第六十話 再び砂漠へ
はい、どうぞ。
太陽が上がり、夜の内に冷えた空気も同時に気温が上がっていく。
そんな朝になった頃、ゼロ達はもう行動をし始めていた。
「今なら少しはマシだろう」
「ふわぁ〜、まだ日が昇ったばかりですね……」
フォネスは眠そうな目を擦りながら、外の空気を吸い込んでいく。
「水の準備も出来ていますし、すぐに出発出来ます」
「出発っー」
ゼロ達はもう旅の準備を終えていた。
これからダマス街を出てまたラオックス砂漠を歩き回る予定なのだ。
では、魔人の情報はどうなったのかは…………
「まさか、宿屋ですぐに情報を得るとは思わなかったな」
「でも、わざわざ聞きに回ることはなくなったからラッキーでしたね」
そう、情報は宿屋の店主から収穫済みなのだ。
店主の話によると、ラオックス砂漠には不思議な建造物があり、目撃者が何人かいたが、それは遠い場所から見ただけでその場所に着いた者はいないと。
魔人が見付かった情報はその辺りと同じと聞いた時、ゼロは二つの目撃、何か関係があるのでは? と考えた。
「建造物は蜃気楼の可能性は?」
「それはあるかもな。行って見ればわかることだろう」
蜃気楼、条件が合えば、建造物のような物が見えるかもしれないが、そこに魔人という情報がある。
ただ蜃気楼だと決め付けずに、場所も大体わかったので自分で調べた方が確実なのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
太陽の陽射しが強くなってきて、ゼロ達は今、スナザメに囲まれていた。
「またサメかよ!」
「街を出て五回目です……」
「鬱陶しいわね!」
「凍っちゃえっ!!」
ゼロは魔素の剣で切り裂き、フォネスは大剣に妖気を纏わせ、マリアは神経毒を撒き散らし、シルは氷の拳でスナザメ達を消し散らしていく…………
「ようやく全滅したか。しかし、ここはスナザメが多いな」
「はい。背鰭を手に入られるのは嬉しいですが、沢山はいりませんね」
「暑い……、どうしてスナザメと遭遇するんでしょうね。しかも、他の魔物も見ませんし……」
「う〜、同じサメばかりで飽きた……」
確かに、スナザメばかりに遭遇するのはおかしい。
ここら辺はスナザメの縄張りなのか?
(縄張りなのか、わかる方法はあるか?)
『……わからない。……他の魔物に出会わないから、……縄張りの可能性……が高い……』
(そうか。目的地はこの先だから、突き進むしかないな)
スナザメがウザいといえ、目的地はまだスナザメが出て来そうな先にあるのだ。
なら、撃退しつつ、進むしかないのだ。
「その後もまたサメが出て来ると思うが、気をつけろよ?」
「了解です」
「暑くても、油断はしません」
「うん!」
ゼロ達は油断せずに砂漠を横断している頃、メイガス王国の方では…………
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「なんだ? 報告があると聞いたが、まさか何か分かったことがあったのか?」
「はい。実は…………」
ここはギルド長がいる部屋で、勇者カズト達が来ていた。
ある報告をするためだ。さっきわかったことをギルド長に伝えると…………
「な、なんだと……、それは本当のことなのか?」
「はい。実際に行って見たのですから」
「ええ、骨が沢山積まれていて、血もまだ消えないで残ったままでした」
「さらに戦った跡も残っていたな」
あの場所で見たものを伝えると、やはり驚いたようだ。
「……それが勇者タケシのものだったら、敵は想像以上に危険だな」
「ええ、『風塵の勇者』は聖アリューゼ皇国の勇者だったわよね。早めに伝えた方がいいと思うわよ」
「ああ。伝令を送る」
「なぁ、『風塵の勇者』はどのくらいに強かった?」
「そうだな、Sランクだったはず。それに、聖騎士が50人もいたのに、誰も戻って来ないとはな……」
どうすれば、勇者と聖騎士50人を殺せるのか予想がつかない。
もしかしたら、魔王ラディアのように千人以上の配下を従えているかもしれない。
魔王を倒した者なら、全滅させるのは出来るかもしれないが、ギルド長はゼロに会ったことがないから判断出来ないのだ。
「カズト、聞くが、首謀者はゼロだと思うか?」
「…………」
ギルド長は、ゼロを僅かだが、実力を間近で見ているカズトに聞いてみた。
生還者からの情報ではゼロ達の特徴が似過ぎていたから、ゼロ達がやったかもしれないとカズトは思うが、やはり断言は出来なかった。
わからないと、伝えるとギルド長はそうか。と頷いた。
「ワシは会ったことがないから判断出来ない。やはり、会って確かめるしかないな」
「え、会って……?」
「ああ。ワシも勇者カズトのパーティに加えてくれ」
「「「えっ!?」」」
急に言われて、カズト達は驚きの顔を見せる。
ギルド長が勇者パーティに入るなんて、今までなかったことなのだ。
ギルド長はギルドの仕事があり、あまり冒険に出ることはないのだ。
「ん? ああ、ギルドのことはギルド長代理に任せるから大丈夫だ」
「え、ギルド長代理って…………」
「私のことよ」
声がした方を見ると、そこにはリディアがいた。
「ええっ!! 受付嬢がギルド長代理だったの!?」
「そうよ。ギルド長がいない時は、私がギルド長の代わりに仕事をしていたのよ」
「そうだったんだ……」
「というわけだ。ワシは元SSランクだったから、それなりには働けるぞ?」
「いいのですか? でも、何故?」
ギルド長が強い冒険者だったのはわかったが、何故、急にパーティに入れてくれと言ってくるのか疑問だった。
「なんか、カズトと一緒に行けば、ゼロと言う者に会えるような気がするからだ」
「何と無くですか……、でも強い方が入ってくれると助かります」
「おう。あ、名前を言ってなかったな? ワシはガイウスと言う。宜しく頼む」
「ガイウスさん……」
「呼び捨てで構わねぇぞ。これからの旅仲間になるんだからな」
さん付けはいらないと言うが、明らかに年上で経験豊富なベテランを呼び捨てするのに、勇気が必要だった。
「え、ええと……、ガイウス。よ、宜しくお願いします」
「敬語もいらないと言いたいが、今はそれでいいか」
ハハッ! と笑いながら、握手をするガイウスと、顔を僅かに引き攣りながらも、笑顔で握手するカズト。
「……まさか、ギルド長がパーティに入るとはな」
「そうだね、予想してなかったわ」
黙って二人のやり取りを見ていたマギルとテリーヌ。
勇者カズトは新しい仲間、ガイウスが加わったのだった…………
ようやくギルド長の名前が出ました!
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