第六十二話 妖精の主
はい、どうぞ。
漫画、アニメに出て来る妖精そのものが飛んでいるのが見え、ゼロ達は近付いていた。
話が通じるかわからないが、声を掛けてみることに。
「そこの小さな女の子、こっちの言葉はわかるか?」
「えっ?」
声を掛けられて、ゼロ達に気付いたようだ。
もし、ゼロが襲う気だったら、妖精のようなものはひとたまりはないだろう。
「え、ええ? な、なんで人間が……?」
「お、言葉は通じるな。話をしたいが、いいか?」
しばらく妖精のようなものは驚いていたが、すぐに切り替えて話を続けていた。
「も、もしかして、あの罠を突破したの?」
「そうだ、それに間違いを正しておくぞ。人間に見えるが、俺は成霊体と言う魔人だ」
「……!? 魔人がここに何の用が?」
妖精のようなものは魔人と聞いて、警戒を上げていた。
ゼロは別に敵対するために来ているわけでもないので、目的を話した。
「いや、ここら辺で魔人が現れたから、そいつを捜しに来たわけだ。別にお前をどうしようと考えてないから安心しろ」
「魔人…………、まさか、人避けのためにやったことなのに、そっちから来るとは思わなかったわ……」
話を聞くには、妖精のようなものはキリナと名乗り、魔人はここに誰も近寄らないように、妖精の主が作り出した幻影と言うらしい…………
(まさか、人避けのために、幻覚で作り出しただけだったとは……)
『……無駄足だったね……』
(いや、こんな森があることがわかっただけでもマシだろ?)
『……確かに、ここは隠れ家に……なりそう。砂漠の幻覚、レベルが高い……』
(フォネスがいなかったらここまでは辿り着けないだろう)
そんな幻覚を作り出したキリナの主と言う者に興味を持ったのだ。
なら、その主に会えないか、妖精に聞いてみることに…………
「え、主にっ!? それは駄目! 駄目だよ!!」
断られてしまった。
何故、駄目なのか聞いてみたら、主は私以外の者とは会いたくないからここら辺を幻覚で人を近寄らせないようにしたと言う。
確かに、先程の幻覚は殺すためではなく、追い返すような幻覚だった。
会えないのは残念だが、絶対に会いたいわけでもないので、無理には言わないことに…………
「………………え? いいの?」
急にキリナが驚いたような顔になっていた。
「キリナ?」
「え、あ、ゴメン。主から念話がありまして…………」
どうやら、キリナの主から念話があって、会ってくれるそうだ。
何故、気が変わったのか? と、疑問を持ったが、せっかく会えるなら会ってみたいと思う。
「珍しいわねぇ……、私が案内するから着いてきて」
「わかった」
キリナはふわりと飛んで、案内をし始める。それに着いていくゼロ達。
「……あの、着いていっても大丈夫なんですか?」
「マリアは罠だと思うか?」
「恐れながらも、急に誰も会わないと言っていたのに、何故会えることになるのか……」
確かに、何で俺らだから会うのか? それが怪しいとマリアは考えている。
ゼロは考えてみるが、異世界人だからか? 思い付くのはそれしかなかった。
魔人はキリナが警戒していたから、違うだろう。
(レイは何だと思う?)
『……お兄ぃと同じ……異世界人だからだと……思う……』
レイも同じ考えだった。とりあえず、会って会話をしてみればわかるだろう。
だが、警戒もしないわけでもないので、会ったら鑑定でどんな奴なのか調べて見ようと思う。
「ここを通れば、私の主がいるわ」
「ここを……?」
「大木しかないのですが……」
「大きな木だねー?」
ここを通ればと言われても、案内された先には森の中で目立つ大きな木があるだけ。
「もう! 早く通ってよ!」
「あ、ああ……」
とりあえず、大木に触れるとこまで歩いて見ることに。
このまま歩き続けたら、大木にぶつかる…………、と思ったらすり抜けた。
さらに進むと、大木の反対側の向こうに着いた。
「……は?」
大木の中にすり抜けるように入り、少し歩いただけで、目の前には前の世界の田舎で良く見る家があったのだ。
「わぁっ!?」
「ここは……?」
「何〜?」
続いて、配下達も後ろにある大木の中から出て来た。
この大木は転移関係の魔法が掛かっているかもしれないとゼロは思った。
『……お兄ぃの……考えが正解……』
(やっぱりか)
さっき通り抜けた大木は、ゼロが造った転移陣に似た造りになっているようだ。
『……でも、それより気になる……』
(ああ……、あの家は前の世界の田舎でよく見るようなものだよな?)
大木のことより、周りは森だが、目の前には一件の家があったのが気になる。
あの家は、屋根が藁で作っており、横には水車が付いている。
小さな川もあり、水車は回っていてバシャバシャと水が零れている音が聞こえて来る。
「あそこに主と言う者がいるのか?」
「そうだよ。中に入ってもいいと言っているから、さっさと行くよ」
そう言葉を残して、先に家に飛んでいくキリナ。
ずっとここに留まっても仕方がないので、家に向かうことに。
「フォネス、あそこの家は見えるか?」
「はい。珍しい物が水を零しています。屋根には草が掛けており、木で作られた家です」
「なら、あれは幻覚じゃないな」
幻覚の可能性があるから、幻覚が効かないフォネスに聞いてみたが、ゼロと同じ視覚なので、幻覚じゃないとわかった。
「水車か……、あの家を作ったのは異世界人で間違いないな」
「もしかして、あの珍しい丸い形をしたものをお知りで?」
「ああ。あれは水車と言って、水を原動力にする物だ」
「なるほど……、でも何で知っているのですか?」
「ああ、説明してなかったか? 俺も元異世界人だからだ」
「「「えっ?」」」
ゼロは元異世界人だと言うことをまだ教えてないのだ。
聞かれてなかったから教えてなかっただけで、隠そうとは思ってなかったのだ。
「そうだったんですか……、でも何故、元?」
マリアがそこに気付いたので、家に入る前に、軽く説明してやった。
転生して、ゴーストになり、前世の記憶があることを…………
だが、レイのことは説明してない。という、上手く説明出来ないからだ。
「そうだったんですか。でも、私はゼロ様が元人間でもずっと着いていくと決めています!!」
「話に驚いたけど、マリアもフォネスと同じ考えね」
「自分もー!!」
ゼロが元異世界人で、元人間だろうが、気にしないと言ってくれる。
『……良かったね……』
(ああ。俺はいい配下を持ったよ。で、話を変えるが、レイは気付いているか?)
『……うん、ビンビンと来ている……』
(ああ。何故か、引き寄せられるような感じだよな……)
何かを感じ取った違和感、ゼロは何なのかわからないが、玄関の前に着いたので配下達に目を合わせて頷いてから開ける。
家の中は、前世の記憶と同じような造りで、靴を脱ぐところもあった。
とりあえず、靴を脱ぐように言って、上がる。
「なんか、誘われているな……」
小さく呟いだから配下達には聞こえなかった。
確かに、『魔力察知』とは違う何かを感じるのだ。
感じるまま、先に進んで、一つの扉に突き当たる。
「お前達、警戒だけは抜かるなよ?」
「「「はっ!」」」
扉の向こうには主と言う者がいるのがわかる。
警戒を高めて、扉を開けると…………
そこには、畳に座布団を敷いて、正座をしている女性が一人。
黒髪を伸ばしており、花柄の着物を着ていた。
「ようこそ、魔物に転生した者よ。どうぞ、お座りになされよ」
その顔を見た瞬間に、顔は笑顔で可愛い部類に入るのがわかるが、何故か儚いような感じを受けたのだった…………
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