第五十二話 聖獣
はい、どうぞ。
今回、請けた依頼はボアファイア討伐だ。
一匹で倒したら3000ゼニとなっており、Bランクの依頼らしく、高くなっていた。
ボアファイア自体はCランクの強さだが、集団で纏まるとBランク相当になる。
「ここから一日と言っていたが、俺達なら半日か?」
「そうですね。マリアはまだ人間なんですが、何故か疲れないのです。元から体力はある方でしたが、前は一日休まずに歩き続ければ、さすがに疲れてしまいましたが、今はそうではないです」
「俺に名付けられてから疲れにくくなったと?」
「そうですね。ゼロ様が進化してからなんか、身体の調子が良くなっているような気がします」
「そうなのか? フォネスとシルは?」
マリアだけでは、判断材料が少ないので、二人にも聞いてみる。
「ええと、私は魔素と妖気がグーンと増えたような気がします」
「自分は力が強くなったよ!!」
「個人によって違うんだな……」
全員の体力、魔力、妖気、力などは上がっているが、個々によって上がり幅が違うようだ。
(なんか、この世界に来てから謎が増えたな……)
『……うん、名付け、進化、魔王化など……で、わからないことが……多い……』
(いつか知ることが出来るのかな?)
『……必ず、わからないことを知って……見せるっ!……『知識者』に賭けて……っ!!』
(そうか、頼りにしているぞ!)
レイがいつもより、やる気だ。
『知識者』なのに、知らないことが多いことに、火が付いたと思う。
もちろん、レイばかりに頼っていないで、ゼロも今やれることをやることに。
「そういいや、一種類の魔物が大量出現しただけで、他の魔物に会わなくなるものなの?」
「いえ、そんなことはありませんですが……」
マリアもおかしいことに気付いているようだ。
確かに、ボアファイアが大量出現しただけで、この辺りまでの魔物があまり出ないのはおかしいのだ。
もし、ボアファイアではなく、有名でゼロも知っているS、SSランクのドラゴンが現れたならわかるが…………
(思っていた通りに厄介な奴が出てきたわけじゃないよな……?)
『……その可能性が……高い……』
(だよなー)
ゼロが考えていた通りにSSランク相当の魔物が出てきたら、俺達でも勝てるかわからない。
前に説明したと思うが、人間が定めた冒険者のSランクと魔物のSランクと比べると、魔物に軍配が上がるのだ。
人間がSランクの魔物を倒すのに、Sランクの冒険者が集まった6人のパーティの実力が必要だと言えば、わかりやすいと思う。
「お前達、何かが出ても油断だけはするな」
「「「はっ!!」」」
もうすぐで目的地に着く。
ボアファイアだけならいいが、嫌な予感がするゼロだったのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目的地の草原に着いたら、向こうから音が聞こえた。
「向こうから音が聞こえるな……」
「あの、向こうは嫌な予感がするのですが……」
「マリアも同じです……」
「何かが戦っている……?」
距離が近付くと、配下達も何かを感じ取ったようだ。
『魔力察知』ではなく、本能が警報を鳴らしているという感じだった。
だが、好奇心は止められず、先に進むことにした。
草原だから、見晴らしはよいが、所々に岩場や草場があり、隠れながら見てみることにした。
そして、戦っていたその姿が見える様になった…………
「一角獣!?」
「な、なんで、ここに聖獣が…………」
フォネスとマリアは知っていたようだ。
シルは知らなくても、警戒してユニコーンを注視していた。
ゼロも…………
(アレは勝てないな……)
『……うん、ここにいるべきの……魔物じゃない……』
(ああ。どうみてもSランク……いや、SSランクはいっているな)
ゼロは見ただけで、実力の差がわかってしまったのだ。
これは勝てないと…………
当のユニコーンは、ボアファイアに囲まれていた。
なんでここにいるのかわからないが、ユニコーンのせいで、魔物がいない理由がわかった。危険を感じて、安全な場所まで逃げたのだろう。
何故、ボアファイアはユニコーンから逃げないのか?
いや、逃げ遅れてしまっただけかもしれない。
理由はわからないが、ボアファイアはユニコーンと戦うことに決めたようだ。
「「「ブォアァァァァ!!」」」
ボアファイアはユニコーンに目掛けて、突進をするが…………
「っ!! 伏せろ!!」
ゼロが急に声を張り上げ、配下達に命令した。
三人もゼロに従って伏せる。
その後に、ユニコーンの一角が光ったと思ったら…………
一瞬だった。
ボアファイアは全て真っ二つになって絶命した。
「なっ……」
「一瞬で……!?」
「見えなかった……」
三人とも、ユニコーンの攻撃が見えなかったようだ。
ゼロだけは、何とか攻撃は見えていた。
(一角で丸い輪を作って広げただけでこの威力かよ……)
『……光魔法……みたい……』
丸い輪で切断系の光魔法で全ての方向に攻撃する技だった。
だが、その発現スピードが早過ぎて、見えていたのはゼロだけで、範囲はゼロ達が隠れていた所まで届いていた。
もし、ゼロが声を出さなかったら配下達は首を落とされていただろう。
「お前達、構えろ……」
ゼロの声に、配下達も武器を出し、魔力全開でユニコーンを警戒する。
戦うことになったら、間違いなく負ける。
だが、逃げても無駄のように感じたから、ゼロは向かってくるなら戦うことに決意していた。
「…………」
ボアファイアを倒したユニコーンは初めからゼロ達に気付いていた。
だから、先程の攻撃がゼロ達のとこまで届いていたかもしれない。
ユニコーンは何もせずにただ、こっちを見るだけ見て…………………………去った。
ユニコーンはゼロがいた場所の反対側に向かって走り去っていたのだった…………
「……行ったの?」
「ああ。俺の『魔力察知』から外れた」
「ふぅ……、なんでここに聖獣が?」
「あーー!! 疲れた!!」
気が抜けて、座り込んだシル。
気が抜けるのは仕方がないと思う。何せ、凄いプレッシャーを放っていたのだから。
「なぁ、聖獣って何だ? 文字から大体はわかるが……」
「そうですね、聖獣は文字通りに聖なる獣となります。ユニコーンだけではなく、他にもいます。だが、聖獣はあんまり人の前には現れず、見た者は少ないです」
「なるほど。聖獣はどれだけ強いんだ?」
「マリアが知っている聖獣は、ユニコーンと天空龍だけですが、SSランクとSSSランクの化け物クラスです。もちろん、まだ他にもいますが、詳しくは知らないです」
「なるほど。今は戦わなくて正解だったな」
「え、今は?」
「当たり前だろ? もっと強くなったら挑むんだ」
「え? ええぇぇぇっ!?」
マリアにしたら、聖獣は雲の上の存在だろう。
だが、主は強くなったら挑むと言っているのだから、驚くのは当然だろう。
「お前達もそれぐらいには強くなってもらうぞ。何せ、俺の配下だからな!!」
「は、はい!!」
「……わかりました。やれるだけやってみたいと思います!」
「強くなるー!!」
ゼロの予想していた通りに、三人は頼もしい返事をしてくれたのだった…………
偽魔王ラディアもSSランクでしたが、それは勇者を二人も殺したから本来はSランクの所をSSランクに指定されただけで、実力では確実に一角獣の方が上です。
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