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第六十五話 戦争兵器

はい、どうぞ。


 ここはジガルド街。

 ジガルド街は、メイガス王国で鍛えた新人冒険者が次の段階に進む街だ。

 メイガス王国ほどではないが、結構大きくて聖騎士や竜騎士が警備に就いている。

 魔物や魔王の襲撃がなくて、平和な街なのだ。






 だが、それは昨日までのこと。

 ここは商店で賑わっていて、人も沢山歩いている。

 そこに、フードを着た二人組の人影が街の真ん中に現れ、剣を持って暴れ始めたのだった。

 男、女、子供、老人も関係なく殺していく…………






「貴様ら! 何者だぁっ!!」



 すぐに聖騎士、竜騎士、冒険者が不審な二人組を囲んでいく。

 二人組はフードを着ていて、手には血がポタポタと垂らす剣を持っている。

 見るには、身長に差があり、大人と子供の組み合わせのように見えた。


 聖騎士の一人が前に出て、包囲する者達に指示をする。

 その聖騎士は聖騎士の中で偉い人だとわかる鎧を着ていた。




「迂闊に飛び込むな。トーア街を落とした二人組かもしれん」




 トーア街を落としたと聞いて、ざわつく人々。




「落ち着け! で、お前達は何者だ?」


 前に出て来た聖騎士はフードの二人組に問う。






「あはっ! あの男がこの中で偉い人かな?」

「そうかもしれませんね」


 二人組は聖騎士の言葉を無視して話していた。




「貴様ら! 無視するんじゃない!!」

「うるさいね」

「そうだね」


 もう顔を隠す必要はないと言うように、フードを取り外す二人組。

 その姿が見えるようになり、一人目は身長が130センチの少女であり、頭の上にはウサ耳がピンと立っていた。

 二人目の身長は170センチぐらいあり、全身が白の着物で白髪の男だった。

 そんな二人組が名乗り始めた。




「あはっ! アタイはミーラと言う! 我が神の配下だ!!」

「私はヨハンと申します。我が神の配下であり、ここを潰せと命令を頂きました」


 ミーラは剣を片手で軽く素振りしながら笑い、ヨハンは自己紹介して、ペコッと頭を下げる。




「貴様は……、トーア街を潰した奴らじゃないな。トーア街を潰した奴も『我が神』と言っていたが……、貴様らもトーア街を潰した奴らの仲間か?」

「あはっ、そうだよっ! 話は終わりにして、殺し合おうよっ!!」


 ミーラはそう言うと、さっきまで話していた聖騎士に切り掛かった。




「なんの!」

「あはっ、これくらいなら、止めるんだねっ!」


 聖騎士はもう剣を抜いていたから間に合ったが、もし、鞘に納まったままだったら間に合わなかっただろう。




「数人は他の仲間を呼べ! コイツらは街を潰せるだけの力を持っていると思え!! 竜騎士は他に仲間がいないか捜索せよ!!」


 指示を出し、距離をとって囲んでいた者は二手に別れたのだった。

 一つ目はそれぞれが武器を持ち、突っ込む者。

 二つ目は指示通りに仲間を呼ぶ者。




「遅いね!」


 ミーラは回避重視のスピード型であり、全位方向からの攻撃を避けていた。




「やれやれ、時間を稼いで欲しいな……」


 ヨハンはそう呟きながら全ての武器を剣で受け流していた。

 ミーラに愚痴を言いながら剣を受け流す辺り、ヨハンは剣技が高いように見えるが、実際は凄まじい反射神経で無理矢理受け流しているに過ぎないのだ。




「わぁかってるよ! そろそろいいかな?」


 ミーラは一箇所だけに留まらず、色々な場所を動き回って攻撃を避けていた。

 密集しているため、魔法は使えずに、武器だけで攻撃するが、なかなか当たらない。

 もし、聖騎士だけなら連携で魔法を使う瞬間を作り出せるが、この場には冒険者達もいるから上手く連携が取れてなかった。

 ミーラがある程度、ヨハンがいる場所を一回りした所であるスキルを発動した。






「あはっ、自分達の攻撃で死にな! 『既遂者デジャヴュ』発動!!」






 ミーラがスキルを発動すると、急にミーラとヨハンの周りにいた聖騎士達と冒険者達に切り傷が浮かび、血を流して倒れていったのだ。




「がぁっ、な、なんだ? な、何をし、しやがったぁぁぁ!?」

「あはっ、君は運が良かったんだね。そう、これが私のスキルだっ!!」


 ミーラの希少スキル『既遂者デジャヴュ』で聖騎士達と冒険者達が身体中から切り傷が浮かび、血を流して倒れる。

 まず、その切り傷が生まれることに疑問を浮かべるだろう。


 その切り傷は急に現れたわけでもなく、一瞬で切られたから切り傷が生まれただけなのだ。

 『既遂者デジャヴュ』は、敵の攻撃した跡に殺傷能力を付加させ、同じ場所にまた攻撃する能力なのだ。

 既に終わった攻撃が、スキルによってまた攻撃を繰り返される。

 攻撃した場所は動かないが、人は違う。

 戦いをしているなら、一箇所に留まるのはありえない。

 しかも密集していてミーラが動き回ったせいで攻撃した跡が沢山残り、人も攻撃した跡の場所に移動してスキルを発動したら…………




「何が、お、こったんだ?」「い、痛ぇよ……」「左手がないぃぃぃ!!」「ごふっ……」「助けてくれぇぇぇ……」




 そこまで言わなくてもわかるだろうが、明言しておこう。




 そう、自滅するのだ。




 『既遂者デジャヴュ』は敵の攻撃にしか発動しかないから、後手に回ってしまうが、発動されたら半径30メートル以内の攻撃が自分達に向かってしまい、勝手に全滅してくれるのだ。




「あはっ! 時間稼ぎはこれでいいでしょ?」

「ああ、充分だ」


 ヨハンは一枚の紙を懐から出した。

 まだ生きていた聖騎士は嫌な予感を感じ、叫んでいた。




「無事な奴らはあの男を止めろぉぉぉ!! 発動させたら何が起こるかわからんが、嫌な予感がする!!」


 切り傷が浅かった者はその言葉でヨハンを止めるために突っ込む。

 ミーラに攻撃しても避けられてしまうだけで無駄だとわかるので無視して、動ける者、全員でヨハンに向かっていた。




「あはっ、まだ動ける奴らがいたんだな。助けは必要か?」

「いえ、もう充分と言いました」


 話している時も、聖騎士や冒険者の武器がヨハンに向かって…………




 グサ、グサグサッ!




 先程と違い、攻撃が簡単に当たり、ヨハンの身体に沢山の武器が打ち込まれたのだった。




「やったか!?」

「残念でしたね……」


 急所に刺さったはずのヨハンは苦しそうな顔も見せずに、軽く笑っていた。




「な、何故生きている!?」

「私は人間ではありませんので……」


 そう言って、みんなにわかるように身体を薄くして見せた。




「この通りに、私は霊系の魔物であり、『透過能力』を持ちますので、剣での攻撃は効きません」

「なっ…………、ま、魔法を……」

「もう手遅れです」


 『透過能力』持ちは物理を無効するが、魔法なら当たるので魔術師に魔法を使わせようとしたが、もう遅かったのだ。






「広域滅殺魔法、『彼岸花死紙フロワーデス』!」






 今まで持っていた紙を上に飛ばせると、地面に陣が浮かんだ。

 この陣は暴れる前に設置した陣であり、この魔法を使うために前もって準備したのだ。

 陣は街の全てまで広がっており、街にいる発現者以外の者を対象している。


 飛ばした紙が準備した陣に呼応して、大きくなっていく。

 大きくなっていく内に…………






 さっきまで武器を向けていた者がどんどんと倒れていくのではないか。

 他にも遠くにいた者も倒れていく音が聞こえて来る。


 広域滅殺魔法、『彼岸花死紙フロワーデス』は陣の上にいる者の生命力を飛ばした紙に集める広域滅殺魔法だ。


 身体の中に生命力が無くなってしまうと死んでしまい、吸い取った紙は大きくなり、最終的には彼岸花のように咲いてヨハンの手に渡るようになっているのだ。









 しばらくすると、ジガルド街で立っているのは、ヨハン、ミーラだけになったのだった…………







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