一体、お前は何者だよ……? 凄まじい回復力があるから同じ吸血鬼種だと思ったが、なんか違うんだよな……」


 トリガはクロトの正体が掴みきれなかったのだ。

 姿は人間に見えるが、凄まじい回復力を持っている所を見るには、自分と同じ吸血鬼種だと思ったが、トリガの本能が違う! と訴えてくるのだ。




「ククッ、私の正体が気になりますか?」

「気になるが、教えてくれるわけでもないだろ?」

「そうですね。格下なら答えてもいいと思いますが、貴方は同等かそれ以上。ここで教えるのは愚策です」


 相手、トリガの実力は同等かそれ以上だとクロトは考えていた。

 なら、力の使い所を間違ってはいけないし、情報を隠せるなら、出来るだけ隠すべきだ。

 そこが勝利の明暗を分けると思っているのだから…………






「あー、トリガ、速めに終わらせようぜ!!」

「もう使うのか?」

「さっさと殺して、エキドナ様の元に行かなければならないよな? だったら、すぐに使った方がいいだろ!!」

「…………そうだな。ここで足止めされている場合じゃないな」


 二人の会話を聞くには、切り札があるような感じだった。しかも、今、使うと言っているのだ。




「シル!」

「うん!」


 何かを感じたクロトはシルに声を掛け、警戒を強めて何が来ても対応出来るように二人とも、構えている。

 何かをする前に、攻撃も出来たが、無駄のような感じがしたから、防御体勢で構えた方がいいと考えたのだ。




「エキドナ様の元に速く行かなければならないので……」

「もう終わりにしてやるぜっ!!」


 二人の吸血鬼がお互いの手を掴み、発動した。




「「『双子一身ツーナイト』発動!!」」




 二人がそう発言すると、二人の中心から眩しいほどの黒い光が放たれた。


 銀髪のトリガと金髪のネリガルは見た目が似てないのだが、双子である。

 『双子一身ツーナイト』は生まれた時からあったスキルであり、二人が一身になる。

 簡単に言えば、合体だ。






「くっ!?」

「がぁっ!?」




 黒い光の中から、二本の腕が現れて、クロトとシルを掴み、投げ飛ばしたのだ。

 黒い光が弱くなって行き、その姿が見えるようになった。




 蝙蝠の翼が拡がり、赤と黒が混ざったような色だった。

 金髪と銀髪を半々にした長髪の男で、肌は薄暗かった。


 変わったのは、姿だけではなく、魔素量も前と違って上位魔人クラスになっていた。




「とりあえず、名を名乗って置こう。この姿では、リオンと言う」


 自己紹介を終わらせると、すぐに動いてクロトに向かっていた。

 リオンは素手だが、クロトは魔素を使って剣を作り出し、受け止めようとするが…………




「クッ! 力はそっちが上ですか!?」


 剣は折れなかったが、クロトは吹き飛ばされていた。

 身体能力も前の比ではなく、力だけでクロトを吹き飛ばしたのだ。

 シルも見ているだけではなく、今もリオンの懐に潜っていた。




「凍れ! ”凍拳レイケン”!!」


 今までは回避され続かれていたが、リオンがクロトに攻撃している隙に、当たる距離まで近付いて殴り付ける。




「バレバレなんだよっ!」


 さすがに、この距離なら当たると思っていたが、リオンはシルが潜り込んでいることに気付いたようだ。

 拳の部分は触れずに、胴体を蹴り飛ばした。




「がぁっ……」


 シルは元々、防御が高い種族であり、ゼロによって防御力も桁外れに高くなっていたが、今回の蹴りはそれ以上だった。

 普通の魔物だったらその蹴りだけで絶命してしまうのでは? と思うほどだった。




「やっぱり、硬いな……。 手加減無しでやってやる、畏れるがいい!! ”畏怖射撃テラーショット”!!」


 リオンは力を解放し、黒い弾がクロトとシルに向かって打ち出された。

 黒い弾が地面に当たると、ペタッと潰れるだけで何かが起こる様子はなかった。

 だが…………




「クッ、染み込んでくる……?」

「うわぁっ、何かが入ってくる……」


 二人とも、一撃ずつ喰らっていた。

 痛みも傷は出来なかったが、嫌な感じが身体の中に入ってくるのが感じられた。


 リオンが打ち出したのは、『恐怖』。


 希少スキル、『恐怖者オソレルモノ』が生み出す恐怖は敵の戦意を減らし、心を蝕むのだ。

 肉体にではなく、精神に攻撃する技であり、今回の放たれた『恐怖』は…………




「あれ、身体が重い?」


 シルの足が思うように動かなかったのだ。黙っているが、クロトも同じような感覚に陥っているだろう。




「今のは戦意を削る恐怖だったから、俺と戦いたいとは思えないだろ……?」


 足が重いのは、無意識にリオンがいる前に出たがらないと感じているからだろう。

 まさに、相手を恐れているように…………




「なんで!? 頭の中では倒したいと思っているのにぃ!!」

「肉体と精神は別だからな。脳が動けと命令を出しているが、精神がそれを拒否しているから思うように動かないだけさ」




 肉体と精神とは切り離せない存在なので、そう簡単に恐怖を振り払えないのだ。

 何とか手だけはリオンに向けられるが、足が全く動いてくれなかったのだ。




「さて、さらに恐怖を与えて狂死してもらおう。”狂怖放射テラーライト”!!」


 シルに向けて、黒い光が放たれた。

 さっきと違って範囲が広いため、足が動かないシルには避ける術はなかった。


 シルは腕で顔を守るしか出来なかったが、黒い光とシルの間に入る影があったのだ。






「クロト!?」






 そう、その姿とは、クロトだった。




「ほぅ、まさか『恐怖』を受けて動けたとはな……」


 だが、さらにあの『恐怖』も受けたならば、クロトはもう死んだとリオンは考えている。

 クロトは仮面を被っているため、顔が見えないが、さっきの技は喰らったら大半は『恐怖』によって狂死するか、運良く生きていても廃人になるほどなのだ。


 現にも、喰らったクロトはゆっくりと膝を折り、沈黙している。




「順番は違ったけど、まず一人か」

「く、くっ……」


 クロトが何とかしてくれた時間を無駄にせずに、シルは足を動かそうとしていた。

 だが、やはり腕しか動かなかった。




「次はお前だ。 大人しくして…………な!?」


 リオンは驚いたような声を発して、その場から離れようとしたが、もう遅かった。

 リオンの下からリボンのような物が巻き付かれて、 一瞬だけだが、動きを止められて、前から攻撃を受けてしまったのだ。




「クッ、と、トランプ? ま、まさか!?」


 攻撃された物がトランプだと分かり、すぐに攻撃してきた相手を見てみると…………






「ククッ、直ぐに反応されてしまうとはね……」




 クロトが無事の姿で立っていたのだ。

 『恐怖』で動けないようには見えないし、廃人にもなってもいなかった。

 死んだと思ったリオンとシルは驚いていた。




「嘘だろ……? 『恐怖』から防いだと言うのか!?」


 リオンは今まで、『恐怖』の精神攻撃を防がれたことはなかったのだ。

 もし、エキドナに放ったらエキドナでも数十秒は足を止められる自信はあったのだ。

 だが、目の前の仮面の男はなんだ? 全く効いてないようにしか見えない。


 そのことに、リオンが恐怖を覚えたのだった。




「ククッ、何故効かないのか不思議でしょうか?」

「あ、当たり前だろ……、な、何故だ……?」


 リオンの心には恐怖が埋め込まれ、声が枯れ枯れになっていた。

 そんな心情を知らないクロトはひょいひょいと話を続ける。




「私は恐怖がないのですよ……ククッ」

「き、恐怖がないだと!? それはありえない!!」


 生物なら、恐怖は必ずあるのだ。だが、目の前の仮面の男は恐怖がないとほざくのだ。




「詳しく説明する義理はないので、一つだけ教えましょう。私は死体集合体で、ゼロ様に弄ってもらっています。シル、もう終わらせましょう!! 本気を出して下さい!!」


 簡単に教えるだけに留めて、シルに本気を出すように促した。




「シルは私がいるから本気を出していなかったでしょう?」

「で、でもそれは……」


 シルは渋るようにクロトを見る。




「私のことなら心配はいりませんよ。シルがやろうことは推測出来ますので、遠慮なく行っちゃって下さい!!」

「あ、ああ! もう、知らないからねっ!! ”零度氷結ダイヤモンドダスト”!!」


 何とか動かせる腕を広げて、シルの周りに細かい氷結が現れた。

 リオンはそのシルを見て、すぐに後ろに下がって攻撃範囲から外れたのだ。




「それが本気? あ、あはっ、離れてしまえばいいだけだ!!」


 そう、シルの攻撃はリオンまで届いてなかった。

 離れてしまえば、大丈夫だと安心していた時に…………




「それだけじゃないよ……、連鎖するの……」


 シルが言った言葉にリオンは理解できなかった。シルの攻撃は触れない限り、凍らせることは出来ないはず…………






 パキッパキッ…………




「な、何だ……?」




 窓が割れているような音が何処からも聞こえてくるではないか。

 ここには窓なんてはない。なら、この音は……?






「なっ!?」




 右手の指に違和感を感じて、目を向けると…………




 指が凍っていくではないか。




「言ったよ。連鎖するって……」


 何故、触れてもないのに、離れているリオンの指を凍らせたのかは、空気に含まれる水分にある。

 シルの『氷結』は、水分を凍らせるスキルであり、水分がないとこは凍らせることが出来ないが、水分さえあれば、何でも凍らせることが出来るのだ。


 今回のシルが言った連鎖の意味は、空気に含まれる水分を自分が直接に触れなくても、間接的に繋がっていれば凍らせることが出来ると言うことなのだ。

 ただ、凍らせるスピードが遅いため、室内のように簡単に逃げられない場所ではなければ使えない技でもある。

 今は室内であり、もう指までに届いているならリオンはもう逃げられないのだ。




「クソォォォ!!」


 凍ってしまった右手を切り落として全身を凍らせるのを防ごうとするが…………




「血まで凍るのかよ!?」


 右手を切り落としたが、血がすぐに凍ってしまい、もう肩まで浸蝕されていた。


 ”零度氷結ダイヤモンドダスト”は室内なら敵を逃がさない強みがあるが、全方に放射してしまうため、味方までも巻き込んでしまうのだ。

 だから、使おうとは思わなかったのだが…………






「…………なんで、クロトは無事なの?」

「ククッ、だから大丈夫と言っていたでしょう?」


 クロトまで巻き込んでしまうはずが、何故か凍っていなかったのだ。

 リオンよりもクロトの方がシルに近いのに…………




「ククッ、奇術で私の周りにある水分を排除しただけですよ」

「あ、なるほど……」


 シルも何故、無事なのかわかったようだ。

 水分が無ければ凍らせることが出来ない。クロトの奇術を使ってクロトの周りにある水分を消せば、攻撃は届かないのだ。

 今のクロトは『奇術』を三回までなら使えるようになり、今ので三回目である。

 一回目はゼロ様を瞬間移動させ、二回目はリボンのような物で束縛に使ったのだ。






「ククッ、もう敵は死にましたよ?」

「あ、話していて気付かなかった」


 そう、クロトとシルが話している時に、もうリオンは全身を凍らせられて、絶命していた。

 技の発現を止め、リオンが死んだからなのか、足が動くようになったシルはリオンに近付いていた。




「念のためー」


 もう絶命しているけど、シルは念のために氷像になっているリオンを殴り砕いたのだった。




「ククッ、それで終わりですね」

「そうだねっ! 先に進もうよ!!」




 戦いは終わり、ゼロ達と合流するために先に進んで行くのだった…………







死体集合体が一番、活躍していましたねー。



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