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第四十二話 実験

はい、どうぞ!

また新キャラが出ます。



 ここは、実験のために襲わずに残していた村だ。

 大きさは離れに家があった村よりは小さいが、村人は前の村と変わらないぐらいに多い。

 さらに、門があって木で出来た壁がクルッと村を囲んでいた。

 入口は二つだけである。見ただけでも、他の村より守りが固い村だとわかるだろう。




『……ふふっ、いるいる〜♪』

(ああ、中には冒険者が何人かいたから実験出来るな?)

『……強いのは、わかるけど、見たいよね』


 一体、誰が強い、何の実験をするのかがわかるのは村にある一人が近付いてからだ。

 ゼロと配下達は見物だけで、今回は参加しない予定だ。

 これから事を起こす者はもう、村の前にいた。

 その者は…………




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 村人は様々な仕事をして、商人と農民に別れてそれぞれの仕事を進めていた時に、村の前にある男が現れたのだ。

 村の警備員達が、その男の姿に剣を構えて警戒を高める。

 何故、いきなり剣を抜くのか? と思うが、目の前の男は、真っ黒な燕尾服に、シルクハットを被っていた。

 だが、一番、異様だったのは、その男の顔を隠す仮面だった。

 仮面は完全に顔を隠しており、入れ墨のような模様があって、さらに不気味な仮面に見えた。


 顔を隠しているのに、何故、男性だと思うのは、服からの判断なのか、身長が高く、女性のように見えなかったからかわからないが、警備員達は男だと判断したようだ。

 その男は、鼻歌を歌いながら村に向かって歩いていた。

 その歩きを止めるべく、警備員の一人が声を上げる。




「止まれっ!! 仮面を被った男、何奴だっ!?」

「〜〜〜♪ ……ククッ、気持ち良く歌っている時に、剣を抜いて声を荒げるのは不粋だと思いませんか?」

「そんなことは聞いてない! 異様な格好をしていて、何を言うんだ! さっさと答えろ!!」

「ククッ、異様な格好ですか……。悲しいな、この素晴らしい格好に理解を得られないとはっ!!」

「何を言っているんだ……?」


 悲しむような動作を始める男。

 それについていけない警備員達。

 だが、その空気はすぐに終わった。




「ククッ、わかりました。私は村に用があるのですよ」

「用だと……?」


 こんなに怪しい奴があまり大きいとは言えない村に用があるとは思えなかったのだ。

 目の前の男が思い出したように続きを話しはじめた。




「あ、名乗りを忘れていましたね!! 私はクロトと言います。お見知りをどうぞ」


 クロトと名乗った男は恭しく右手を左胸辺りに添えて、礼をする。




「……クロトと言う者よ、一体、そんな格好でここに何の用だ?」

「はい。我が神からの命令でね」

「神だと?」

「ククッ、信仰だけの神ではありません。実際に存在している神ですっ!!」


 警備員達は訳がわからないと思った。

 異様なのは格好だけではないと全員が一人残らず感じたのだった。

 そして…………






「私はここの村を潰しに来ました」






 ようやく、用の内容を知ることになったと思ったら、もうクロトは動き始めていた。




「えっ?」


 クロトが何かを投げる動作を終えた状態だった。

 急に喉に痛みが走り、恐る恐ると首を触ってみると…………




 何かが刺さって、血が出ていたのだった。




「ーーーーー!!?」


 ようやく何が起こったのか理解したが、もう遅かった。

 警備員達は全員が首にある物が刺さっており、気付いた者から一人一人と倒れていった。

 クロトは再び、鼻歌を歌い始めて、近くにいた警備員の首に刺さったものを抜いた。

 抜いたものとは…………






 トランプ






 だった。

 警備員達が倒れたことに村人が気付いて、騒いでいた。

 慌てて武器を持つ者、反対側の出口から逃げる者、家に隠れる者、様々な反応を見せてくれる村人達。

 反対側の出口を向かっていた者は…………




「なぁっ!? 何だこれはっ!?」

「ぬいぐるみ……?」

「これでは出られない!!」


 もう一つの出口は、急につぎはぎがある大きなクマのぬいぐるみが出て来て塞いでしまった。

 クマ自体には危険はないただのぬいぐるみだが、重さがあり、簡単に退かせない。

 これでは、使える入口はクロトが出て来た入口のみ。

 それがわかった村人とたまたまこの村に留まっていた冒険者達が武器を持ち、クロトに対抗する。




「ククッ、流石に一人では何人か逃がしてしまいそうなので、こっちも数を増やさせてもらいます! ”人形演舞ドールグール”!!」


 クロトは何処から出したのか、一本の黒い杖があった。

 それを地面にトンと叩くと、いくつかの魔法陣が出て来て中から沢山のつぎはぎが沢山あるぬいぐるみと人形が出て来た。

 手にはナイフを持って「キャキャキャキャキャ!!」と笑い声を出していた。




「な、何だこれは……?」

「うっ、臭いがする、腐っているの……?」


 そう、あれらの人形達は死体から作り出した物だ。

 死体になってから時間が経っているし、所々には血まみれになっている所があるのだから、臭っても仕方がないだろう。

 何故、死体から造られた人形達が動いているのかは、クロトの能力にある。




「さぁ! 私のマジックを楽しんで下さい! 人形達よ、一人残らず殺し尽くしなさい!!」


 人形達はクロトの命令を受け、この場に数体を残して散らばった。

 襲われて叫び、逃げ回り、殺される村人達がいた。

 クロトは村の中で強いと思える冒険者達と相対していた。




「ククッ、助けないのですか?」

「クソッ! 数が多いんだよ!!」

「貴方は人形達の主だよね。つまり、貴方を倒せば人形も止まるのではない?」

「ククッ、確かにそうですね」

「なら、お前を消せばいいっ!!」


 冒険者達は二パーティで、九人はいた。

 前衛が六人で後衛が三人。力を合わせてクロトを倒すようだ。

 まず、斧使いがクロトに向けて突っ込んだ。

 だが、クロトは構えもしない。




「ククッ、マジックを見せましょう!」


 そう言って斧を受けた。




「えっ?」


 あっさりと斧を受けていたことに驚いていた。

 だが、斧が身体にめり込んでいないことに気付いた時に…………




「がぁっ!?」

「まず、一人」


 斧使いが急に肩から血が吹き出し、呻き始めた。

 さらにトランプで首を飛ばされた。




「何が起こった!?」

「ククッ、ネタばらしをして上げましょう。さっきのは斧が肩にめり込んだでしょう? そして、斧使いが同じ肩から血が吹き出した。ここまでネタばらしすればおわかりでしょう」

「まさか……、返された?」

「正解です!! 正確には、これはスキルの能力です。ただ、一日に一度しか使えませんがね!」

「っ! だから、ネタばらしをしたのか!?」

「ククッ、生きて帰さないのもありますが、一日に一度ですからばらしても問題はありませんからねっ!!」


 クロトは仮面で表情はわからないが、笑っていると感じられたのだ。

 しかも、こっちを馬鹿にするような笑いをだ…………




「テメェっ!!」


 次は後衛の全員が魔法を発動した。




「次のマジックです〜。”黒棺転換ブラックパンドラ”」


 クロトの後ろに扉が付いた黒い箱が出て来て、クロトは中に入って扉を閉めてしまった。




「ふざけんな! こんな物で防げるとは思うな!!」


 放った魔法は弱い攻撃ではない。

 確かに、弱い魔法ではなく、黒い箱は魔法に耐え切れず、バラバラになって爆発していた。

 これなら、中に隠れても意味はないだろう。




「ははっ、ははは!! これで死んだだろ!? あんだけ言って、あっさりと終わりやがったぞ!!」

「ククッ、そうですね。中にいた者はもう生きていないでしょうね」

「そうだろ! そうだ……………………え?」


 今まで叫んでいた人は後ろからの言葉に気づき、振り向くと後衛の二人が首から血を流して倒れていた。

 それだけではなく、死体の隣でクロトが無事の姿で立っていたのだ。

 両手には血が付いたトランプを持って…………




「どういうことだ…………」

「ククッ、またネタばらしです! あの箱にいた人をごらんなさい」


 そこには、箱から吐き出されていたのは、ただ一人の死体。

 その死体は、辛うじて、ローブのようなのを着ているのがわかった。

 それで、クロトが何をしたのかわかったのだ。




「俺達の仲間と入れ替わったのか!?」

「正確です! 今回のも一日に一度しか使えません」

「何者なんだよ……、お前は……」


 二度もわけがわからない内に仲間が死んでいくのだ。

 しかも、どんな能力を持っているのかも予測できないのだ。

 恐怖が沸き上がって身体が震えている。




「ククッ、もう終わりですか? ”千本妖刃サウザウンドナイフ”!」


 空中から沢山のナイフが現れた。

 だが、ただのナイフではなく、妖気から造られた紫色のナイフであり、魔力で造られた壁などでは防げない。

 防ぐためには同じ妖気を使えるようにならないと駄目だが、初めてみる冒険者には、防ぐ術が無かったのだ。




「なんだこれは……」

「ククッ、終幕です」


 クロトが手を振り下ろすと、冒険者、村人に向かって放たれたのだった。

 魔法で防ごうとした者もいたが、全く効かず、通り抜けるだけだった。









 しばらくすると、死体が増え、立っているのはクロトだけになったのだった…………







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