第五話 フォネスの強さ
はい、どうぞ!
この作品を広めてくれるとありがたいです。
”ゼロの部下”→”ゼロの配下”に変更しました。
洞窟を出たゼロ達は、森の中に進んでいた。
(そういえば、お前のことを説明しなくてもいいよな?)
『……うん、自我があるスキルなんて、普通は無さそうだし』
(そうだよな。前の世界とか、説明が難しいし、このままでいいか)
『……その方が、楽だしね』
結果、説明しても解ってくれる可能性が低いし、面倒なので、このままレイのことを説明するの止めることにした。
改めて、鑑定でフォネスのステータスを見てみた。
ステータス
名称 フォネス
種族 九尾族変異種
称号 ”ゼロの配下”
スキル
特殊固有スキル『焔狐』
(鬼火・幻覚・変化)
通常スキル『幻覚耐性』
通常スキル『魔力察知』
名がなかった時のフォネスには、固有スキルさえも、持っていなかった。ゼロと同じ変異種のはずだったが、力は弱いと言えるほどだった。
だが、ゼロが名前を与えたことで、魔素が増え、この様なステータスになっている。
これなら、俺には及ばないが、この辺の魔物程度なら簡単に負けないだろう。
「フォネス、新しい能力を手に入れたことに気付いているか?」
「はい! 『焔狐』がありました!」
「よし、あ、聞くけど、自分のステータスは見れるの?」
「はい、自分のステータスでしたら、魔物でも知能があれば、見れます」
(ふむ、自分は鑑定があったからわからなかったが、自分のなら誰にも見れるみたいだな)
『……やっぱり、ファンタジぃー……だぁ……』
二人はこの世界、よく出来ているなと感嘆した。
しばらく、歩いているとゼロの『魔力察知』が反応した。
「フォネス、しばらくすると敵に出会うぞ。反応は三つだ」
「え、もう察知したんですか?」
あれ、フォネスも『魔力察知』を持っているよな? と思ったが、おそらくスキル保持者の強さによって反応出来る範囲が違うだろうと気付いた。
『……範囲は……まだ狭い、みたい……』
(確かになぁ)
しばらくし、敵はこっちに向かっているのか、フォネスも敵の反応を感じたようだ。
「あ……、三つ程感じます!」
「なるほど。このくらいなら、察知出来るようだな」
ゼロはフォネスとの差がわかった所で、近くの茂みに隠れた。
と、そこで敵の姿が見え始めた。
(……ゴブリンだ)
『……ゴブリンだぁ』
どう見ても、ゴブリンだとすぐにわかった。
醜悪な面をした魔物が木の棒を持って歩いていた。
声を潜めて、フォネスに指示を出した。
「……お前は一匹をやれ。残りは俺が貰う」
「……了解」
三匹程度なら、俺がやってもいいが、ここであまり戦ったことがないフォネスに経験を積ませた方がいいと考え、一匹を譲った。
ある程度、近付いた所にゼロが茂みから飛び出し、魔素を纏まった貫手で胸を貫く。
すぐに手を抜いて、即死したゴブリンは右手で首を掴んだ。別の一匹が木の棒で殴りかかってきたが、ゼロは『無痛感』で痛みを感じないので、残った左手で受け流し左手もゴブリンの首を掴み、残りの一匹から離れた。
「フォネス、やれ! ”生命吸収”!」
残った敵はフォネスが相手をし、ゼロは二匹のゴブリンから魔素を吸収していた。
「ギィィィッ…………」
生きていたゴブリンはあっさりと魔素を吸収されて死んだ。死体の方も残った魔素を絞り尽くす。
(なんか、ゴーストよりは多いけど、弱い……)
『……仕方ない。お兄ぃは最強だから』
(レイがいるから俺は頑張れるんだよ)
『……お兄ぃ、大好きだよ』
(俺も大好きだぁ!!)
思考空間を使っているといえ、まだ戦闘中なのだ。
ゴブリンを両手に持ちつつ、レイとラブコメな雰囲気を出すゼロ。
それはそれで、フォネスの方では…………
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……ほぇ〜、やっぱりゼロ様は凄い!
あっという間に二匹のゴブリンを倒していた。 人型の魔物と戦うのは初めてだが、任されたゴブリンは必ず倒さなければならない。
フォネスはゴブリンに向き合って、ゼロ様から頂いたこの力、『焔狐』を使いこなす。
鬼火と変化でゼロが作った魔素の剣より大きな剣を作り出した。
”大焔剣”と名付けられた大剣は、高度な焔を変化し、作り出した。ゆらゆらと燃えつづけ、斬ったら血も出ないほど、綺麗な切り傷になるだろう。
フォネスが作り出した後に隙だらけのゴブリンは一線で上半身と下半身と真っ二つに別れた。
だが、もし上手く操れたなら切り傷は綺麗になっていたが、今のゴブリンは力任せで斬ったような跡で綺麗な跡とは言えなかった。
あ、オーバーキルだったわ……
どう見ても、オーバーキルだった。フォネスなら、鬼火を弱く撃っても簡単に倒せただろう。
さらに、力任せで斬ったにすぎないので、ゼロからは良い評価を貰えないだろう。
次からは上手く能力を使いこなそうと思うフォネスだった。
フォネスの戦いを見ていたゼロ達には意外にも、高評価だった。
(へぇ、あそこまでやるとは思わなかったぞ。どう見てもオーバーキルだがな)
『……そうだね、戦いでは、それ程に期待してなかったけど、思わぬ拾い物だったね』
そう、二人共、あまり戦いをしたことがないフォネスのこと、戦い分野では期待してなかった。
だが、戦いを見てその考えは変わった。
(自分と同じ人型に躊躇がないことに高ポイントだな)
『……初めて使う能力を、あそこまで使いこなすことも、高ポイント。グッ……』
ゼロは人型だと躊躇する人が多いと小説や漫画で知っていたが、フォネスは躊躇なく、斬り捨てた。
フォネスは人ではなく魔物だけどな……
レイは親指を立ててグッドと言うような感じに話していた。
駄目な所は、オーバーキルであったことと、ゴブリンごときに、魔素を使い過ぎなとこだろう。
初めて、能力を使う分には、仕方がないと思うが、フォネスはゼロと違って、使った魔素はすぐに回復しない。
ゼロは『魂吸者』があるから、戦いながら魔素を回復というか、吸収出来るけど、フォネスは魔素を回復させる手段が自然回復しかない。
もし、回復させる手段があるなら問題ないが、出来るだけ節約して戦って欲しいと思う。
「お疲れさん。新しく得た能力はどうだった?」
ゼロは能力について、フォネスの思ったことを聞いてみることにした。
「はい、先程のはオーバーキルでした。能力は色々な使い方が出来ると感じ、色々試して行きたいと思います」
「よし、試すのはいいが、魔素は無限ではない。そこを忘れずに行動することだ。今回のことはよくやったと褒めてやろう」
「……っ! あ、ありがとうございます!!」
ゼロはフォネスもわかっていたので、アドバイスは少しだけで済んだ。
良い生徒がいる先生の気持ちがわかった様な気がしたゼロだった。
フォネスは褒められるとは思わなくて、歓喜の嵐が心で吹き荒れていた。だが、すぐに心を落ち着かせて能力の使い方を思案していた。
(思わぬ拾い物か……)
『……お兄ぃ?』
(あ、いや。次も仲間にする時、強いかわからないしな)
『……そうだね、だったら自分達で育てる……?』
適当な魔物を見つけて仲間にし、育てるのはどう? と聞いてくるレイ。
(時間は沢山あるからそれも考えたが、成長上限が低い魔物を育てることになったら無駄になりそうだし)
『……つまり、始めに才能がある魔物を仲間にする……?』
(簡単に見付かるとは思えないけどな)
今まで戦ってきた沢山の魔物の中では才能がありそうな奴はいなかった。
(下位魔物じゃなくて、上位魔物なら成長上限が高いだろう)
『……つまり、ゴブリンやオーク程度の村…見つけても、占拠する価値は無し?』
(ああ。ゴブリン程度じゃ、一瞬で終わるし、配下にして名前を与えてもフォネス相手じゃ、足止めにもならないだろ。それに、知能がない魔物が作った村なんていらんだろ?)
『……確かに』
名前を与えたとしても、ゴブリンがフォネスに勝てなそうだ。先程の技で一撃斬られて終わりだろう。
(占拠して、俺達の拠点を作るのはいいが、ゴブリンとかじゃなくて他にあるだろ?)
『……そうだね、ゴブリンは知能もないし、言葉を喋ってなかったし』
(ネームドモンスターなら喋る程度の知能はあるだろうが……、あとはいるかわからないが、ユニークモンスターだな)
小説や漫画でよく見るユニークモンスター、いるかわからないなとぼやくゼロだが、レイが何か気付いたようなことを言ってきた。
『……ユニークモンスター?あれ、私達はユニークモンスターじゃないの……?』
ゼロも言われて、初めて気付いたようだ。
(……ん、そういえば! ステータスにあった変異種がユニークモンスターってことか?)
『……フォネスにもあった』
(あるな……。なら、変異種だったら成長上限は高そうだな)
ゼロに、フォネスはユニークモンスターであり、ゴブリン程度じゃ相手になっていない。
ゼロは鑑定を使えば、変異種なのかはわかる。なら、変異種に絞って仲間にするのもいいだろうとゼロは考えた。
次の方針が決まり、思考空間から帰ったゼロはフォネスに言った。
「フォネス、これからは戦い続けるには代わりないが、変異種を見付けたら配下に引き入れる!」
「変異種ですか?」
「そうだ、自分もお前も変異種だ。その力を見ればわかるだろう」
これからは、力を付けるために戦い続けるが、同時に変異種がいたら配下に入れ、いい拠点があったら占拠する。
もし、始めから作られた拠点じゃなくても、いい場所があったら自分達で拠点を作るのも面白いだろう。
次々と先のことを見え透き、レイと会話しつつ、ニヤニヤしながらゼロは歩いていく。その後ろを慌てて付いていくフォネス。
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