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第五十五話 マヨネーズ

はい、どうぞ。

 ローナ街に帰ったゼロ達は、すぐにギルドへ向かっていた。

 依頼を達成したことを報告に、報酬を貰うためだ。




「…………え? まだ一日しか経ってないのに、終わったんですか!?」

「ああ。これが討伐部位だ」


 そう言って、21個の討伐部位である角を渡す。




「ほ、本当に……、確かに、ボアファイアの角です。精算しますので、お待ち……キャアアッ!?」


 またも、言葉は終わらずに椅子の背に手を掛けたらバランスを崩して転んでいた。

 しかも、今回は椅子に潰されるまでの流れがあったから、痛みは前よりは上だろう…………




「痛ぃです……」


 痛いと言いながらも、なんとか立つ受付嬢。おそらく、前から同じ失敗をしているから慣れているだろう。

 普通は学習して、気をつけるものだがな…………

 ゼロは呆れながらも、精算が終わるまで待つことに。




『……ドジって、なんで転ぶだろう……?』

(難しいことを聞くなぁ。 確かに、何もないとこで転ぶのは不思議と思えるな)

『……しかも、痛がっているけど……怪我もない……』

(あ、本当だ。何回も転んでは、怪我はしてしまうだろうしな)


 気になったから受付嬢のステータスを覗いてみたが、特に何もなかった。

 頑丈でもないし、瞬時に回復するようなスキルはなかった。

 瞬時に回復できる人間なんていないから当たり前なんだが…………




『……謎だね……』

(ああ、謎だな……)


 もう考えるの止めた。何故なら、もう精算が終わり、こっちに話し掛けていたからだ。




「お待たせました。21個なので、63000ゼニになります。ご確認を宜しくお願いします」

「ああ。大丈夫だ」


 確認も終わり、ジャラジャラとお金が入っている袋を受け取る。

 これで香辛料を買うお金は手に入れた。




「ありがとうございました! また依頼を請けに来て下さい」

「ああ。お金が必要になったらな」


 簡単に受け答えをして、会話を終わらせてすぐに香辛料が売っていると思えるお店に向かった。









「あ、ここか」

「そうみたいですね。他の食糧品も売っていますね」

「魚が主になっているみたいです」

「魚! 食べたいっ!」

「そうだな……」


 香辛料も売っているが、見たことがない物ばかりで、ゼロは困っていた。




(これでは何が作れるかわからないな……。わかるのはハーブぐらいだし)

『……あ、そっちに調理味が……ある』

(お、これは……塩、酢、オリーブオイルだな!!)


 流石に、醤油やソースはなかったが、酢とオリーブオイルがあれば、卵からマヨネーズが作れる。

 あとで、野菜が売っている所に、トマトがあればケチャップが作れるが、なかったら似たのようなのを探そうと思う。

 とりあえず、香辛料はよくわからないので、ハーブ、酢、オリーブオイル、サバに似ていて20センチの魚を12匹ほど買った。

 店主に聞くと、魚の名前はタイズと言うらしい。

 いつも戦いばかりではなく、たまに料理をしてノンビリするのもいいだろう。




「そういえば、卵は何処に売っているかわかるか?」


 前の世界ならコンビニかスーパーに行けば、売っているが、ここの世界では何処に売っているのかわからないのだ。




「卵なら、八百屋に行けばあると思います」

「八百屋に? 野菜と一緒に売っているのか?」

「はい。卵は鶏がいる家なら何処でも手に入ります。野菜と交換で卵を渡す家もありますので」

「なるほど……」


 物々交換が本当にあるんだなと感嘆していたゼロ。

 それなら八百屋に卵が置いてあるのは納得出来る。

 卵、もしあれば、トマトも買って置こうと考えたとこに、料理に必要な物が他にあると気付いたのだ。

 それは…………




「料理用具がなかったな……」


 そう、料理用具がないのだ。

 今までは、簡単な塩焼き料理だけで、ナイフだけあればすぐに出来たのだが、それだけでは飽きてしまうから、香辛料を買おうと思ったわけなのだ。




「雑貨屋なら料理用具は売っているよな?」

「はい。冒険者用のセットで売っているはずです。マリアは聞いたことがあるだけで、見たことがないから詳しくはわかりませんが……」


 冒険者用のセットとは、野宿になっても料理が出来るように包丁、折り畳みまな板、鍋、お皿、フォーク、スプーンがセットになっている物だ。

 ここら辺はお米がないからキャンプなどで馴染み深い飯盒はんごうは、ないようだ。

 せっかく、レイが味覚がある身体を造ってくれたのだから、満足のいく料理を作って食べたいのだ。

 だから、お米は必須だと考えるが、ここには売ってないから別の街で買うしかない。




(やることが増えたな……)

『……まず、マヨネーズとケチャップを作る……から始めればいい……』

(そうだな。マヨネーズは大丈夫だが、ケチャップはわからないな。トマトがあるかわからないしな)


 お米とかは後にして、料理用具を雑貨屋で買い、ついでにパンと野菜も買っておく。

 固い黒いパンだが、炭水化物がないよりはマシだと思って買っておいたのだ。

 野菜は残念ながらトマトはなかったので、キャベツに似た緑の野菜を買った。




「うーん、欲しい物は大体買ったな。そういえば、お前達、料理は出来るのか?」

「焼くだけなら」

「マリアも焼くだけです」

「自分も!」


 ゼロ以外は焼く料理しか出来ないようだ。

 しかも、味付けは塩だけ。


 なんか虚しいな……と思うのは俺だけなのか?


 料理力が残念な女性たちのために、料理を奮ってやろうとゼロは思うのだった…………




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 ここは森の中で、街から近いから魔物もあんまりいない。

 そこで、ゼロは料理をやることにしたのだ。




「俺はこれから料理をやるから三人は周りを警戒するか火を焚いておいてくれ」

「「「わかりました」」」


 警戒する者、枝を集める者に別れて、バラバラになる配下達。

 ゼロはここの世界に来てから初めての料理になる。

 今までは、焼くだけの料理になるから任せてばかりだったのだ。




「まず、マヨネーズを作るか」


 卵を卵黄と卵白に分けて、卵黄だけの入れ物に酢とオリーブオイルを適量に少しずつ入れて、下にはシルが作ってくれた氷水が入った入れ物に重ねて、冷やしながら掻き混ぜる。

 前の世界と違って、今は木で作った箸を使って混ぜるから物凄く大変だが、今のゼロは人間ではなく、霊系の魔人だから、疲れは出ないままずっと掻き混ぜることが出来るのだ。






 泡立てて、ようやくマヨネーズらしくなったら、味見をしてみる。




(お、マヨネーズだ。まだ店の方がうまいが、今はこれでも大丈夫だろう)

『……本当は……生卵のまま、使ったら念のために、冷蔵庫に……入れて細菌を……殺した方がいいけど……』

(冷蔵庫がないし、俺達なら耐性があるし、この世界の人は病気などに強いと前に聞いたしな)


 そう、この世界の人、魔物は病気になりにくいとレイが調べているので、このマヨネーズはそのまま食べても大丈夫だろう。




「まぁ、大丈夫だろう」


 この世界にはアルミホイルがないから、代わりに大きな葉っぱを使って先程、捌いたサバのような魚、タイズを包む。

 タイズにはハーブを入れており、匂いも消した。




「ええと、鍋に水と鉄網を入れて……」


 底が深い鍋を使って、中身には水を四分の一ほどいれ、中間には鉄網を固定する。

 固定したら、その上に大きな葉っぱで包んだタイズを乗せる。

 今、作っているのは蒸し魚だ。

 蒸す料理は人間にとっては普通のことだが、魔物にとっては珍しいと感じるだろう。


 料理はこれだけだと味気無いので、スープも作ることに。

 先程の卵白も使って、残しておいた黄身もある卵を一つと一緒に軽く掻き混ぜて、さらに切っておいた野菜も水を煮た別の鍋に入れた。

 味付けは塩だけだが、これで卵と野菜のスープが出来た。

 黒パンは固いからスープに付けて柔らかくして食べるのもいいだろう。

 料理も終盤になってきた所に、配下達も匂いに吊られて集まってきた。




「あ、いい匂いです」

「それは、もしかして蒸し魚ですか?」

「美味しそう!」

「まぁな、少しで出来るから待て」


 そろそろ蒸し魚が出来ると思い、鍋からタイズを包んだ大きな葉っぱを取り出した。

 開いてみると、ふわぁ〜と、タイズから美味しそうな湯気が出ており、シルは涎が出ていたぐらいだ。




「これに、マヨネーズを掛けて完成だな」


 自作のマヨネーズを掛けて、『蒸しタイズマヨ添え』が完成した。




「ほい、出来たぞ」


 全員に食事が行き渡ったら、食べることに。




「魚に掛かっている白いのは何ですか? マリアは初めて見ますが……」

「あれはマヨネーズだ。食べてみな」

「マヨネーズと言うんだね。パクっ」


 まず、フォネスがマヨネーズが付いたタイズを一口食べる。






「………!! こ、これは……!!」




 驚いたような顔になり、目を開いたフォネスだった。

 言葉は続かず、無我夢中に、次を口に入れてパクパクと食べていた。

 その姿に驚いたゼロ達だったが、マリアもマヨネーズが付いた魚をゆっくりと口に近付いて………………食べた。






「…………!! パクパクパクパクっ!!」




 マリアもいつもの姿から想像出来ないように、夢中で食べていた。

 続いて、シルも…………






「パクっ…………!!? お、美味しいぃぃぃ!!!」




 シルも二人と同じようになった。




(驚いたな……)

『……マヨネーズが……気に入ったみたい……』

(だな。俺も食べるか……………………うん、タイズとマヨネーズが調和していてうまいな)


 ゼロも納得いく料理が出来たなと満足しつつ、食事を続ける。






 食事が終わった頃、マヨネーズ好きが三人も生まれたのだった…………







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